フォト

加納新太

  • 職業は著述家・作家・脚本家。自称では「物語探偵」(narrative detective)。

Twitter

カノウの本・既刊

  • : 君の名は。 Another Side:Earthbound

    君の名は。 Another Side:Earthbound
    新海誠監督の映画『君の名は。』の小説版です。新海監督執筆の『小説 君の名は。』が、映画と同じストーリーラインを追うのに対し、こちらでは、短編集形式で登場人物を掘り下げをしています。「これを読むと映画の内容がすんなり理解できる」と角川の玄人衆から高評価を受けました。リアル書店では見つけにくい本のようなので、取り寄せ等の対処をお勧めします。

  • : いなり、こんこん、恋いろは。

    いなり、こんこん、恋いろは。
    月刊ヤングエース(角川書店)連載中の漫画『いなり、こんこん、恋いろは。』(よしだもろへ)の小説化です。この作品に惚れ込みました。表紙はよしだ先生に描いていただけました。幸せです。

  • : アクエリアンエイジ 始まりの地球

    アクエリアンエイジ 始まりの地球
    カードゲーム「アクエリアンエイジ」のマンガ版です。短編形式で6編収録されています。月刊コンプティークで連載しました。全編の脚本を書いています。

  • : シャイニング・ブレイド 剣士たちの間奏曲

    シャイニング・ブレイド 剣士たちの間奏曲
    RPG「シャイニング・ブレイド」の小説版です。サイドストーリーを集めた短編集です。主人公レイジとヒロイン・ローゼリンデが初めて出会うエピソードも収録されています。

  • : アクエリアンエイジ フラグメンツ

    アクエリアンエイジ フラグメンツ
    トレーディングカードゲーム「アクエリアンエイジ」の小説版です。公式Webサイトでの連載に加筆修正したものです。

  • : 小説 劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH

    小説 劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH
    週刊少年サンデーで連載中、畑健二郎作「ハヤテのごとく!」が劇場アニメになりました。その小説版です。私はこの漫画が大好きで、書けて幸せでした。

  • : 秒速5センチメートル one more side

    秒速5センチメートル one more side
    映画『秒速5センチメートル』のノベライズです。新海監督版の内容を逆サイドから描いた物語になっています。第1話がアカリ視点、第2話がタカキ視点です。第3話は交互に入れ替わって展開します。

  • : シャイニング・ハーツ やさしいパンの薫る島

    シャイニング・ハーツ やさしいパンの薫る島
    RPG「シャイニング・ハーツ」の小説版です。原作の物語のサイドストーリー的な位置づけです。3人のヒロインは全員登場し、ゲームでは出番の少なかった海賊ミストラルも活躍します。牧歌的でやさしく、すべてが満ちたりた世界を書こうと思いました。満足しています。

  • : fortissimo//Ein wichtiges recollection

    fortissimo//Ein wichtiges recollection
    シナリオを担当しました。PCゲーム「fortissimo」のコミック版です。本編のサイドストーリーです。原作:La'cryma、漫画:こもだ。

  • : 世界めいわく劇場スペシャル

    世界めいわく劇場スペシャル
    全編ギャグのドラマCDです。シナリオを書きました。こういうのも書けます、というかこっちが得意技です。守銭奴の人魚姫、腐女子のマッチ売り少女、百合ハーレム状態の白雪姫、全ての言動が破滅的なシンデレラ、などが世界の名作童話をむちゃくちゃに解体します。役者さんにはほとんど無茶振りともいえる「一人最大9役」を演じていただいています。

  • : シャイニング・ウィンド -アナザーリンク- 鬼封じの剣士

    シャイニング・ウィンド -アナザーリンク- 鬼封じの剣士
    RPG「シャイニング・ウィンド」の小説版です。ゲーム本編のノベライズではなく、主人公たちの過去の物語を書きました。自分に伝奇小説が書けるか、ジェットコースター型の展開が書けるか、というのが、個人的なチャレンジでした。ありがたいことに、かなり好評を博しています。

