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加納新太

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    君の名は。 Another Side:Earthbound
    新海誠監督の映画『君の名は。』の小説版です。新海監督執筆の『小説 君の名は。』が、映画と同じストーリーラインを追うのに対し、こちらでは、短編集形式で登場人物を掘り下げをしています。「これを読むと映画の内容がすんなり理解できる」と角川の玄人衆から高評価を受けました。リアル書店では見つけにくい本のようなので、取り寄せ等の対処をお勧めします。

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    月刊ヤングエース(角川書店)連載中の漫画『いなり、こんこん、恋いろは。』(よしだもろへ)の小説化です。この作品に惚れ込みました。表紙はよしだ先生に描いていただけました。幸せです。

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    カードゲーム「アクエリアンエイジ」のマンガ版です。短編形式で6編収録されています。月刊コンプティークで連載しました。全編の脚本を書いています。

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    RPG「シャイニング・ブレイド」の小説版です。サイドストーリーを集めた短編集です。主人公レイジとヒロイン・ローゼリンデが初めて出会うエピソードも収録されています。

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    アクエリアンエイジ フラグメンツ
    トレーディングカードゲーム「アクエリアンエイジ」の小説版です。公式Webサイトでの連載に加筆修正したものです。

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    週刊少年サンデーで連載中、畑健二郎作「ハヤテのごとく!」が劇場アニメになりました。その小説版です。私はこの漫画が大好きで、書けて幸せでした。

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    秒速5センチメートル one more side
    映画『秒速5センチメートル』のノベライズです。新海監督版の内容を逆サイドから描いた物語になっています。第1話がアカリ視点、第2話がタカキ視点です。第3話は交互に入れ替わって展開します。

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    シャイニング・ハーツ やさしいパンの薫る島
    RPG「シャイニング・ハーツ」の小説版です。原作の物語のサイドストーリー的な位置づけです。3人のヒロインは全員登場し、ゲームでは出番の少なかった海賊ミストラルも活躍します。牧歌的でやさしく、すべてが満ちたりた世界を書こうと思いました。満足しています。

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    世界めいわく劇場スペシャル
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  • : シャイニング・ウィンド -アナザーリンク- 鬼封じの剣士

    シャイニング・ウィンド -アナザーリンク- 鬼封じの剣士
    RPG「シャイニング・ウィンド」の小説版です。ゲーム本編のノベライズではなく、主人公たちの過去の物語を書きました。自分に伝奇小説が書けるか、ジェットコースター型の展開が書けるか、というのが、個人的なチャレンジでした。ありがたいことに、かなり好評を博しています。

  • : シャイニング・ティアーズ to ウィンド 姫君たちの冒険

    シャイニング・ティアーズ to ウィンド 姫君たちの冒険
    RPG「シャイニング・ティアーズ」「シャイニング・ウィンド」の短編集です。基本的に、原作の物語がスタートする前を舞台にしています。いわゆるプレ・ストーリーです。エルウィン、マオ、ヴォルグ、ブランネージュ、クララクランが登場します。

  • : ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる

    ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる
    原作/新海誠。新海監督のデビュー作を小説化したものです。少女視点の「あいのことば」、少年視点の「ほしをこえる」の二部構成となっています。表紙はブルーの箔押しで、美しいデザインです。『雲のむこう、約束の場所』と並べてみると、帯込みで対比的になるようにデザインされています。

  • : シャイニング・ティアーズ 神竜の剣

    シャイニング・ティアーズ 神竜の剣
    RPG『シャイニング・ティアーズ』の小説版、続編です。単独の本としても読めるつくりになっています。作者としては、前作よりも納得のいく出来です。勇ましい物語です。

  • : 雲のむこう、約束の場所

    雲のむこう、約束の場所
    原作/新海誠。劇場アニメーション映画『雲のむこう、約束の場所』を小説化したものです。装丁がとても美しく、それで手に取った方も多いようです。

  • : シャイニング・ティアーズ 双竜の騎士

    シャイニング・ティアーズ 双竜の騎士
    セガのRPG『シャイニング・ティアーズ』をもとにしたヒロイック・ファンタジィ小説です。ノベライズです。

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    タウンメモリー
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    アクエリアンエイジ Girls a War War!
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    月姫 アンソロジーノベル〈2〉
    PCゲーム『月姫』を題材にしたアンソロジー短編集、第2巻です。第二話『天へと至る梯子』を執筆しています。琥珀が主人公です。

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    月姫 アンソロジーノベル〈1〉
    PCゲーム『月姫』を題材にしたアンソロジー短編集です。遠野秋葉が主人公の第一話『かわいい女』を執筆しました。

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2013年3月

2013年3月17日 (日)

ドラクエ7の謎解き(4)崖っぷちじいさんに何が起こったか

 ※注:「ドラクエ7」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 普通の人にはついていけないトコロまで走っちゃう可能性があります。小説版、外伝等は参照しません。

 順番にお読み下さい。
ドラクエ7の謎解き(1)ホンダラハートの継承者
ドラクエ7の謎解き(2)遊び人は世界を揺るがす
ドラクエ7の謎解き(3)この世の彼方の海と島

     ☆

●レプレサック村に起こったこと

 ドラクエ7には、レプレサックという村があって、ドラクエ史上まれにみる「気ィ悪い」村として語りぐさになっています。
「後味の悪いドラクエのエピソードは?」というアンケートがあったら、おそらくぶっちぎりで一位になると思われるくらいヤな感じなのです。

 こんなお話です。

     *

 農村レプレサック村には、たいへん徳の高い神父さまがおりました。

 この村に突然、魔物がやってきて、人々をおびやかし始めたのです。神父さまは、村人の中から勇敢な者を集めて、魔物退治にむかいました。
 ところが、魔物たちはとても強く、返り討ちにあってしまったのです。

 怪我をした神父さまに、魔物はこんなことをささやきました。
おまえの姿と、俺の姿を交換しよう。おまえは魔物の姿になって村に帰り、そこで暮らすのだ。そうしたら、おまえが生きている間だけは、村を襲わないでいてやろう
 神父さまは、その取引に応じました。

 村はたいへんなことになりました。神父さまは帰ってこず、かわりに魔物が教会に住み着いてしまったからです。
 あの魔物は神父さまを食べてしまったにちがいない。そして、今、われわれ村人を襲う準備をあの教会で進めているにちがいない。
 なんとかして、あの魔物を退治してしまいたい。でも、腕に覚えのある者は、みんな神父さまと一緒に死んでしまった。どうしよう。
 魔物がじつは神父さまだとも知らずに、そんなことを相談していたのです。

 そこに現れたのが、旅の一行。ドラクエ7の主人公たちです。
 村人は喜びました。腕におぼえのある人が来てくれた。魔物退治に協力してくれませんか。
 主人公たちは、いったんは協力を約束します。

 けれど、村の子供のひとりが、「あの魔物は神父さまじゃないか?」ということに気づいたのです。子供は旅人にそのことを相談しました。子供と村人は、魔物退治に反対することにしました。

 でも、恐怖のせいでヒステリーに陥っている村人たちは聞き入れません。子供と旅人を閉じこめてしまい、自分たちだけで魔物を襲いに行きました。
 魔物は優しい神父さまなのですから、抵抗して村人を傷つけるようなことはしません。だから村人は調子に乗り、取り囲んで、暴行を加え、はりつけにして火あぶりにすることにしました。

