(檀流)ツユク改
檀流クッキングに、「ツユク」という豚の前菜があって、たいへんおいしくて何度も作っているのだけれども、少し物足りない点がある。
というのも、ツユクというのは豚肉のかたまりをニンニクとショウガとネギで、なるべく水を少なく煮て、豚肉のうまみは外に出さずに香辛料の風味をしみつかせるという料理だから、塩味を加えないわけだ。
塩で煮たら、浸透圧の関係で、とうぜん、肉の旨味が外に出て行く。だから香辛料以外には味付けをしないで煮る。
ということは、風味はついていても、塩は効いていない、そういう食べ物だということになる。
もちろん、食べるときには塩がないとつらいから、アミ(小エビ)の塩辛をまぶしつけて食べるとされている。アミ塩でツユクを食べるとまことにおいしい。
けど、アミの塩辛なんてそこいらに簡単に売っているものではないわけで、まあイカの塩辛で代用してもいいけれど、そのためにいちいち塩辛をひと瓶買ってくるというのも、ちょっとしんどい話だ。
さてそんなある日、ネットで調べて「鶏はむ」(鶏肉の塩漬けを茹でた簡易ハム)を何度か作り、肉の塩蔵のしかたを覚えた。それでハッと思いついたのだが、豚肉をいったん塩漬けにしたあと、ツユクにしたらいいのではないか。
「ラーメン発見伝」というまんががあって、ラーメン作りのうんちくがいろいろ描かれているのだが、その中に「ポー・サレ」という技法がある。豚肉でスープをとり、その残った肉でチャーシューを作ると、チャーシューはダシガラだからまずい。そこでいったん豚肉を塩漬けにし、それから野菜や他のダシを加えてスープを取ると、浸透圧が良い具合に働き、豚の旨味が出て行くかわりに、他の旨味がよく肉に入り込んでくるのでスープも肉もおいしく食べられるという。
つまりはそれと同じことなわけだ。
やってみよう。
まず豚の肩ロースのかたまりに砂糖をまぶし、軽く水分を抜く。
そのあと、肉の重量の5パーセントの見当で塩をまぶしていく。5パーセントというと計量が面倒に思うが、塩の比重は水とあまり変わらないので、大さじ1杯(15cc)がだいたい15グラムだ。300グラムの肉を買ってきたら大さじ一杯ということでしょう。
5日間冷蔵庫で保存して、その間肉汁が出てきたら拭き取る。
肉がちょうど入るくらいの小鍋に肉をおさめ、スキマにニンニク、ショウガ、ネギを詰め込む。ネギを買ってきたら青いところを冷凍庫に放り込んでおき、こういうときに取り出して使う。
ふと思いついて、コンブを追加してみた。以前湯豆腐に使った昆布のダシガラを細切りにして冷凍しておいてある。それを放り込む。
豚肉とアミ塩という組み合わせが旨いのは、つまりは、豚のイノシン酸とアミ塩のグルタミン酸の相乗効果ということだろう。
ならば、煮るときにすでに、グルタミン酸のかたまりであるところの昆布を入れておけば、味が深くなるにちがいない。
なるべく少ない水で三十分煮込んでそのままさまし、クッキングペーパーでくるみこんで冷蔵庫の中で重しをして水気を抜く。
一晩たったころがいちばんの食べ頃。
これは成功でした。
いつもよりネギやショウガの風味が強く出ていて、とても良いです。煮汁は例によってお粥にして、香菜を混ぜて食べました。
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