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加納新太

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    君の名は。 Another Side:Earthbound
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    シャイニング・ハーツ やさしいパンの薫る島
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    fortissimo//Ein wichtiges recollection
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    世界めいわく劇場スペシャル
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    シャイニング・ウィンド -アナザーリンク- 鬼封じの剣士
    RPG「シャイニング・ウィンド」の小説版です。ゲーム本編のノベライズではなく、主人公たちの過去の物語を書きました。自分に伝奇小説が書けるか、ジェットコースター型の展開が書けるか、というのが、個人的なチャレンジでした。ありがたいことに、かなり好評を博しています。

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    シャイニング・ティアーズ to ウィンド 姫君たちの冒険
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    ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる
    原作/新海誠。新海監督のデビュー作を小説化したものです。少女視点の「あいのことば」、少年視点の「ほしをこえる」の二部構成となっています。表紙はブルーの箔押しで、美しいデザインです。『雲のむこう、約束の場所』と並べてみると、帯込みで対比的になるようにデザインされています。

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    シャイニング・ティアーズ 神竜の剣
    RPG『シャイニング・ティアーズ』の小説版、続編です。単独の本としても読めるつくりになっています。作者としては、前作よりも納得のいく出来です。勇ましい物語です。

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    雲のむこう、約束の場所
    原作/新海誠。劇場アニメーション映画『雲のむこう、約束の場所』を小説化したものです。装丁がとても美しく、それで手に取った方も多いようです。

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    シャイニング・ティアーズ 双竜の騎士
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    タウンメモリー
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    アクエリアンエイジ Girls a War War!
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    月姫 アンソロジーノベル〈1〉
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2013年3月13日 (水)

ドラクエ7の謎解き(2)遊び人は世界を揺るがす

 ※注:「ドラクエ7」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 普通の人にはついていけないトコロまで走っちゃう可能性があります。小説版、外伝等は参照しません。

 順番にお読み下さい。
ドラクエ7の謎解き(1)ホンダラハートの継承者

     ☆

●偉大なる遊び人たちの肖像

 ドラクエ7の物語では、ホンダラのような、スチャラカな「遊び人のハート」を持った人々が、たいした志があるでもないのに偉大なことをなしとげていく、そういう基調を持って進んでいくのだということを前回語りました。

 ボルカノのような、勇敢でしっかりしていて責任感がある「だけ」では、世界の形を揺るがすような大発見はできないのです。
 なぜなら、責任感のある者は、周囲に迷惑をかけたり、世間の生活を一変させてしまうような事態の到来をよしとしないからです。
 ドラクエ的にいえば、きまじめな賢者は、町中でいきなりパルプンテを唱えて大騒ぎを起こしたりはしないのです。

 ボルカノのような強さや勇敢さをそなえた人物が、同時に、夢見がちであり、無邪気で、ちょっと小ずるくて、大騒ぎが好きで、ノルかソルかの勝負にゾクゾクするタイプで、つまり同時にホンダラのような遊び人気質を持っている場合にだけ、大事業が達成されるようなのです。

 神話の英雄メルビンはきまじめな老騎士ですが、じつは女好きで、カジノ好きで、遊び人のような側面を持っていることが物語の端々でほのめかされていきます。

 この物語に登場する「神さま」は、ステテコダンスという珍妙な踊りが大の得意な、とぼけたおもろいおっちゃんでした。

 この物語屈指の聡明さをもつコスタール王は、自分のお城をぜんぶカジノに改装して、市民に一般開放してしまうような「遊び人」でした。

 天上に浮かぶ始祖の村で、リファ族を導く族長さんは、しょうもないぐうたらなおうちゃく者でした。

 マーディラス国は、「必死で国を守らなければ!」と真剣になることで、かえって滅びかけました。歌って踊って絵を描いて、楽しくやりましょう! という方向転換をしたとたん、押しも押されもしない大国になったのでした。

 その大国の名君グレーテ姫は、「何か面白いことはないかのう」といつも探しているような少女であって、主人公が提案した音楽大会に「それはいい!」と面白半分で飛びつくような人でした。

 弦楽器トゥーラの楽師であるヨハンは、昼間っからゴロゴロして、目が覚めれば女の子を口説いている、まさにホンダラ的な「遊び人」でした。しかし、神様の楽器を弾きこなして、みごと神をこの世に復活させる偉業は、彼がなしとげたのでした。