 そのとき、急に魔物が、神父さまの姿に戻ったのです。旅人が、魔の山に行って「本物の魔物」をやっつけたため、姿を取りもどしたのでした。
 村人たちはやっと自分たちの間違いに気づきました。
 自分たちは目がくらんでいた。こんな間違いは二度としないようにしよう。
 だから、石碑を建てて、今日のこの間違いのことを刻んでおこう。自分たちはヒステリーにとりつかれて、りっぱな神父さまを殺すところだったのだ。そのことを石に刻んでいつまでも教訓にしよう……。

 ここまではいいんです。

 しかし、この村のはるか未来の姿は、何やら様子がおかしくなっています。

 主人公たちは、「未来のレプレサック村」に行くことができます。何世代も経過したレプレサックは、おかしな伝説が言い伝えられていました。教訓の物語ではなく、「村の武勇伝」になっています。
 魔物に変身させられた神父さまを、「あわて者の旅の一行が」勘違いで殺そうとしたのだ。村人たちは、みんなで協力して悪い旅人をやっつけた。すると実は、悪い旅人は魔物の仲間であった。村のみんなの勇気がこの勝利をもたらしたのだ……。
 そんな話になっちゃっているのです。

 しかも、「決して忘れないようにこの教訓を刻んだ石碑」が、改竄されているしまつです。村にとって都合のわるい部分を割り取って、都合のい物語を刻んだ石をツギハギしてあるのです。
 歴史のどこかで、誰かが、「意図的に」お話を改竄したのはあきらかです。

 主人公たちは、村の物置で「本当の歴史が書かれた」石碑のかけらを発見し、「本当はこうじゃないですか」と村長を問い詰めました。
 すると村長は、おもむろに壁に掛けてあったをつかみ、石碑のかけらをこなごなに砕いてしまいました。
「こんなものがあっちゃ困るんですよ」
 村長は、本当のことが明らかになったら、自分たちが悪者になってしまうから、不都合だから、証拠を隠滅するという行動に出たのです。

 でも、この村には、たった一軒だけ「本当の伝説」を言い伝えている家がありました。その家の者は昔も今も、村中のみんなから、嘘つきもの、ホラふき者と呼ばれているのでした……。

     *

 ひどい話だ。なんでこんないやなお話をドラクエで見させられなくてはならないんだと思うくらいです。
 なんでまた、こんなエピソードが入っているのか。

 その理由は。
 このエピソードがそのまま「グランエスタードに何があったのか」という謎解きになっているから、だと思うのです。

●崖っぷちじいさん登場

 グランエスタード国には、「崖っぷちじいさん」という変わり者のじいさんがいます。

 クチが悪くて、へんくつ者で、人嫌いで、文字通りの崖っぷちの家に住んでいます。城下町のみんなからは敬遠されています。が、かなり立派な知識人ではあるらしく、ときどきお城に呼ばれて意見を求められたりしているようです。

 この人は、若いころ、「この島の外にも別の陸地があるかもしれない」と考えて、いろいろ調べたり、島内の遺跡を探検したりした人です。
 そのために、古文書の古代文字を読むことも覚えましたし、実際いまでも読むことができます。感じの悪い世捨て人なんですが、立派な学者なんです。

 この崖っぷちじいさん、その若いころに、別の陸地へ行く方法を求めているうち、「ふしぎな石版」を手に入れました。何やら島のような絵図が刻まれているものです。

 この「ふしぎな石版」は、実は、封印された別の大地にワープするためのカギでした。ドラクエ7の主人公たちは、これら「ふしぎな石版」を集めては、ワープして、ほうぼうの土地を探検していきます。

 ですから、「他の土地を見つけたい」という願いをもって、「ふしぎな石版」を手に入れた崖っぷちじいさんは、まさにドンピシャだったのです。彼は世界の秘密の核心をにぎっていたのです。

 でも彼は、けっきょく他の大地を踏むことはできませんでした。それは後の世代の主人公たちの役目となったのです。

 なぜ、彼は行けなかったのか。
 その理由は、当時のエスタード王(キーファ王子の祖父にあたる人)が、ふしぎな石版を取り上げて、城のどこかに隠蔽したからです。
 なぜだか王がそんな邪魔をしたため、石版ワープで遠くの土地へ行く機会は奪い去られてしまったのでした。

老人「その石版はな わしが
 お前さんたちくらいのころに
 見つけたものでな。
老人「ワケあって 先代の国王……
 つまり キーファ王子のじいさんに
 取り上げられた物なんじゃよ。

 さて、そこまで分かったところで、マリベルはこんな疑問を述べます。

マリベル「でも どうして
 キーファのおじいさんは
 石版を 取り上げたり したのかしら。

 こんなふうに、疑問を述べる場面があるのですから、これは「ドラクエからの出題」です。答えは何か、とユーザーに問うているわけです。
 でも、ゲーム内に、答え合わせはありません。だから「ラゴスの居場所」のように、すっきりするタイプの謎ではありません。
 ドラクエにはこういう「答え合わせのない出題」が、ちらほらあるのです。

 このまったくもって当然の疑問に対する答えは、ドラクエ7の中のどこかにあるはずで、探せるものなら探してごらん、と言われているのです。

     *

 そこで私は、こういう答案を提出します。
「これはレプレサック問題だ」

 つまり、キーファの祖父に当たる、ときのエスタード王は、きっと、
「こんなものがあっちゃあ困るんですよ」
 と思ったから、石版を取り上げたのです。

 ということは当時の王は、石版の正体について、うすうすわかっていたんだ。

●グランエスタード国の正体

 小さな楽園グランエスタードには、「海の果てのどこかに、別の陸地があったりするのかもしれない……」という噂が、おとぎ話のように語られています。

 グランエスタード城の地下には、「たくさんの陸地や大陸が描かれた世界地図」というものが蔵書のひとつとして保管されていました(そういう描写があります)。でもそれは、誰かが空想で描いたものだとみなされていました。

 そしてグランエスタード王家には、代々伝わる謎の古文書がありました。古文書には、島はずれの遺跡の姿が描かれており、石版の姿も描かれており、「遺跡で石版をどうにかすれば何かが起こる」ということを示していました。

 そこまでの情報を、当時のエスタード王は持っていました。

 そこに、若い頃の崖っぷちじいさんが、「島のような模様が刻まれた石版」を見つけて持ち帰ってくるのです。

 地下の古地図を見れば、石版の模様にそっくりな島が、描かれていたりします。

 それだけのものが揃えば、指ししめすものはひとつです。
 この石版は、言い伝えられた「ここではない別の陸地」を見つけ出すための魔法の遺物なのではあるまいか……
 つまり、「別の陸地」は、おそらく実在するのだ。
 石版があれば、それは姿を現すのだ。

 そこまでの考えにたどり着いた当時のエスタード王は、きっとこう思ったのです。

「そのようなことがあっては困るのだ」

 国民の大多数は、世界はこの島かぎりだと思っており、それが常識として定着している。まともな大人は、別の大地を探そうなんてことは考えもしない。
 その常識が崩れてもらっちゃ、為政者としては、困るのです。

