サマルトリアにいかづちの杖(1)
ちょっと気持ちがグツグツするようなことがあって、気分転換にドラクエ2をやりはじめた。スーファミではなくファミコン版です。ドラクエ3ほどではないがすでに何周もクリアしているゲームだけれど、やりはじめるとやっぱり楽しく、そして気持ちが調整される感じがする。RPGってふだん使わない脳の部分を使うので、精神のストレッチをしているような気分になる。
ぼくは最も愛するゲームにはドラクエ3を挙げるけれども、ただドラクエ3は、「出来すぎ」ている感がある。そこへいくとドラクエ2は、少し「いびつ」にできていて、そこがいい。
ドラクエ2には、神が宿ってるなと思うときがある。
世界のすべて、勇者の旅と血と汗のすべてが、たった52文字の「復活の呪文」で記述できるというのが、ハッキーで素敵だ。復活の呪文が長くてしんどいという人がいるけれど、とんでもない話で、たったこれだけで世界そのものが記述できてしまうなんてミラクルだ。もちろん、記述できるように世界がデザインされていることがミラクルなのである。美しい。
そして、デザイン外の部分も美しい。「神が宿る」という表現が、ほんとうに似合うのは、この部分かもしれない。具体的には、「いかづちの杖の無限販売」「水の羽衣2着製造」「はかぶさの剣」のことを指している。
この三つは、いわゆる「裏技」で、基本的に、ゲームデザイナーが意図していないものだ。
ドラクエ2は、「ゲームバランスが崩れている」ゲームとして、知られている。ようするに敵が強くて難しいのだ。
だが、この三つの裏技を知っていて、すべて使用すると、なぜか奇跡的にバランスがとれたゲームになる。
重要アイテム「いかずちの杖」は、ある方法で無限に入手することができ、それを売り払うことで無限にお金を入手できる。ドラクエ2は敵が強くてすぐにパーティが全滅するので、お金が貯まらず、それで異様に苦労するゲームなのだが、それを救済する効果になっている。
「水の羽衣」は最強クラスの防具で、ふつう1着しか手に入らないが、ある方法で2着手に入れることができる。これで、弱い仲間を二人強化することができ、サマルトリアの王子は実戦的キャラクターとして輝き出す。
「はやぶさの剣」は二回攻撃ができる代わりに威力は棒っきれ並みのなまくら刀。「破壊の剣」は最強の武器だが呪われている。破壊の剣の攻撃力で、はやぶさの剣の二回攻撃ができるようになるバグが、いわゆる「はかぶさの剣」。ゲーム終盤の異様に強力な敵陣とも、これでようやく対等に戦えるようになる。
どれも、ゲームデザインの外にある、バグによる効果なのに、それを使うことでプレイ感触が「ちょうどよくなる」。決して、簡単すぎるようにはならない。むしろ、この恩恵があってもまだ難しいくらいだ。偶然の産物なのに、難しすぎたゲームが、ちょうど気持ちよくなる。まるで神の手が、このゲームを名作とするために、堀井雄二中村光一の頭上からそっと操作を加えたかのようだ。
これに比べたら、ドラクエ4の8回逃げやら、ドラクエ5の「ひとしこのみ」なんてのは、まったくディヴァイン・デザインを感じない。ドラクエ3のランシール神殿には、確かに神が住まっておられるなと思う。防御攻撃は、神とまではいわないが、精霊くらいは宿っているだろうか。さしずめルビスの加護といったところだろう。
(続く)
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