  • : シャイニング・ティアーズ to ウィンド 姫君たちの冒険

    シャイニング・ティアーズ to ウィンド 姫君たちの冒険
    RPG「シャイニング・ティアーズ」「シャイニング・ウィンド」の短編集です。基本的に、原作の物語がスタートする前を舞台にしています。いわゆるプレ・ストーリーです。エルウィン、マオ、ヴォルグ、ブランネージュ、クララクランが登場します。

  • : ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる

    ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる
    原作/新海誠。新海監督のデビュー作を小説化したものです。少女視点の「あいのことば」、少年視点の「ほしをこえる」の二部構成となっています。表紙はブルーの箔押しで、美しいデザインです。『雲のむこう、約束の場所』と並べてみると、帯込みで対比的になるようにデザインされています。

  • : シャイニング・ティアーズ 神竜の剣

    シャイニング・ティアーズ 神竜の剣
    RPG『シャイニング・ティアーズ』の小説版、続編です。単独の本としても読めるつくりになっています。作者としては、前作よりも納得のいく出来です。勇ましい物語です。

  • : 雲のむこう、約束の場所

    雲のむこう、約束の場所
    原作/新海誠。劇場アニメーション映画『雲のむこう、約束の場所』を小説化したものです。装丁がとても美しく、それで手に取った方も多いようです。

  • : シャイニング・ティアーズ 双竜の騎士

    シャイニング・ティアーズ 双竜の騎士
    セガのRPG『シャイニング・ティアーズ』をもとにしたヒロイック・ファンタジィ小説です。ノベライズです。

  • : タウンメモリー

    タウンメモリー
    架空の海辺の街(モデルは藤沢あたり)に暮らす女子高生が主人公の日常小説です。題材的に、少し恥ずかしいなという気分もありますが、気に入っている作品です。

  • : アクエリアンエイジ Girls a War War!

    アクエリアンエイジ Girls a War War!
    マンガです。トレーディングカードゲーム『アクエリアンエイジ』のキャラクターが毎話ドタバタ暴れて大変なことになります。もとはゲームの遊び方をチュートリアルするマンガだったのですが、いつのまにか趣旨が変わっていました。シナリオを担当しました。絵は『少年陰陽師』のあさぎ桜さん。

  • : 月姫 アンソロジーノベル〈2〉

    月姫 アンソロジーノベル〈2〉
    PCゲーム『月姫』を題材にしたアンソロジー短編集、第2巻です。第二話『天へと至る梯子』を執筆しています。琥珀が主人公です。

  • : 月姫 アンソロジーノベル〈1〉

    月姫 アンソロジーノベル〈1〉
    PCゲーム『月姫』を題材にしたアンソロジー短編集です。遠野秋葉が主人公の第一話『かわいい女』を執筆しました。

無料ブログはココログ

2017年10月22日 (日)

「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(2)

 渋谷ヒカリエとひらかたパークで行われた『ドラゴンクエストミュージアム』に行ったら、ドラクエ3の制作資料が展示されていた。それをじっと見ていたら、「(製品版と違って)制作初期には、こんなプランがあったんやな」ということがだいぶわかった。それを皆さんにお知らせします……というシリーズの第二回です。

 第一回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(1)

 このシリーズで主に取り上げているのは、ドラクエミュージアムに展示されていた、ドラクエ3のワールドマップのラフコンテです。
 これはどういうものかというと、白い紙一枚に、「上の世界」の白地図が描かれていて、その中に、城やら町やらダンジョンやらが書き加えられている、というものです。

 この「マップのラフコンテ」の位置づけがどうもわかりづらいようなので、あらためてここで整理しておきます。
 堀井雄二さんのエッセイ集『虹色ディップスイッチ』(ビジネス・アスキー)に、ゲームシナリオ執筆の作業工程を解説した章があります(p.86-90)。そこに書いてあることを要約すると、堀井さんの作業工程は以下の通りです。