 誰かが別の土地を探しだしたりして、もし見つけ出したりしたら、王は、はなはだ困るのです。
 別の島や別の大陸が存在し、そこに人が住んでいて、国家が存在したとしたら。
 それは否応なく「外部」とつきあっていかねばならないことを意味します。

 外の人々とのあいだに、摩擦が発生するかもしれない。他国とのあいだに、いさかいが起こるかもしれない。経済の混乱だって考えられる。悪い習俗やよくない薬物が流入するかもしれない。盗賊や山賊や、あるいは戦争だって……。
 この満ちたりた小さな楽園が、楽園ではなくなってしまうかもしれない

 だから、この小さな楽園国家を、いつまでも楽園にしておくためには、「他の土地などあってもらっては困る」。
 そのためには、こんな石版など、存在してもらっては困るのだ。これがあったら、別の島が発見されてしまうかもしれない。

 だから、取り上げて隠蔽する。
 レプレサックの村長が、石碑のかけらを砕いたのと同じ思いをもって。

 主人公や崖っぷちじいさんは、「この世界がこの島ひとつ限りだなんていやだ、もっと広い世界があってほしいんだ!」という情熱を持った、気持ちの良い人々なのですが、
 それを望まない人も、当然いるのです。
(ゲームの中に、「遊び人」という変なものがいてほしい人と、そんなものいてほしくない人がいるように)

 だから、「石版を取り上げて隠蔽する」という、そのような対処が取られた結果、

 エスタード島では、「別の土地なんてどこにもない」という考えが常識のままになる。
 崖っぷちじいさんは、「どこかにある別の島」なんていう考えにいつまでも取り憑かれている変人ということになる。
 じいさんにしてみたら、国中の人間が「無知のまま、真実を知ろうという意志もなく、教えられたことをそのまま鵜呑みにしている度し難い連中」ということになる。
 だから世間がいやになって、じいさんはヘンピな場所に引っ越してますます偏屈になる。

 こう考えることで、「へんぴな場所に好んで居座っている偏屈な崖っぷちじいさん」という存在の、背後にあるストーリーが見いだせるようになるのです。

 だから、そう……。
 当時のエスタード王はレプレサックの村長のような男であり、
 崖っぷちじいさんはレプレサックのリフ少年(正しい伝説を教えられた一家の少年)のような立場だということになります。

 レプレサックの物語を見れば、
「エスタードでも同じことがあったかもしれない。それは崖っぷちじいさんの身の上に起こったかもしれない」
 という発想にたどり着くことができる。

 レプレサックの物語を補助線に引けば、
「崖っぷちじいさんとエスタード王に何が起こったか」
 がわかるようになっている……。

 そのような仕掛けになっているのではないか、というのが、私の考えなんです。

(続く)


※あと3回ほど続きます。原稿はほぼ出来ているのですが、諸般の事情により公開をとりやめています。そのうちしれっと再開しますので、RSSやアンテナ等にご登録するなどして、気長にお待ち下さい。

2013年3月15日 (金)

ドラクエ7の謎解き(3)この世の彼方の海と島

 ※注:「ドラクエ7」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 普通の人にはついていけないトコロまで走っちゃう可能性があります。小説版、外伝等は参照しません。

 順番にお読み下さい。
ドラクエ7の謎解き(1)ホンダラハートの継承者
ドラクエ7の謎解き(2)遊び人は世界を揺るがす

     ☆

●どうして他の土地を忘れたのか

 私はどうもエスタード島のことが気になってしょうがないのです。

 エスタード島の人々は、「この世界はどこまで行ってもこの島ひとつだけ」と思っていました。
 他にも島があるのかも……といったことは、子供の頃に誰しも思う空想だ、と、そんなふうに見なされています。
 何しろ、造船や航海技術はすごく発達していて、かなりな遠洋漁業を実施しているのに、今まで他の陸地なんてまったく見つかったためしがないのです。

 ですから、子供の頃には別の陸地を空想をしていたとしても、
「ああ、やっぱり、世界というのは、この島ひとつきりなんだ。ここで生きて、ここで死ぬ。この島にあるもので満足するのが人生なんだ」
 そんなふうに悟って大人になっていくのが、ここの人々の人生であるようです。

 でも、私はこのへんに、些細なギモンを感ずるのですね。

 前のエントリでも少し紹介しましたように、ここエスタード島の住人は、「幻の楽園島探し」に旅だった、例の「ギャンブル好きの漁師」の末裔たちだと見なすことができます。

*「かつては エスタード島といえば
 伝説の楽園だとか なんとか
 うわさが あってさ。
*「オレの知り合いでも その島を
 求めて 旅立ったきり
 戻らなかったヤツが いたっけ。
*「漁のウデは いいんだけど
 ギャンブル好きなのが
 玉にキズ だったんだよな。

 この漁師は、かなり明確にボルカノやホンダラを思わせるのですから、エスタード人はこの漁師をルーツに持つ、ということは、かなり言えると思うのです。

 でも、だとしたら変ですね。

「自分たちは、よその土地から船で渡ってきたんだ」ということを、彼らは自分でわかっているのに、どうしてそれを忘れたりするんだろうか?

●なぜルーツを熱心に伝えないのか

 ドラクエ7の世界に、陸地がほとんど存在しない理由は、「魔王が、人の住んでいる陸地を全て、異次元に封印してしまったから」です。
 だから世界にはほぼ海しかない。

 なぜ、エスタード島だけが、封印をのがれて生き残っているのかといえば、それはきっと、
 魔王が陸地を封印したとき「エスタード島には人間が一人も住んでいなかったから」
 だと推定できます。

 ちょうどそのとき無人島だった。

 無人島を封印したってしょうがないですし、どうやら大地を封印するには「そこに住む人々の絶望」がパワーとして必要らしいんですね。

 だから当時エスタード島は、人のいない単なる島として、魔王に見逃されてそのまま残ってた。

 そんな魔王の封印事業が一段落して、全ての有人島と有人大陸が封印され、やれやれこれでよしといって魔王が眠りについたあと。
 大海原を漂流していた難破船が一隻、ふらふらとエスタード島にたどり着いた……と思って下さい。

「幻のエスタード島に行ってみたい!」と考えた、勇気あるお調子者の漁師が、奇跡的にエスタード島に漂着するわけです。
 そこは全てが満ちたりた楽園島でした。

 すごい島だ。最高だ!
 よし、船を修理して、国に戻って、友達や仲間たちをこの島に連れてこよう!