「偉大なる者は、遊び人である」
 という、主張めいたものが、あると思うのです。

●「選ばれし者」としての条件

 勇敢で、力強いだけでいいなら、そういう人はこの世界にいっぱいいるのです。

 ふきだまりの町のスイフーは、あきらかに主人公より強かったです。
 そのスイフーから一目置かれているカシムも、もちろん強い剣士です。
 ウッドパルナの剣士ハンクや、砂漠の村の四男坊サイードも、主人公たちと同等以上に強かった。

 でも、主人公にはあって、彼らにないものがあります。そいつがホンダラハートです。彼らは真面目すぎるのです。

 海賊シャークアイは、魔王の軍勢と同等に渡り合える海の英雄です。しかも、主人公と同等の「水の精霊の加護」を受けた男です。
 でも、水の精霊が「世界を救う使徒」として選んだのは、シャークアイではなくて主人公のほうでした。

 主人公にあって、シャークアイにないもの。それがホンダラの心。遊び人のハート。この世の全てをガラガラポンする力です。そう思うのです。

     *

 3DS版のドラクエ7では、エスタードの謎の神殿は「神にえらばれた者だけが出入りできる場所」だという説明があります。

*「ここは 復活の神殿。
 この神殿に入れるのは 選ばれし者だけ。
*「だから お前たち……
 たぶん 神に 選ばれし者。

 ところが、ホンダラは、「神殿の中を経由しない限り決して行くことができない」場所である七色の入り江に行くことができました。そこに行って、七色のしずくを汲んできたのです。
(注:エンゴウの闇の炎を消した「すごい聖水」の正体は七色のしずくです)

 だから、結論としてはこうなります。「ホンダラも神に選ばれし者である」。3DS版で、神殿経由でないと入り江に行くことができなくなったのはおそらくこの表現のためです。

 終盤、ホンダラは神さまに会おうとして失敗します。なぜ神さまは選ばれし者ホンダラに会おうとしないのか。それはもちろん、そのとき復活していた神様は魔王が化けた偽物だったからです。本物だったら会うのです。「ホンダラが神さまに会おうとしたが、会えなかった」というエピソードがあえて配置されているのきっとそのためです。

●「遊び人」とは、生き方である

 ドラクエ7は、「転職」のシステムがあるゲームです。主人公たちは、さまざまな職業への転職をくりかえすことで、特殊能力を獲得することができます。

 ドラクエの転職システムには、伝統的に「遊び人」という職業が用意されています。具体的には、ドラクエ3や、ドラクエ6で、「遊び人という職業になる」ことができました。経験値を上げると、いろんなしょうもない「あそび」を覚えるという、基本やくにたたない職業です。

 ところが、この伝統的職業である遊び人が、ドラクエ7では、カットされました。そのかわりに入れられた職業が「笑わせ師」いわゆるコメディアンという職業でした。

 なんでいきなりカットされたのか。
 その理由がわかる気がします。

 その理由は。

 この物語が、「遊び人」たちの物語であるからです。
 この物語の中では、遊び人は生き方であって、職業ではないからです

 ドラクエ7は、遊び人の生き方を持った英雄と、遊び人の生き方を持った神さまと、遊び人の生き方を持った王子と、遊び人の生き方を持った王様と、遊び人の生き方を持った村長と、遊び人の生き方を持った楽師と、遊び人の生き方を持った遊び人と、遊び人の生き方を持った漁師の一人息子という主人公の物語であって、そこに職業としての遊び人が存在すると、変なことになるのです。


●「役立たず」がいてもいいという場所

 世の中を良くしてやろうとかいった気負いではなく、「遊び人の遊び心」が世界を動かしていくという、この主張めいたもの。
 それは、これまでのドラクエからも、感じ取れます。

「世の中の役に立つわけではないものの力」

 ということが、ドラクエでは、意識されているような気がします。

 おもしろいインタビューをみつけました。堀井雄二さんと中村光一さんが、ドラクエ3の開発当時の思い出を語っているのですが、こんなエピソードがありました。

堀井 あそび人は、ものすごく議論したのを覚えてる。
中村 そう。開発スタッフの中には、RPGにはそんな職業はないっていう意見もありました。

――それはたしかに、そのとおりですね。
堀井 すごく反対されたの。
中村 でも堀井さんは、あそび人は絶対になきゃいけないんだって主張して。
堀井 そうなの。どこか余裕が、遊びの部分がなきゃだめだって。おもしろいじゃんって。
中村 当時は開発の初期段階で、大きな方向性を決めるために「合宿」をしたんですけど、そのときに堀井さんとスタッフが。
堀井 すんげー言い合った。
中村 すんげー言い合って。朝からずーっと夜まで、「あそび人がいるか、いらないか」という議論を、ホントにずーっとやってるんですよ。