・おおまかなストーリーを頭の中で作り上げる。
・モンスターの(外見の)ラフコンテを描いて鳥山先生に送る。
フィールドマップのラフコンテを作る。(←これ)
・城、町、洞窟、塔のマップを方眼紙に描く。
・フィールドマップ(地形などが完全に入ったもの)をパソコンで作成。
・人のセリフを書く。
・各種アイテムの指定(効力、値段、使った時のメッセージ等)。
・戦闘中のメッセージを書く。
・モンスターのパラメータを決める。
(注:これは厳密には「ドラクエ2」のときの作業工程です。3では多少の変化があるかもしれません)

 このエッセイの内容に従えば、
「堀井さんの頭の中にある物語が、初めて紙の上に出力される工程」
 が、この「マップのラフコンテ」であり、ドラクエミュージアムにはまさにそれが展示されていたのだ、ということになるのです。

 これは白地図みたいなもので、これに城や町、洞窟、塔などを描きくわえてゆく。
 そして頭のなかにあるストーリーに合わせて、どの洞窟でなにが見つかるか? あるいは、どんなイベントがあるか? どんな情報が聞けるか? 等を書きくわえてゆく。

堀井雄二『虹色ディップスイッチ』(ビジネス・アスキー)p.87

 いってみれば、「堀井さんが頭の中で最初につくった全体像」に、きわめて近いものが、ここに出ていると考えていい。

 そして、このマップコンテに「製品版には存在してない町が書いてある」とか、「製品版には存在しているダンジョンがなぜか書いてない」とかいった差異があるのです。
 そうした差を見比べることで、「初期にはこんなアイデアを実装しようとしていたのか」ということがわかってくる。
 そんなことをやっているのが、今回のシリーズです。前回から時間があいたので、おさらいをしてみました。


■伝説を再現する「猫馬」

 前回はノアニールと「すいしょうだま」に関して、想像をめぐらしました。
 今回注目するのは、アフリカ大陸に相当する場所です。

 前回は、文字だけでなんとか説明しようとしたのですが、やっぱり理解してもらうのが難しいようなので、画像を掲示することにします。
 この記事に掲示される画像はすべて、『ドラゴンクエストミュージアム』にて展示された制作資料を、私が手書きで部分的に再現したものです。画像で示されている内容は、株式会社スクウェア・エニックスと共同著作者の著作物です(たぶんアーマープロジェクトも権利を持っているはず)。著作権法第32条に基づき、研究を目的とする引用としてこれらを掲示します。展示会場で書き写したため、写し間違いが生じている可能性があります。これらの画像の転載・改変・再配布を禁じます。孫引きも遠慮してください。

 さて、アフリカ大陸近辺には、こんな感じでプランが書き込んでありました。順繰りに見ていきましょう。

Img058_2

 まず、右上に町「◎M2」。これはそのまんまポルトガです。王の手紙が手に入り、そののち船が入手できる。ここまでは製品版通りです。
「猫馬」「パープルオーブ」と書いてあるのがミソです。製品版のドラクエ3では、ポルトガにパープルオーブはありません。パープルオーブはジパングにて入手するのです。

「猫馬」ってなんだ。

 製品版のポルトガに、猫馬なカップルがいました。サブリナとカルロスは恋人同士なのですが、魔王バラモスに呪いをかけられてしまいます。サブリナは夜のあいだだけ猫になってしまう呪い。カルロスは昼のあいだだけ馬になってしまう呪い。二人は同時に人間でいられることは決してない……というような境遇です。
 製品版では、バラモスを倒すと、自然に呪いがとけてめでたしめでたしとなります。この二人に、主人公が能動的にからんでいく展開はありません。バラモス退治のお礼にサブリナが「ゆうわくのけん」をくれますが、この段階で入手しても戦力的な意味はほぼ無でした。

 この「猫馬」が、マップコンテにわざわざ書いてあるということは、おそらく本来はもっと重要なイベントだったはずです。

 ミュージアムで展示されていた別紙に、「アイテム効能表」のようなものがありました。これも堀井さんによる手書きの文書で、イベントアイテムなどについて「武器なのか防具なのか道具なのか」「誰が使用できるのか」「その効果は何か」ということがリスト化されているものです。