 ……と漁師が思ったそのときには、彼の故郷も含め、この島以外の全ての陸地が消滅していたのです。
 ああ、なんてこった、もう帰れないじゃないか。

 そんなストーリーが、見いだせると思うのです。

 だとしたら。
 だとしたら「この島以外の全ての陸地」のことを、彼の子孫たちが忘れてしまうのはおかしい。
 むしろ、
「ルーツを忘れまい」
 その一心で、「私たちは別の土地から来たのよ」「今は消えてしまったけど、別の大陸がどこかにあるのよ」ということを、熱心に伝えゆこうとする。そのほうが自然な感情であるはずです。

 ところが、現実はそうなってない。エスタード島民のほとんど全員が、「他の陸地なんかない」と思いこんでいる。

 なぜ忘れたのだろう。

 ……というのが、私が気になっている、ドラクエ7の「謎」です。

●「別の世界」

 その謎は、こう解けばいいのではないでしょうか。

 何度も言いますが、現在のエスタード島では「別の陸地などない」というのが常識になっていますね。
 その常識が島を支配していますが、それでも「まだ見ぬ他の土地ってあるかも」という発想じたいは、いちおう、この島にもあるわけです。
 本当はそっちのほうが正しいんじゃないか、という可能性を探っている人々も、ごく少数だけども、存在はする。

 だからこう考えるのです。

 グランエスタード国は、

「他の土地なんて一度も見たことがない」という多数民族と、
「私たちは他の土地から移ってきたんだ」という少数民族が、

 混ざり合ってできた国である。

 少数民族のほうは、ボルカノとホンダラのご先祖です。あの例の、腕の良いギャンブル好きの漁師です。

「エスタード島民のルーツはこの漁師だけ」と考えるから、話がおかしくなるのです。
 そうではなくて、これ以外にもう一系統、
「最初っから、他の陸地なんて見たこともない」
 という謎の民族がいて、そっちが多数派だったと考えるのです。
 その二系統がミックスされてひとつになったのが、エスタード島の人々なのではないかと想定するのです。

 この多数民族のほうは、世界の全ての大地が魔王によって封印された、その後になってから、ぽろっとエスタード島にやって来たことになります。

 そのこと自体は当然といえますね。そんなたくさんの人々が住んでる島があったら、魔王が目を付けないはずありません。人が住んでいたら、魔王は必ずその土地を封印して(消して)しまうのです。

 ですから、エスタード島民のルーツになった多数民族は、魔王の封印事業が完了し、「ふー、あとは無人島だけだから問題ないぞ」とか安心した魔王がグースカ眠りについたあとで、「どこからか」ふらっと現れて移住してきたのです。

 どこから?

 それは、この世界ではない「別の次元」から
 ……だと私は思っているのです。

●のんきな碑文が語ること

 エスタード島の地下には、ひっそりと石碑が立っていて、こんな文章が刻まれています。

“われわれが この美しき無人島を
 発見した 記念に
 この 文字を 記す。
“この島は 楽園だ。
 水も 森も 生き物も
 食べ物も つきることはない。
“願わくば 世界のすべての地にも
 この平和が おとずれんことを。

 私は、この文字を刻んだのは、異世界からの移住者だと思うのです。

 だって、ギャンブル好きの有能な漁師は、「エスタード島に来よう」と思ってエスタード島に来たのですから、
「この美しい島がエスタード島にちがいない!」
 という文章を、彼らなら残しそうなものなんです。そっちのほうが自然じゃないでしょうか。

 また、彼らが「陸地の消滅」を知ったのなら、
「我々はこれから、ここで生きていくしかないんだ」
 という、ちょっとしたペーソスがあってもよさそうな気がするんです。

 でも、この石碑の碑文は、えらい無邪気なものです。

 魔王の封印事業で、有人の陸地が完全消滅しちゃったなんていう悲劇を知りもしないで、
「ああ、いい土地だいい土地だ、ここを移住地とぉー、するー!」
 なんていう、ハッピーな文面を、わざわざ念入りに、石に刻んだりしている。

 もし、この世に人間がいたら、人間は土地ごと封印されて必ず消えてしまうのですから、エスタード島民は、人間がいちど絶滅したあとになってから、この世界にふと現れた人々ということになる。

 だから、エスタード島人は、この世のどこでもない場所からやって来た人間でなければならない。

 そこはどこか?

 別の次元にある、別の世界からだ。

 そういうところから来た人々であれば、魔王の仕業がどうのなんて知るよしもないのですから、ああいうのんきな碑文を刻みそうなのです。

 ドラクエシリーズには、「別の次元にある別世界」という発想は、実はけっこうあります。
 それに、証拠のようなものも少しあります。

●ラーミアの羽根はここにも舞う

 3DS版でハッキリと示されたのですが、
 エスタード島の遺跡には、鳥をかたどった紋章が刻み込まれています。

(写真参照)
20130305_093032

 これは、ドラクエ7内に登場する「神さま」の紋章では「ありません」
 神さまや、神の兵士たちが使っている紋章は、中央に宝玉、そこから放射状にスジが伸びたような意匠です。光が四方八方に広がっていく、といったさまをデザイン化したマークです(がんばれば、鳥に見えなくもないですが)。

 鳥の紋章が存在するのは、このゲームでは、エスタード島内だけです。

 ドラクエで、鳥のマークがあったら、まずとりあえず連想しなければならないものがあります。
 それは、不死鳥ラーミア

 例えば、ラーミアに乗って空を駆ける「鳥の人」であった勇者ロトは、鳥のエンブレムを「ロトのしるし」として残したのでしたね。

 ラーミアは、外伝「モンスターズ」で、
「次元を超えて羽ばたく神の鳥」
 であるという説明がなされました。
 ドラクエ8の世界に出現したラーミアは、「私はかつて別の世界でラーミアと呼ばれていた存在だ」と述べたのです。

 だから、不死鳥ラーミアは、ある世界から別の世界へと、次元を超えて移動できる鳥なのです。
 この次元移動能力を使って、ラーミアは、アレフガルドに閉じこめられた勇者ロトを、故郷アリアハンに連れ帰ったのだ……というふうに私は夢想しています。こちら参照→【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその6「ラーミアはアレフガルドの朝を羽ばたく」

 ラーミアを思わせる「鳥の紋章」が刻まれているのは、エスタード島だけのですから、

「エスタード島民の先祖は、ラーミアの背に乗って、別の世界から移住してきた」

 という推定が導かれてくるのです。

●少数民族の口伝が残る

 彼らが移住してきたときには、もちろんすでに、他の大陸は消えていて、この世のどこにもありませんでした。無人島どころか、「無人世界」だと思ったのです。

 無人島を見て、「この世のすべてがこの島のようであって欲しい」と石碑に書き付けたのですから、彼らはこの世のすべてが無人だと考えたのです。

 他の人間はおらず、魔物も魔王もいないのですから、平和そのものでした。たぶん平和を求めて移住してきたのですから、平和っぽくなかったら、ここには移住してこなかったのです。

 そういう経緯で住み着いたのですから、「この世界には他の陸地がある(かつてあった)」なんてことは知りもしない。思いもしない
 だから、「世界はこの島ひとつだけ」という常識が支配的になる

 けれども、この島には、異世界人だけでなく、ボルカノのご先祖という「他の陸地から流れ着いた人々」という少数民族も、流れ着いてきて、住み着きます。

 そういう人々の間には、
「この世界には他の大地もあるのよ」という口伝が残っていく。

 その口伝がなんとなくうっすらと広まり、「もしかしたら他の島というものもあるのか……?」というアイデアが、少しばかり残った状態になる。

 そう考えると、エスタード島の奇妙な「常識」のありかたが、納得できると思うのです。

●「あの世界」から来たのか?