(略)
堀井 あとで賢者になるというのは、そのときの議論があったからだと思う。あそび人を極めれば賢者になるという仕掛けならいいでしょ、って。
――そのときの議論がなかったら、ずーっと遊んでるままだったんですか?
堀井 そうそう。とくに役に立たないまま。

(ゲーマガ 2012年2月号 『ドラゴンクエスト25周年記念 堀井雄二×中村光一 特別対談 後編』P.78)

 インタビューにも書いてあるけれど、ほんとうは、「遊び人はレベル20で賢者に転職できる」なんていうギミックは、堀井さんは入れたくなかったんだろうと思います。

 ドラクエ3の職業「遊び人」は、ほぼまったくメリットがなく、どんなにレベルが上がっても、「遊び」しかしません。
 本っ当に役立たずなのです
 これをあえて冒険の仲間に入れるとしたら、その理由は「シャレで」以外にはないくらいです。
 そういうものを、断固としてゲームに入れるんだと主張して、実際に入れたのが、ドラクエ3のシナリオライター、ほぼ原作者といってもいい堀井雄二さんです。

 遊び人という、そういう職業を選択できるんだ、という堀井さんのアイデアに、スタッフの一部は大反対したわけです。

 なぜスタッフが反対したのかという理由は、想像するに、2つあると思います。
 ひとつは、容量の問題。もうひとつは、美意識だと思います。

 FC版ドラクエ3は、カートリッジの容量が足りなくて、開発に苦労したと聞いています。ドラクエ1のときも2のときも、容量が足りなくてスタッフはさんざん苦労しているのです。構想時にたてた物語の全内容なんて、とてもカセットに入らないにきまっています。
 案の定、ドラクエ3でも、町がまるごとひとつボツになりました。本当はオープニング画面が出るはずだったのですが、全部カットされました。

 そんなふうに、スタッフはこれから、「とうてい入らないものを、切り詰めながら、どうやって押し込むか」という辛い作業をすることになるのは目に見えているのです。

 それなのに、「何のためでもない職業」のデータを入れなければならないのか

 普通の考え方をすれば、ドラクエ3のメインストーリーをすこしでも充実させてお客さんに手渡したいのですから、「ストーリーのため」「感動のため」にリソースは使いたい。そのための苦労ならいくらでもしやすいのです。

 それなのに「何でもないもの」を入れろというのですから、つかみどころがなさすぎます。気持ちが悪いです。ゲーム制作者さんというのは職人さんですから、美しく配置された、整ったものを作り出したいのです(と思ってるだろうと想像します)。何だかわからない気持ち悪い遊び人なんていうものを入れたくない。これはとても理解できる感覚だと思うのです。スタッフさんたちは、「遊び人が賢者になれるということなら納得する」という反応だったのですから、「無意味に対する拒否感」「役割がないものに対する嫌悪」という感情があったと理解できます。

 しかし堀井雄二さんは、このゲームの中に「役立たず」の居場所を作ったのでした。
 ここに役立たずがいてもいいよ、という、その居場所を断固として確保しつづけたのです。

 なぜ?


●世界を広げるということ

「何のためでもないものが入っていて欲しい」
 という願望、実感、直感のようなものが、ドラクエにはあるように思うのです。

 というか、
「役に立つものがあり、それが実際に役に立ち、結果何かが成し遂げられる」という物語は「窮屈でいやだ」
 というセンスがあるような気がするんです。

 役に立つものだけが揃えられているのは、息が詰まる。
 理由があって、きちんとした役割があるものだけで構成された世界は「スケールが小さい」。
 そういう思いが、堀井さんにはずっとあったんじゃないか。そのように想像するのです。

 自分で作る世界は、ミクロコスモス(ここでは「小さくまとまったもの」の意)にしたくない。
 役に立つ物、理由がある物だけでできた世界は「たったそれだけのもの」になってしまう危険性が高いのです。

 これは、このために、ここに設置されている。
 あのキャラは、あの目的で、ここに置いてある。
 その繰返し。
 どこまでいってもその繰返し。
 それがずっと続いて、ゲーム内の全部を見たら、終わり。以上。

 そんなのは嫌だったのでしょう。
「この世界は、これだけで全部です」と思われるのが嫌だった堀井さん、という姿が、あると思う。
 だから堀井さんは「何のためでもないもの」を好んで入れる。