 そのアイテムリストの中に、こんな項目が書かれていました。

ラーのかがみ   K8の王の正体をみやぶる
           M2の猫馬の呪いをとく

 K8はサマンオサに相当する城です。「ラーのかがみを使って、サマンオサのニセ王の正体をあばく」というのは、ドラクエ3でもっとも印象的なイベントのひとつです。
 それに加えて、初期構想ではどうやら、
「ラーのかがみを使って、猫馬さんたちの呪いをといてあげる」
 というクエストが、実装される予定だったようなんです。
(パープルオーブは、そのお礼として入手されるものだったのかな?)

 堀井さんがこのクエストを実装したいと思った理由は、わりと簡単に想像できそうだ。

 まず、ドラクエ初期2作には、偉大なる「勇者ロト」という存在が、神話的伝説として語り継がれています。
 その後に登場した、この「ドラクエ3」という作品は、これまで語られてきた勇者ロト伝説をネタとして回収する物語なのです。
 ドラクエ3のエンディングで、「ドラクエ3の主人公は、実は勇者ロトその人だった」という真相が明らかになります。「勇者ロトって、オレのことだったんだ!」という、最大級の驚きが、ここで提示されるのですね。
 堀井さんは、ドラクエ3を作ろうということになったとき、「そういう驚きをバーンと提示したいよね」と考えていたのです。

 さて。
 ラーの鏡は、ドラクエ2で印象的に登場したアイテムです。ラーの鏡は、ものごとの真実を映し出す品物であり、呪いで犬にされていた王女を元に戻すのに使用されました。

「このラーの鏡は、かつて勇者ロトの手の中にあったものだ」
「勇者ロトもまた、この鏡を使って、動物の呪いを解いたことがあるのだ」

 と、そのような形になったとき……。

 ドラクエ2で、ローレシアの王子の手の中にあるラーの鏡は、どこかからポッと出てきた謎の鏡ではなく、かつて偉大な祖先がその手に持っていた伝説的遺物です。

 その伝説的遺物を使って、勇者ロトと同じように動物の呪いを解くとき、それは単に魔法の品物を使ったということにとどまらず、
「時代をこえて、伝説が再現されたのだ」
 という形になります。

 そのような形を作ることを、堀井さんは狙っていたのではないかと思うのです。そのために、動物の呪いを解くクエストを入れようとしたのだと思います。

 そして、このクエストがボツになった理由も、はっきりしています。
「オリビアの岬」のイベントと内容がかぶるからです。

 オリビアの岬では、
「死んでもなおお互いを思いあう恋人たち。その霊魂を再会させてやり、愛を成就させてやる」
 という物語が展開しますが、これは猫馬さんたちとほぼ同一といっていいストーリーです。

 容量が足りなくて、何か削らなきゃいけないということになったとき。

・ラーの鏡で真実を暴くイベントは2つも要らない。ひとつでいい。
・愛し合う恋人の再会をテーマにしたイベントも、2つは要らない。

 そういう判断がごく自然に導かれ、猫馬イベントはまっさきに削除され、「ゆうわくのけん」だけが半端に残った……ということなのでしょう。たぶん。


■君の名はムー

 ポルトガから湾岸沿いに南にくだって、中央右寄りの「◎M5」をご覧ください。

 製品版には、この位置に町はありません(そのかわり、「イシス西のほこら」、リメイク以降の名前では「旅人のほこら」がある位置です)。◎M5は製品版では削られた……ボツになった町なのです。

 ここには、イベント内容がまんま書いてあります。

 まほうのカギ
 ぬすまれる
 とりかえすと
 やみのランプ

 ◎M5に入ると、イシスで苦労して入手したまほうのカギを奪われてしまう。町中でなんやかや調べたり追い回したりして、取り返してみると、ついでに闇のランプが入手できる。
 ドラクエ8に、町中で馬車を盗まれてしまい、必死になって犯人をつきとめるイベントがありましたが、まさにそういうのがドラクエ3でも予定されていたわけです。
(というか、逆に言うと、ドラクエ8になるまでそれ系のイベントは実現できなかった)

