鶏はむを食む
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たとえば、スーパーに買い出しに行って、「広告品」の黄色いラベルが目につき、それは豚のスペアリブ、沖縄風にいえばソーキのところであって、値段は100グラム98円。そこに「30%引き」のシールまで貼ってあったとしたら買わない手はなかろう。普段の半額である。300グラムのパックを4つも買ってしまい、それでも千円しない。
邱永漢さんの「食は広州に在り」に、「豆油肉(タウユウバア)」という豚肉煮込みの料理が紹介されていて、それが笑っちゃうくらい簡単に作れてうまい。
豚肉のかたまりと、ネギを何束か、鍋に入れて、醤油と水を半々にして何時間か煮込む。なんとそれだけのことだ。どうやら中国の常菜だそうで、日々の料理のほかに、これをしじゅう作っておいて食べるならわしらしい。ゆで玉子を一緒に煮込めば味玉になる。
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華南から南洋にかけて中国人の蝟集する市場の中を歩いたことのある人なら、地べたにしゃがみこんだ労働者が、白いご飯の上に醤油色の玉子をのせて、ふうふう吹きながら食べている光景を見たことがあるにちがいない。
邱永漢「食は広州に在り」
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まったく、これで飯を食うとたまらない。白米をガツガツ食いたいおかずグランプリがあったら五位にはまちがいなく入るだろう。カレーのように、大量につくっておいて、腹が減れば飯にのせて食う。肉が減れば肉を足し、だしが煮詰まれば水でのばし、味がうすくなれば醤油を少し足して、煮直していればいつまでも持つ。日本よりはるかに暑い台湾や広州の保存食だというからお墨付きだ。煮直すほどうまくなる。
ただ日本の冬場に作るなら、醤油は水との半々ではなく、三分の一とか四分の一でもかまわないかもしれない。煮詰まってくると、さすがに味がからい。
さて、そこで、炊飯器にこの肉を入れ、もしとっておいてあればアバラの骨も放り込み、ダシのでたおつゆを少しまぜこんで炊いたら、たちまち炊き込みご飯になって、これがまたおいしいので手に負えない。
さらにおつゆはチャーハンのタレにしたらこれまた美味であった。
こういうざっかけない乱暴な食い物ってどうしてこんなに旨いんだろう。こればかり食べて、もう5日目に突入しています。
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ちかごろ、毎週の放送が楽しみで楽しみでしかたがなくて、くりかえし見てしまうテレビ番組があって、それが何かといえば、「土井善晴のおかずのクッキング」であるという……。
土井善晴さんはしゃべりが実に良いですね。独特の間合いがある。そして料理はとてもシンプルで、ちょっと試してみたくなるような手頃なところをきちっと紹介してくださる。この人、髪をそめるのをやめて白髪をそのままさらすようになって、急に雰囲気がよくなりましたね。あぶらっけというか、アクがぬけた感じがする。こないだは、正月にむけて黒豆の煮方を紹介しておられて、父親からゆずりうけたという錆釘をテレビに映しておられた。黒豆を黒く煮あげるのに使うのです。土井さんの父上といえば、しわの寄らない黒豆の煮方を発明して世に広めたことで有名な故・土井勝さんだ。
さて、youtubeで土井善晴動画をさがして見ていたところ、土井さんが「かぼちゃの直がつお煮」というのをつくっておられた。「じがつおに」と読む。かつおだしを取って煮込むのではなく、かぼちゃの上に削りがつおを直接乗せて煮てしまうので「直がつお」らしい。手間いらずなのでいつかつくってみようかな……と思っていたところハタと気づいたのは、そうか丁度いまは冬至ではないか。冬至にはかぼちゃを食べるものだ。なんというタイミングでかぼちゃのレシピを見つけてしまったのだろう。ということでその日のうちにかぼちゃを買ってきた。そういえばかぼちゃを自分で買って煮たりするのは初めてのような。包丁の刃がたたなくて、力わざで押し切ったので、何度か指が危険にさらされていました。
かぼちゃを並べて水を張った鍋に、削りがつおを手づかみ、モサッとのせる。そして煮込めば、フワッとかつおのいい香りがふくらむ。ちょっと煮くずれてしまったが、甘くポクポクしていて心やすまる味わいである。
写真。うつわがところどころ欠けてるのが少し恥ずかしい。
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手羽先料理として紹介されていたものだが、手羽中が安かったからそれでつくることにした。もちろん手羽元でもかまうまい。
手羽中をにんにくと一緒に二十分ゆでる。にんにくは粉末ガーリックで間に合わせた。
いちど湯からあげて冷蔵庫でさます。
中華鍋で表面を焼く。
鍋肌から、酒と醤油を一対一でまぜたものを流し込んでからめつける。それだけ。
もしあればごま油で香りつけをして、さらにもしあれば五香粉を少しふりかける。なけりゃないですませる。
でも五香粉って、今回初めて買ってみて、使ってみましたけど、これをかけるだけで急に中華料理っぽくなりますね。なんでも中華風になる魔法の粉みたいです。なんでもふりかけてイタズラしたくなる。コレは楽しい……。