 もし、お好みであればの話ですが、エスタード島の人々はラーミアに乗って「アレフガルドから」やって来た、と考えることも、そう無理ではありません。

「おうじゃのけん」と同じ攻撃力数値を持った「王者のつるぎ」やら、何かを思わせるブルーメタリックな「王家のよろい」やら、王妃の形見の「太陽の石の指輪」やら、それっぽいものがグランエスタード王家にはいっぱい残されていますしね。外伝「キャラバンハート」で、キーファ王子はアレフガルドのある世界に行きますし。

 でも、私は、あんまり何でもかんでもつなげるのは好きではないので、そこはあまり考えないことにしています。その手前あたりで想像力を止めておくのが、品が良いように思うのです。


●あのいまわしき村

 ところで。
「大多数の人間が持っている常識と、少数の人が持っている常識が、奇妙にズレている」
 という現象って、ドラクエ7を遊んだ人には、何か聞き覚えがある気がしませんか?

 そう。
 そんな問題を抱えた、危険な村がありました。

 悪名高き、レプレサックです。

(この話、続く)

■続き→「ドラクエ7の謎解き(4)崖っぷちじいさんに何が起こったか」

2013年3月13日 (水)

ドラクエ7の謎解き(2)遊び人は世界を揺るがす

 ※注:「ドラクエ7」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 普通の人にはついていけないトコロまで走っちゃう可能性があります。小説版、外伝等は参照しません。

 順番にお読み下さい。
ドラクエ7の謎解き(1)ホンダラハートの継承者

     ☆

●偉大なる遊び人たちの肖像

 ドラクエ7の物語では、ホンダラのような、スチャラカな「遊び人のハート」を持った人々が、たいした志があるでもないのに偉大なことをなしとげていく、そういう基調を持って進んでいくのだということを前回語りました。

 ボルカノのような、勇敢でしっかりしていて責任感がある「だけ」では、世界の形を揺るがすような大発見はできないのです。
 なぜなら、責任感のある者は、周囲に迷惑をかけたり、世間の生活を一変させてしまうような事態の到来をよしとしないからです。
 ドラクエ的にいえば、きまじめな賢者は、町中でいきなりパルプンテを唱えて大騒ぎを起こしたりはしないのです。

 ボルカノのような強さや勇敢さをそなえた人物が、同時に、夢見がちであり、無邪気で、ちょっと小ずるくて、大騒ぎが好きで、ノルかソルかの勝負にゾクゾクするタイプで、つまり同時にホンダラのような遊び人気質を持っている場合にだけ、大事業が達成されるようなのです。

 神話の英雄メルビンはきまじめな老騎士ですが、じつは女好きで、カジノ好きで、遊び人のような側面を持っていることが物語の端々でほのめかされていきます。

 この物語に登場する「神さま」は、ステテコダンスという珍妙な踊りが大の得意な、とぼけたおもろいおっちゃんでした。

 この物語屈指の聡明さをもつコスタール王は、自分のお城をぜんぶカジノに改装して、市民に一般開放してしまうような「遊び人」でした。

 天上に浮かぶ始祖の村で、リファ族を導く族長さんは、しょうもないぐうたらなおうちゃく者でした。

 マーディラス国は、「必死で国を守らなければ!」と真剣になることで、かえって滅びかけました。歌って踊って絵を描いて、楽しくやりましょう! という方向転換をしたとたん、押しも押されもしない大国になったのでした。

 その大国の名君グレーテ姫は、「何か面白いことはないかのう」といつも探しているような少女であって、主人公が提案した音楽大会に「それはいい!」と面白半分で飛びつくような人でした。

 弦楽器トゥーラの楽師であるヨハンは、昼間っからゴロゴロして、目が覚めれば女の子を口説いている、まさにホンダラ的な「遊び人」でした。しかし、神様の楽器を弾きこなして、みごと神をこの世に復活させる偉業は、彼がなしとげたのでした。

「偉大なる者は、遊び人である」
 という、主張めいたものが、あると思うのです。

●「選ばれし者」としての条件

 勇敢で、力強いだけでいいなら、そういう人はこの世界にいっぱいいるのです。

 ふきだまりの町のスイフーは、あきらかに主人公より強かったです。
 そのスイフーから一目置かれているカシムも、もちろん強い剣士です。
 ウッドパルナの剣士ハンクや、砂漠の村の四男坊サイードも、主人公たちと同等以上に強かった。

 でも、主人公にはあって、彼らにないものがあります。そいつがホンダラハートです。彼らは真面目すぎるのです。

 海賊シャークアイは、魔王の軍勢と同等に渡り合える海の英雄です。しかも、主人公と同等の「水の精霊の加護」を受けた男です。
 でも、水の精霊が「世界を救う使徒」として選んだのは、シャークアイではなくて主人公のほうでした。

 主人公にあって、シャークアイにないもの。それがホンダラの心。遊び人のハート。この世の全てをガラガラポンする力です。そう思うのです。

     *

 3DS版のドラクエ7では、エスタードの謎の神殿は「神にえらばれた者だけが出入りできる場所」だという説明があります。

*「ここは 復活の神殿。
 この神殿に入れるのは 選ばれし者だけ。
*「だから お前たち……
 たぶん 神に 選ばれし者。

 ところが、ホンダラは、「神殿の中を経由しない限り決して行くことができない」場所である七色の入り江に行くことができました。そこに行って、七色のしずくを汲んできたのです。
(注:エンゴウの闇の炎を消した「すごい聖水」の正体は七色のしずくです)

 だから、結論としてはこうなります。「ホンダラも神に選ばれし者である」。3DS版で、神殿経由でないと入り江に行くことができなくなったのはおそらくこの表現のためです。

 終盤、ホンダラは神さまに会おうとして失敗します。なぜ神さまは選ばれし者ホンダラに会おうとしないのか。それはもちろん、そのとき復活していた神様は魔王が化けた偽物だったからです。本物だったら会うのです。「ホンダラが神さまに会おうとしたが、会えなかった」というエピソードがあえて配置されているのきっとそのためです。

●「遊び人」とは、生き方である

 ドラクエ7は、「転職」のシステムがあるゲームです。主人公たちは、さまざまな職業への転職をくりかえすことで、特殊能力を獲得することができます。

 ドラクエの転職システムには、伝統的に「遊び人」という職業が用意されています。具体的には、ドラクエ3や、ドラクエ6で、「遊び人という職業になる」ことができました。経験値を上げると、いろんなしょうもない「あそび」を覚えるという、基本やくにたたない職業です。

 ところが、この伝統的職業である遊び人が、ドラクエ7では、カットされました。そのかわりに入れられた職業が「笑わせ師」いわゆるコメディアンという職業でした。

 なんでいきなりカットされたのか。
 その理由がわかる気がします。

 その理由は。

 この物語が、「遊び人」たちの物語であるからです。
 この物語の中では、遊び人は生き方であって、職業ではないからです

 ドラクエ7は、遊び人の生き方を持った英雄と、遊び人の生き方を持った神さまと、遊び人の生き方を持った王子と、遊び人の生き方を持った王様と、遊び人の生き方を持った村長と、遊び人の生き方を持った楽師と、遊び人の生き方を持った遊び人と、遊び人の生き方を持った漁師の一人息子という主人公の物語であって、そこに職業としての遊び人が存在すると、変なことになるのです。


●「役立たず」がいてもいいという場所

 世の中を良くしてやろうとかいった気負いではなく、「遊び人の遊び心」が世界を動かしていくという、この主張めいたもの。
 それは、これまでのドラクエからも、感じ取れます。