 何のためでもないものには、世界を広げる力がある。そういう直感があっただろうと思われるのです。

     *

 だから堀井さんはドラクエ2では、「パルプンテ」という、「何が起きるかわからない、スロットのような、ギャンブルじみた、ガラガラポンの魔法」を入れたりするのです。

 パルプンテの呪文は、ごくまれに、この世のものとは思えない「とてつもなくおそろしいもの」を呼び出すことがあります。

 どのくらいおそろしいかといえば、この世で最も強大で恐ろしいと思われる大神官ハーゴンや破壊の神シドーですら、あまりに恐ろしくて逃げだすほどのものです。

 そんな「恐ろしいもの」とやらが、本当に実在するのか? それとも、存在しないけど存在するような気がしただけなのか? かりに存在するとして、それはこの同一次元のものなのか?
 よくわからない。よくわからないものだ。
 でもとりあえず、「そういうものを見た」と思う現象は存在する。

 どうも普通では目に見えないような所に、何か得体の知れないものがいるらしい……。

 ほら、今、すごく世界が広がったでしょう。
 世界は目に見える範囲だけのものではない という形で、無限が生まれた

 これは、「かならず恐ろしいものを呼び出す呪文」であったら駄目です。
「そういう役割を持った、そういう意味のあるもの」「そういう額面で流通するもの」になってしまうからです。つまり役に立つものになってしまう。得体の知れないものではなくなってしまう。

     *

 ドラクエ3の「遊び人」という職業も、それと同じだと理解できます。

 遊び人という「ゲーム攻略のためではないもの」が入っている。
 そのことによって、
「このゲーム内のすべてのものは、ゲーム攻略のためだけに予定調和で配置されたものである」
 という「作り物の小ささ」から離脱する力が獲得されているのです。

 この世界は、ゲーム攻略かぎりのものではない。

 遊び人という、得体の知れないものが入っていることにより、ドラクエ3は得体の知れないゲームになったのです。
 それにより、「どうせこの世界も、ゲーム本筋かぎりのものか」という「見切り」が不可能になるのです。

 ついでに、たいした指摘ではないが蛇足的なことを言えば。
 遊び人とは、「遊びの人」です。そして、ゲームは遊びです。
 だから、堀井雄二さんは、作家という職業で、ゲームデザイナーという職業だけれど、同時に生き方としては遊び人だ。
 ドラクエのユーザーは、実生活でさまざまな職業を持っているだろうけど、ゲームという遊びをあそんでいるのだから、遊び人です。

 遊び人であることは、社会にとって何の役にも立ちませんし、ゲームなんていうものは、べつに世の中を便利にしたり良くしたりするものではありません。
 でも、そういうものが世の中にあってもいいじゃん。そういう人々がいてもいいじゃん。そのうち何か、世間をビックリさせるようなことをしでかすかもしれないよ。

 だから、そういう人やものがいてもいい居場所を残しておこうよ。
 そういう気持ちを読み取ることもできます。

●予定調和からの脱出

 そのことが「メインテーマ」と言えるところまでまで出世しているのがドラクエ7だ、とも言えると思うのです。
 先述のとおり、これは遊び人が世界を救うお話です。
 もっといえば、ドラクエ7のシナリオは、かなり深刻なトーンのものが多いです。
 だから、「深刻ぶった世界を、遊び人が救う」物語だともいえる。

 エスタード島というのは、小さくまとまったミクロコスモスです。
 良いものと必要なものは充分にあり、良くないものは含まれていない。善なるもの、役に立つもの、美しいもの、価値のあるもの。そういったものを適切に配置して作り上げられた、小さくまとまった、それだけの世界です。

 そういう小さな秩序に、満足できるなら、それもいい。

 でも、そんなのは息が詰まる! と思う人々もいるんだ。それが主人公であり、キーファであり、マリベルであり、そして堀井雄二さんです。

 そんな小さな秩序は息が詰まるから、堀井雄二さんは、外に出て行こう。別の大地をふみしめよう、カオスに触れよう、邪悪とだって対話してみよう。そういう物語を描くのです。

 そのような、秩序からすすんで離脱したいと願うハートを持つ者が、遊び人です。
 ドラクエ3の遊び人というギミックには、世界を広げる効果がありました。

 そして、ドラクエ7は、何の役にも立たないホンダラと、その同類である主人公たちが「世界を広げる」、文字通り世界に陸地を増やしていく物語であったのです。

 必要なものが、適切な場所に、丁寧に配置された小さな楽園としてドラクエを作りたいんだ、と主張したドラクエ3制作スタッフは、グランエスタード島の大人たちです。
 そして、いやいや、何だかわからない、しょうもない、何の意味もないものも欲しいんだ、そういうものがあることで、世界が大きく広がるんだよと主張した堀井さんは、ドラクエ7の主人公のような存在です。

(続く・次回、「グランエスタードの正体」にせまります)

■続き→「ドラクエ7の謎解き(3)この世の彼方の海と島」

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