手羽を下ゆでした湯は、だしがでていておいしいので、塩で味をととのえて、鍋で熱くしたところに溶き卵を流し込んでみたところ、たちまち中華の玉子スープになりました。そうか、中華のスープってこうやって取るのか。
(自分でラーメン作れそうな気がしてきた)
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インドにいる妹が、そうめんが沢山あるのにめんつゆがなくて困っている、と言っていた。ありそうなことだ。村上春樹さんがどこかのエッセイでほとんど同じことを書いていた。海外に住んでいると、日本からの知人友人が、気を利かせてそうめんを買ってきてくれるが、なぜかめんつゆは持ってきてくれない、非常にむなしい、という内容であった。
さて、そんな話を(メールでだが)したものだから、夏のそうめんが余って戸棚に放り込んでおいたのを思い出してしまったではないか。
べつに来年の夏までとっておいてもいいが、思いついたからには食べようか。
そういえば、丸谷才一さんが、そうめんは買ってとっておき、翌年食うのがうまいとかどこかに書いていたのを思い出した。読んだときには、ほんまかいな、味が落ちるんじゃないのかと思ったのだけれど、そうめんというのは生産されたあとかなり長時間熟成をさせてから、ようやく出荷するものだそうですね。そうすると、一年たってから食べる説はそれなりに根拠があるということになる。
さて、ただ煮麺をつくるのも芸がないので、少しいたずらをして、スパゲティのかわりにそうめんを使ってみよう。和風スパゲティがよろしい。和風スパゲティをそうめんでつくると、「洋風そうめん」という感じになる。その、和洋のテレコ感が、おもしろい。
本日の男料理はオレンジページに載っていた豚肉とトマトの和風スパゲティ。の、そうめん版。
フライパンにオリーブオイルを落とし、豚肉とガーリックを炒める。火が通ったら、醤油と、酒と、黒コショウで味付けをする。分量をいえば、一人分あたり醤油大さじ1、酒はその半分というくらい。そして麺と小さく切ったトマトをそこに入れてまぜあわせ、青じその葉をちぎってふりかける。
青じそは、べつの香草だってかまわない。麺がそうめんなら、ネギにしたらよかったかもしれない。
自分でつくるスパゲティは、これがいちばん簡単で、そのわりにおいしいように思う。ベースが醤油味だから、もちろんそうめんが合わないわけはない。ただ、そうめんもトマトも青じそも夏のものだから、少しばかり、夏が恋しくなる。
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前にサラっと冬瓜の日記を書いたところ、なぜだかわからないが奇妙にコメントが好評だったので、いい気になってまた作ってみました。
前のは手羽先でダシをとったが、こんどは檀一雄ふうに干タラでいこう。
といっても、干タラという食材を、ぼくは見たことがない。
練馬駅前の乾物屋に行ってみると、売っていた。初めて見ました。鱈を塩して干物にしたものです。それが、案外高いのですね。一尾まるごとの干タラが、たしか六千円くらいした。もっとも、それを小分けに切って、手のひら大くらいにしたものが350円くらいで売っていたので、それを買いました。
干タラはいちどゆでこぼして、一晩水につけてもどし、裂いて冬瓜といっしょに煮る。加納式では醤油で味付けをするのだが、檀流では塩味が主体のようだ。たしかに塩味にすると、タラの風味がつよく感じられる。
たくさんつくって土鍋にいれてフタをしておき、つまみぐいみたいにして日常のなかで少しずつへらしていくのが嬉しい。
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もつ煮込みはドロリとして濃いほどうまい。内臓から出た脂が乳化して、味噌と渾然一体となった、一種下品とも思えるやつほど良い。小料理屋なんかで、白味噌を薄く、あっさり仕上げたような煮込みがでてくると、それはそれでおいしいけれども、心の片隅ですこし物足りなく感じてしまう。
そういうわけで、衛生に問題ありそうなもつ焼き屋で、器のふちから汁がこぼれたようなもつ煮込みを食べるのが大層好きなのだけれども、それはそれとして、何年かおきに、むしょうに食べたくなるのが、愛知県ふうの、どて焼きである。
たぶん、どて煮と呼んだほうが通りが良いのだろうが、わが実家ではどて焼きと呼んで食卓に出していたので、それがしみついている。どて「焼き」というのは関西方面のいい方らしい。
ぼくは愛知県三河地方の出身で、愛知県は文化圏としては東側に属するのだが(特にイントネーションは東側だ)、木曽、信濃、揖斐の三川をこえたすぐ向こうが関西なので、ときおり自分のなかに西側の影響を発見することがある。そういえば「おおきに」って言う人が、周囲にふつうにいた。
話がそれた。
さて、なぜ「愛知県ふう」と限定したかというと、赤味噌と砂糖で、甘辛く煮込むからである。
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愛知県など中京地方にも同種・同名の料理があるが、どて焼きの名称はあまり一般的でなく「どて煮」「どて」と呼ばれる事のほうが多い。牛すじ以外に豚の臓物を用いることも多く、スーパー・肉屋などではどて煮の材料として、下茹でした牛すじ肉または豚の臓物、あるいは双方ともに売っている店もある。調味料は主に八丁味噌など豆味噌を使う。どて煮とともに串カツを供する店では、頼めば串カツをどて煮の汁に浸してくれる。どて煮をご飯にかけたものをどて飯といい、名古屋名物の一つになっている。