「世の中の役に立つわけではないものの力」

 ということが、ドラクエでは、意識されているような気がします。

 おもしろいインタビューをみつけました。堀井雄二さんと中村光一さんが、ドラクエ3の開発当時の思い出を語っているのですが、こんなエピソードがありました。

堀井 あそび人は、ものすごく議論したのを覚えてる。
中村 そう。開発スタッフの中には、RPGにはそんな職業はないっていう意見もありました。

――それはたしかに、そのとおりですね。
堀井 すごく反対されたの。
中村 でも堀井さんは、あそび人は絶対になきゃいけないんだって主張して。
堀井 そうなの。どこか余裕が、遊びの部分がなきゃだめだって。おもしろいじゃんって。
中村 当時は開発の初期段階で、大きな方向性を決めるために「合宿」をしたんですけど、そのときに堀井さんとスタッフが。
堀井 すんげー言い合った。
中村 すんげー言い合って。朝からずーっと夜まで、「あそび人がいるか、いらないか」という議論を、ホントにずーっとやってるんですよ。

(略)
堀井 あとで賢者になるというのは、そのときの議論があったからだと思う。あそび人を極めれば賢者になるという仕掛けならいいでしょ、って。
――そのときの議論がなかったら、ずーっと遊んでるままだったんですか?
堀井 そうそう。とくに役に立たないまま。

(ゲーマガ 2012年2月号 『ドラゴンクエスト25周年記念 堀井雄二×中村光一 特別対談 後編』P.78)

 インタビューにも書いてあるけれど、ほんとうは、「遊び人はレベル20で賢者に転職できる」なんていうギミックは、堀井さんは入れたくなかったんだろうと思います。

 ドラクエ3の職業「遊び人」は、ほぼまったくメリットがなく、どんなにレベルが上がっても、「遊び」しかしません。
 本っ当に役立たずなのです
 これをあえて冒険の仲間に入れるとしたら、その理由は「シャレで」以外にはないくらいです。
 そういうものを、断固としてゲームに入れるんだと主張して、実際に入れたのが、ドラクエ3のシナリオライター、ほぼ原作者といってもいい堀井雄二さんです。

 遊び人という、そういう職業を選択できるんだ、という堀井さんのアイデアに、スタッフの一部は大反対したわけです。

 なぜスタッフが反対したのかという理由は、想像するに、2つあると思います。
 ひとつは、容量の問題。もうひとつは、美意識だと思います。

 FC版ドラクエ3は、カートリッジの容量が足りなくて、開発に苦労したと聞いています。ドラクエ1のときも2のときも、容量が足りなくてスタッフはさんざん苦労しているのです。構想時にたてた物語の全内容なんて、とてもカセットに入らないにきまっています。
 案の定、ドラクエ3でも、町がまるごとひとつボツになりました。本当はオープニング画面が出るはずだったのですが、全部カットされました。

 そんなふうに、スタッフはこれから、「とうてい入らないものを、切り詰めながら、どうやって押し込むか」という辛い作業をすることになるのは目に見えているのです。

 それなのに、「何のためでもない職業」のデータを入れなければならないのか

 普通の考え方をすれば、ドラクエ3のメインストーリーをすこしでも充実させてお客さんに手渡したいのですから、「ストーリーのため」「感動のため」にリソースは使いたい。そのための苦労ならいくらでもしやすいのです。

 それなのに「何でもないもの」を入れろというのですから、つかみどころがなさすぎます。気持ちが悪いです。ゲーム制作者さんというのは職人さんですから、美しく配置された、整ったものを作り出したいのです(と思ってるだろうと想像します)。何だかわからない気持ち悪い遊び人なんていうものを入れたくない。これはとても理解できる感覚だと思うのです。スタッフさんたちは、「遊び人が賢者になれるということなら納得する」という反応だったのですから、「無意味に対する拒否感」「役割がないものに対する嫌悪」という感情があったと理解できます。

 しかし堀井雄二さんは、このゲームの中に「役立たず」の居場所を作ったのでした。
 ここに役立たずがいてもいいよ、という、その居場所を断固として確保しつづけたのです。

 なぜ?


●世界を広げるということ

「何のためでもないものが入っていて欲しい」
 という願望、実感、直感のようなものが、ドラクエにはあるように思うのです。

 というか、
「役に立つものがあり、それが実際に役に立ち、結果何かが成し遂げられる」という物語は「窮屈でいやだ」
 というセンスがあるような気がするんです。

 役に立つものだけが揃えられているのは、息が詰まる。
 理由があって、きちんとした役割があるものだけで構成された世界は「スケールが小さい」。
 そういう思いが、堀井さんにはずっとあったんじゃないか。そのように想像するのです。

 自分で作る世界は、ミクロコスモス(ここでは「小さくまとまったもの」の意)にしたくない。
 役に立つ物、理由がある物だけでできた世界は「たったそれだけのもの」になってしまう危険性が高いのです。

 これは、このために、ここに設置されている。
 あのキャラは、あの目的で、ここに置いてある。
 その繰返し。
 どこまでいってもその繰返し。
 それがずっと続いて、ゲーム内の全部を見たら、終わり。以上。

 そんなのは嫌だったのでしょう。
「この世界は、これだけで全部です」と思われるのが嫌だった堀井さん、という姿が、あると思う。
 だから堀井さんは「何のためでもないもの」を好んで入れる。

 何のためでもないものには、世界を広げる力がある。そういう直感があっただろうと思われるのです。

     *

 だから堀井さんはドラクエ2では、「パルプンテ」という、「何が起きるかわからない、スロットのような、ギャンブルじみた、ガラガラポンの魔法」を入れたりするのです。

 パルプンテの呪文は、ごくまれに、この世のものとは思えない「とてつもなくおそろしいもの」を呼び出すことがあります。

 どのくらいおそろしいかといえば、この世で最も強大で恐ろしいと思われる大神官ハーゴンや破壊の神シドーですら、あまりに恐ろしくて逃げだすほどのものです。

 そんな「恐ろしいもの」とやらが、本当に実在するのか? それとも、存在しないけど存在するような気がしただけなのか? かりに存在するとして、それはこの同一次元のものなのか?
 よくわからない。よくわからないものだ。
 でもとりあえず、「そういうものを見た」と思う現象は存在する。

 どうも普通では目に見えないような所に、何か得体の知れないものがいるらしい……。

 ほら、今、すごく世界が広がったでしょう。
 世界は目に見える範囲だけのものではない という形で、無限が生まれた

 これは、「かならず恐ろしいものを呼び出す呪文」であったら駄目です。
「そういう役割を持った、そういう意味のあるもの」「そういう額面で流通するもの」になってしまうからです。つまり役に立つものになってしまう。得体の知れないものではなくなってしまう。

     *

 ドラクエ3の「遊び人」という職業も、それと同じだと理解できます。

 遊び人という「ゲーム攻略のためではないもの」が入っている。
 そのことによって、
「このゲーム内のすべてのものは、ゲーム攻略のためだけに予定調和で配置されたものである」
 という「作り物の小ささ」から離脱する力が獲得されているのです。

 この世界は、ゲーム攻略かぎりのものではない。

 遊び人という、得体の知れないものが入っていることにより、ドラクエ3は得体の知れないゲームになったのです。
 それにより、「どうせこの世界も、ゲーム本筋かぎりのものか」という「見切り」が不可能になるのです。

