かりん酒を漬ける
何年か前、気管支ををやられて、咳がとまらず苦しんでいたときに、母方の祖母が喉にきくといって、自家製のかりん酒をわけてくれたことがあった。それが、確かに効いた。貴重な薬として、今でも大事に飲んでおります。
かりんは、晩秋のころにとれる果物で、香りや風味はリンゴに似ているのだが、固くてすっぱいのでそのままでは食べられない。ジャムの材料などに使う。生食できないことがわざわいして、一般にはほとんど流通しない。うちのばーちゃんはどこか知り合いの農家から直接分けてもらっているようなことを言っていた。
さて、例によってスーパーで買い出しをしていたところ、まさにその、かりんが売られているではないか。
どうやら果実酒ブーム(というものがあるようだ)の影響で、一般のマーケットでも売られるようになってきているようだ。
そうとわかれば、人に作ってもらうばかりでは芸がない。ひとつ自分でこしらえてみよう。
まず、ホワイトリカー一升にたいして、果物を1キロ用意する。これは最も基本的な果実酒の配分で、今回はそれを踏襲する。
かりん1個が98円。それを3個買ってきた。はかりに乗せてみると、1個が400グラム。ちょうどいいあんばいである。果実が1.2キロになってしまうので、余分な200グラムを別用途に使うのも結構だが、今回はかまうことはない、全部酒に漬けてしまおう。
色が黄色く、触ってみて、油分がしみだしてべたついているものをあえて選ぶ。かりんは油脂分が多くて、熟したものは表面が油っぽいものだそうです。このへんはネットで検索して知りました。
それをたわしとお湯でごしごしと洗い、べたつきと表面の汚れをとる。
まだ青いものを買ってきた場合は、ここで二三日放置して追熟させる。
さて、それを適当な大きさに切るわけだが、虫食いの場合があるので、そのときには、虫食い穴と、種をていねいに取り除く。
このテの果実は、タネからエキスが出るので、タネごとアルコールに漬けるのがならわしだが、虫食いの虫もそれをわかっているのか、果肉を食わずにタネをかじる習性があるようだ。今回、買ってきたなかに、ひとつ虫食いがあったので、タネをまるごと捨てることになったのは、まことに惜しかった。
それを瓶につめ、氷砂糖とホワイトリカーを流し込むわけだが、さて、砂糖の量をどのくらいにしよう。
砂糖の量が、果実酒づくりのすべてだと言ってもいいかもしれない。
果実1キロに対して、いくら入れるか。よく、氷砂糖のパッケージに、梅1キロ、氷砂糖1キロなどとレシピが書いてあるが、あれは信じてはいけない。200から、多くても500グラムというところがせいぜいでしょう。
ものの本によると、酸味と甘味はつねにバランスをとらねばならない。酸味を増やしたら甘味も増やす。甘味を減らしたら酸味も減らす。
かりんは、梅にくらべたらずいぶん甘い果物なので、そう、300グラムくらいで十分じゃないだろうかと見当をつけた。
さあ、あとはリカーをどぼどぼと注ぎ入れて、厳重にフタをし、流しの下にでも入れて忘れてしまうだけである。
半年くらいでおいしく飲めるのではないかと推定するが、少しずつなめて味見をして楽しみながら、最低一年はおいておくのがうちでのならわしだ。ならわしというより、置けば置くほどうまくなると思えば、未来の味がもったいなくてなかなか飲めないということなんだけれども。
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