どて焼き - ウィキペディア(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9%E3%81%A6%E7%84%BC%E3%81%8D
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東京都内で食べる煮込みは、まずたいてい白味噌である。たまに関西系の店だと、合わせ味噌を使っていることがあるくらいだろう。
ぼくはいまだに、店の品書きに内臓の煮込みを発見すると、反射的に赤味噌の煮込みを思い浮かべ、イヤ、そういえばここは都内だった、と思い直すことがある。
もうひとつ思いつくままに思い出話をすれば、名古屋で学生をしていたころ、近所に串太郎という串焼き屋があって、そこが赤味噌の煮込みを出していた。歩道に半分はみ出すようにして大きな煮込みの鍋を置き、客も店内だけでは入りきらないので椅子を歩道に出して、半ば屋台のようにして飲み食いさせていた。もつの味噌おでん一串80円。むちゃくちゃ安い。でもお金がなかったので、「ビール一本500円、串三本240円……ヨシ!」と、予算と覚悟をきめて、寝付けない夜に飲みにいったものであった。何年か前に通りがかったら、同じ店がまだあって、同じ値段だったのでびっくりした。
さて、そういった記憶をたどっていたところ、めずらしく里心がわいてきたので、赤だしのあまからいどて焼きをつくってみた。ネットで検索すれば、何でもつくりかたが出てくるので便利な世の中ですね。なにもむずかしいことはないので、赤味噌と砂糖をたっぷり水にとき、下ゆでしておいた白もつを弱火にかけてほうっておくだけのようだ。
一緒に煮たのはニンジン。
コンニャクを入れる場合が多いみたいだが、コンニャクは食感が白もつとかぶるので、あまり合わないような気がしていて、避けました。
これでビールを流し込んだらこんなに満ち足りたことはない。煮詰まったタレはダシでうすめて、おからに炒りつけました。
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今日も檀流です。文庫本一冊で、これだけ食えるのだから、安い。
近所の怪しいスーパーが、怪しい刺身を売っている。妙に安いので、大丈夫かと思ってしまう。たとえば鯛の刺身が常時ワンパック298円。うーん、周囲の別のスーパーより100円安い根拠は何だ? ここはときどき、カビカビの里芋とかが平然と並んでいるのでちょっと心配になる。でも安いから買ってしまう。
鯛の刺身に酒をふりかけておく。すりごま、生玉子、醤油をよく混ぜ合わせる。そこに刺身を漬け込んで10分。
パックごはんをレンジであたため、漬かった刺身をタレごとのっけて、熱いお茶をかけて食う。
ふっふっふ、うまい。
ひょっとして鯛をこの世でいちばん旨く食う方法じゃないのかと思う。ちょうど煮え具合がレアになって、魚肉の味がいちばん濃く感じられます。
これで原価は400円しないくらいなのだから、上機嫌にもなろうというものです。
見た目はちょっと黒くなっちゃいましたね。料理雑誌なんかでは、タレがきれいなもみじ色になってたりするけど、あれはどうやって出す色だろう?
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おととし作った梅干しの、消費しきれずに残っていたものが、塩をふいてカリカリにしぼんできはじめている。
おまけに瓶容器の金属フタが腐食しだしているので、これは早めに消費しなければ食えなくなりそうだ。
そこで梅干しの酒煮というやつを作ってみることにした。
今回のアンチョコは檀先生ではなく、池田満寿夫「男の手料理」である。そうあの版画家の池田エーゲ海先生です。これがまた、いい本でありまして、男の料理は手抜き料理、と心得て、楽しそうに台所遊びをしておられる。読むと自分で作ってみたくなる料理が多くて、何カ所もページの耳を折ってあります。
梅干しの酒煮はほんとうに簡単で、梅干し十個を酒二合ととろ火で2時間煮る。あるいは、酒を五合にして5時間煮る。それだけだ。
もう少し手間を惜しまなければ、アボカドに和えるとうまいという。
酒二合と2時間コースでやってみたところ、まだ酸味と塩味がきつくて、どうも旨いとは思えなかった。そこで、酒を一合足して、もう1時間火に掛けてみたところ、味わいが急にやわらかくなりました。酒がたくさん要るが、3時間からを目安にするのがよろしいようです。
アボカド和えもやってみたところ、意外なうまさ。これまでアボカドは、塩だけで食べるか、わさび醤油で食べていたのだが、それより抜群においしい。ただ、アボカドを食べるために何時間も梅干しを煮るのは現実的ではないから、水で煮て適度に塩抜きをして、最後に酒を含ませる程度でもじゅうぶんかもしれない。
ひとつだけメモ。安い金属鍋で作ると酸と塩が強くて腐食するので、土鍋かなにかを使うのがよろしいようです。
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