 ついでに、たいした指摘ではないが蛇足的なことを言えば。
 遊び人とは、「遊びの人」です。そして、ゲームは遊びです。
 だから、堀井雄二さんは、作家という職業で、ゲームデザイナーという職業だけれど、同時に生き方としては遊び人だ。
 ドラクエのユーザーは、実生活でさまざまな職業を持っているだろうけど、ゲームという遊びをあそんでいるのだから、遊び人です。

 遊び人であることは、社会にとって何の役にも立ちませんし、ゲームなんていうものは、べつに世の中を便利にしたり良くしたりするものではありません。
 でも、そういうものが世の中にあってもいいじゃん。そういう人々がいてもいいじゃん。そのうち何か、世間をビックリさせるようなことをしでかすかもしれないよ。

 だから、そういう人やものがいてもいい居場所を残しておこうよ。
 そういう気持ちを読み取ることもできます。

●予定調和からの脱出

 そのことが「メインテーマ」と言えるところまでまで出世しているのがドラクエ7だ、とも言えると思うのです。
 先述のとおり、これは遊び人が世界を救うお話です。
 もっといえば、ドラクエ7のシナリオは、かなり深刻なトーンのものが多いです。
 だから、「深刻ぶった世界を、遊び人が救う」物語だともいえる。

 エスタード島というのは、小さくまとまったミクロコスモスです。
 良いものと必要なものは充分にあり、良くないものは含まれていない。善なるもの、役に立つもの、美しいもの、価値のあるもの。そういったものを適切に配置して作り上げられた、小さくまとまった、それだけの世界です。

 そういう小さな秩序に、満足できるなら、それもいい。

 でも、そんなのは息が詰まる! と思う人々もいるんだ。それが主人公であり、キーファであり、マリベルであり、そして堀井雄二さんです。

 そんな小さな秩序は息が詰まるから、堀井雄二さんは、外に出て行こう。別の大地をふみしめよう、カオスに触れよう、邪悪とだって対話してみよう。そういう物語を描くのです。

 そのような、秩序からすすんで離脱したいと願うハートを持つ者が、遊び人です。
 ドラクエ3の遊び人というギミックには、世界を広げる効果がありました。

 そして、ドラクエ7は、何の役にも立たないホンダラと、その同類である主人公たちが「世界を広げる」、文字通り世界に陸地を増やしていく物語であったのです。

 必要なものが、適切な場所に、丁寧に配置された小さな楽園としてドラクエを作りたいんだ、と主張したドラクエ3制作スタッフは、グランエスタード島の大人たちです。
 そして、いやいや、何だかわからない、しょうもない、何の意味もないものも欲しいんだ、そういうものがあることで、世界が大きく広がるんだよと主張した堀井さんは、ドラクエ7の主人公のような存在です。

(続く・次回、「グランエスタードの正体」にせまります)

■続き→「ドラクエ7の謎解き(3)この世の彼方の海と島」

ドラクエ7の謎解き(1)ホンダラハートの継承者

 3DS版のドラクエ7が発売されて、ちょうどホットトピックになっているようですから、ドラクエ7の話でも。

 ドラクエ7って、全シリーズの中でもかなりキリスト教臭がつよく、特にグノーシス派の影響が強いということが一般に言われています。
 でも、そういったことは、それほど重要じゃないと思いますから、ワキに置いておきましょう。そんなことよりわたしには語りたいことがあります。ホンダラ氏の話です。

     ☆

 ※注:「ドラクエ7」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 普通の人にはついていけないトコロまで走っちゃう可能性があります。小説版、外伝等は参照しません。

 数回にわたって連続ものとしてお届けします。

     ☆

●ホンダラは世界を救う

 ドラクエ7には、「ホンダラが世界を救う物語」という側面があると思うのです。

 ホンダラというのは、ドラクエ7の最序盤から登場するおっさんキャラクターです。主人公の叔父にあたる人なのですが、これがもう、本当にしょうもないヤツです。

 定職もなくプラプラしていて、昼間まで寝ていて、起きれば明るいうちから酒を飲み、おねーちゃんを口説き、そしてときどきガラクタを拾ってきては、お宝のように言いくるめて人様に売りつけては、儲けた儲けたといってうれしがる男なのです。ほんとうに、ラクして儲けることしか考えていません。

 一方、主人公の父親であるボルカノという男は、国一番の漁師で、誰からも尊敬されています。
 仕事の腕がいいだけでなく、勇敢で、しっかりしていて、豪快で、気っ風がよく、誰からも頼られる大人の男なのです。遠洋漁業の船長なのですが、おそらく部下たちに対しても公平で、全員から好かれています。ドラクエ7の主人公は子供(少年)であって、いずれこの子がボルカノを継ぐんだと国中の人から見なされています。

 ドラクエ7の最序盤あたりは、このボルカノとホンダラの間をいったりきたりするような感じで、話がすすみます。
 豪放で大人な父ボルカノと、いーかげんな遊び人の叔父ホンダラのあいだで、おつかいなんかをしながらウロウロしているのが、主人公なのです。

 世間によくある物語では、ボルカノは幸せに暮らし、ホンダラは落ちぶれました、皆さんも真面目に生きましょう……なんていう、つまんないところに落とし込まれがちです。

 ところが、ドラクエはそうじゃないわけです。

 世界を救うための宝物を、どこからか手に入れてくるのは、いつも必ずホンダラなのです。

●ホンダラが見つけてきたもの

 ホンダラは、タダで拾えるガラクタあさりをしていて、ある日、触るとほんのり温かいふしぎな石をひろいます。口先三寸で「すごい力を秘めた石だ!」かなんか言って誰かに売りつけて儲けようか、さもなくば、酒場のきれいなおねーちゃんにプレゼントして気を引こうか……といった魂胆でそれを持ち帰りました。
 その石は、神話の時代の英雄が封じ込められたタイムカプセルでした。

 ホンダラは、何か高値で売れるようなものを探して、神殿遺跡の探検をしていました。その遺跡は、きらきらと美しく輝く入り江につながっており、ホンダラはその入り江の海水を持ち帰りました。「すごい力を秘めた聖なる水だ」かなんか言って他人に売りつけようと思ったのです。
 その入り江の水は、本当にすごい力を秘めていて、邪悪な炎を消し去る霊力を持っていました。

 主人公を含めて、国中の全員が、「ホンダラが高値で売りつけようとしてくるものはガラクタ」と思っているのです。
 しかし、実は、それはガラクタなどではなかった。ほんとうに価値のあるものであって、「世界を救うためには必ず必要な物」とすら言えるものでした。
 そのことを誰も見抜けなかっただけだったのです。ほんとうに価値のあるものを見つけてきたのはろくでなしの遊び人のホンダラでした。ほかの全員は、その価値に気づけなかったのです。

 ホンダラ本人も、ほとんどそれらの価値に気づいていないところが、実にいいのですね。
 世界を救うために宝物を拾ってきた「わけじゃない」ところが、実にいい。

●世界を救うためではなく

 ドラクエ7の物語は、小さな島の小さな国から始まります。
 エスタード島という小さな島に、グランエスタード国という王国があって、争いごともなく、貧困もなく、外敵もなく、平和そのものの国です。
 なぜそんなに平和かというと、この世界には、この島しか陸地がないからなのでした。
 外から誰かがやってくることはないし、内からどこかへ出かけて行くこともない。食料も必需品もすべて島ひとつの中で充足できる。だからまったくの平和なのです。

 ところが、この平和に、ちょっとだけ満足できない人たちがいました。この物語の主人公とその仲間達です。
 彼らは、「まだ見つかっていないだけで、どこかに別の陸地があって、別の国々があるんじゃないか?」と考えました。

 その考えは正しかったのでした。のちのち分かっていくことですが、この世界は、わるい魔王によって陸地を異次元に封印されてしまった世界なのでした。ほんとうはいろんな大陸や島々があったのですが、魔王が消し去ってしまったがために、海だけになってしまっていたのです。

 主人公たちは、あちこちで拾い集めた「ふしぎな石版」の魔力をつかって、封印された土地にワープし、その土地土地で魔王の手下たちを退治することで、失われた陸地をどんどんこの世界に取りもどしていきます。ドラクエ7の物語は、その繰返しで構成されています。

 これを、
「魔王に封印支配された大陸を奪還し、世界をあるべき元の姿に戻す」
 という言い方をしてしまえば、いわゆるヒーロー物語的な類型になってしまいます。
 でも、この物語の主人公たちは、どうもそういうノリではないようです。

 世界を救うんだ! という暑苦しい動機ではなくて、
「小さなエスタード島は、知ってる場所ばかりでもうあきた。知らない場所を探検してみたい」
 という、まことに子供っぽい衝動につきうごかされて、主人公たちは冒険をくりひろげていきます。
 彼らが冒険をする理由は、魔王に封印された各地の人々が困っているからではなくて、「自分たちの島の周りに他の陸地がいっぱいあったら嬉しいから」なのです。

 世界を救いたいから世界中を旅するのではなくて、とにかく知らない場所を冒険したいのでいろんな土地にワープしてまわっていたら、いつのまにか世界が救われていた。

 ドラクエ7って、そういうトーンで、ほぼ全編が進んでいきます。

 そしてそれは、

「別に世界を救うためではなくて、自分がいい思いをするためにガラクタを集めていたら、いつのまにか世界を救う宝物を手に入れていた」

 という、ホンダラのストーリーと、まったく質がいっしょなのです。

●遊び人たちは世界を動かす

 ホンダラという人物は、珍妙な頭巾をかぶった男として登場します。何というか、先が尖っていて、先端にポンポンのついた、スキー帽とサンタクロースの帽子を足して二で割ったような、ピエロみたいな帽子です。

 これとほぼ同じ帽子をかぶったキャラクターが、ホンダラの他に、あと一人だけ存在します。
 それはほかならぬ主人公です。
 主人公も、ホンダラみたいな珍妙な頭巾をかぶった少年として登場するのです。

 この帽子はグランエスタードの民族衣装……などではありません。なぜなら、そんなものをかぶっているのはこの2人だけだからです。

 主人公は、偉大な漁師ボルカノの跡取り息子だが、ホンダラのアイコンを備えて登場し、ホンダラのアイコンをプラプラさせながら活躍する。
 これは明らかに「主人公はホンダラの同類である」(そしてホンダラは主人公の同類である)というサインです。

 主人公は大漁師ボルカノの一人息子であって、ボルカノ譲りの才気や度胸を備えているけれども、同時にホンダラのような「遊び人のハート」も、別の面として持っている。

 どうやら、
「世界を救うような大きなことをなしとげるのは、遊び人のハートを持った人々だ」
 という基調が、ドラクエ7にはあるみたいなのです。

     *

 前述の通り、エスタード島の人々にとって、「世界とはこの島ひとつである。どれだけ海の向こうに行っても、他の陸地などない」ということが常識でした。

「海の果てに、別の陸地があり、別の人々が住んでいるかもしれない」というアイデアも、いちおう島の中に、あるにはある。しかし、何世代も前から遠洋漁業をしているのに、そんな陸地など発見されたためしがない。
 だから、やっぱり別の陸地など存在しないのだ。この島ひとつで満足して平和に生きていくのが人生というものだ。
 そういうふうに悟って、大人たちは暮らしています。

 しかし、そういう諦念じみた安定をよしとしない者たちがいます。それが主人公たちです。
「どこにも見あたらないっていうけど、見つけてないだけかもしれない。どこにも存在しないっていうけど、それって、ウソかもしれない」

 そう思って探検した結果、
「存在しなかった島や大陸を、自ら生み出してしまう
 という、素晴らしい奇跡をなしとげました。

 しっかりした大人たちは、そんなことを試しはしないのです。なぜなら、「地に脚の付いた」生活を重視するからです。
 足元のさだまらない、フラフラした、遊び人のハートだけが、新たな大地を見つけ出すような偉業をなしとげることができるのです。

     *

 世界中の陸地のほとんどを取りもどしたとき、主人公たちは、過去からやって来た海賊船に出会います。
 船の中にいた海賊のひとりが、こんな印象的なことを述べます。

*「かつては エスタード島といえば
 伝説の楽園だとか なんとか

 うわさが あってさ。
*「オレの知り合いでも その島を
 求めて 旅立ったきり
 戻らなかったヤツが いたっけ。
*「漁のウデは いいんだけど
 ギャンブル好きなのが
 玉にキズ だったんだよな。

(注:これは、遙か過去世界から見たエスタード島の伝説です)

 どうやら、元の世界にとって、エスタード島は、ガンダーラみたいな「どこかにあるユートピア」だったようです。
 そこは、緑豊かで、陸の恵みにも海の恵みにもみちあふれ、気候がよく、平和で、おだやかで美しく、まるで楽園のような世界なのだが、まだ誰もそこにたどり着いたことはない

 エスタード島にとっては、他の陸地全てが「存在するのかどうかも疑わしい幻の土地」だったのですが、他の陸地の人々にとってみれば、エスタード島こそが、「どこにあるとも知れない幻の楽園島」だったのですね。

 そして、それを求めて旅だった男は、素晴らしい腕前の漁師だったが、同時にギャンブル好きの遊び人だったというのです。

 この海賊のセリフは、
「どうやらエスタード島の人々は、外の陸地から流れ着いた人々の末裔らしい」
「この《遊び人の漁師》は、どうもボルカノとホンダラのご先祖様らしい」

 ということをほのめかす内容になっています。

 でも、そういったことよりもっと大事なのは、

「幻の楽園島を発見した偉大な海洋探検家は、遊び人のハートを持った男だった」

 という点だと思うのです。

 ボルカノみたいに腕が良くなければ、どことも知れぬ島に小船でたどり着くなんてできなかっただろう。
 ホンダラみたいにお調子者でなかったら、「どことも知れぬ島を見つけていい思いをしよう」だなんて思わなかっただろう。

 ボルカノのようでもあり、同時にホンダラのようでもある男だからこそ、幻の楽園エスタード島を発見できたのです。

 そして、この物語の主人公は、漁師ボルカノに育てられ、遊び人ホンダラの生き方を目の当たりにして育った少年なのです。そういう少年が、幻の陸地を発見していく物語なのです。

(続く)

■続き→「ドラクエ7の謎解き(2)遊び人は世界を揺るがす」

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