 なんでそう「ドラクエ8みたいなやつ」と言い切れるかというと、例によってJICC出版局の『ドラゴンクエストⅢ マスターズ・クラブ』で、堀井さんがそのものずばり「そういうプランがあったよ」とおっしゃっているからです。

「(略)Ⅲでボツになったアイデアなんだけど、ひとつの町が完全に推理モノのアドベンチャーになってるってゆーのがあったのね。これがそれなりにオモシロかったわけ。そういった展開でゲームが作れるかなってゆーのはあるよね。表に出てない部分で、勇者じゃなくて、誰か違う人間を主人公にしたゲームってゆーのをね。たとえば、商人の話で金もうけだけをやるとかね。」
――そのボツになったイベントって、ストーリーには関係なかったんですか?
「いや、若干関係あったんだよね。解かなくてもいいんだけど、解くとちょっといいモノがもらえたの。実を言うと、闇のランプはそのイベントでもらうハズだったんだ。

『ドラゴンクエストⅢ マスターズ・クラブ』(JICC出版局)p.8

 このインタビューで、「商人の話で金もうけだけをやるとか」と、明らかにドラクエ4のトルネコ編を念頭に置いた話をおっしゃっています。なぜか唐突に、その話がぽろっと出てくるところが味わい深いのです。

 なぜなら……(これはだいぶ有名になったから知ってる人も多いと思うけど)。
 ◎M5に付けられる予定だった町の名前は「レイクナバ」というからです。
 レイクナバは、ドラクエ4における、トルネコ編のスタート地点の地名。

 堀井さんは、インタビュアーに聞かれて、ボツになった◎M5の町のことを思い出し、

「そういえば、あの町はレイクナバって名前になるはずだったんだよなあ」

「レイクナバって名前は、今作ってるドラクエ4の商人編に流用したんだよなあ」

ひたすら金儲けに精を出す異色のシナリオ・トルネコ編の話をぽろっと持ち出してしまう。

 という連想ゲームを働かせたのかなって思います。

     ☆

 あそうそう。

 どうして◎M5の名前がレイクナバだと言い切れるかというと、ドラクエミュージアムに、以下のようなペラ1枚のメモが展示されていたからです。以下の画像は加納が会場で見たその資料を再現したもので、現物はすべて手書きです。例によって著作権法上の引用による利用であり、禁転載・禁改変・禁再配布です。

Photo

 この資料でレイクナバ以上に衝撃的なのは、
「下の世界をアレフガルドと呼ぶように、上の世界をまとめてムーと呼ぶ」
 という初期設定が存在したことです。

 やっぱりそうなのか。
 という、納得がありました。

 いまとなっては、「ムー大陸」という単語じたいを知らない人が多いかもしれませんね。ムー大陸というのは、はるかな古代、太平洋に存在したとされる超高度文明の大陸……の伝説です。
 伝説といっても、UFOとかツチノコとか、口裂け女とかスプーン曲げとか、そういう方向のいかがわしい「デンセツ」であって、基本的に、一般的な教育を受けたまともな人間なら相手にしないタイプのやつです。

 太平洋に、ムー大陸という大陸があって、高度な文明を築いていたのだけれど、大陸が沈んで滅んでしまいました。現在残っている世界中のすべての文明は、じつはムー大陸から受け継がれた部分的な末裔なのである……みたいなおとぎ話があるのだと考えて下さい。

 ドラクエ3の上の世界は、現実の世界地図にそっくりである。そのことはたいへん有名ですけれど、ひとつだけ、現実の地図とは大きく違うところがあります。
 それはアリアハン大陸です。
 現実の世界には、あんな不自然にまんまるい大陸は存在しません。

 太平洋に浮かぶ、この不自然に丸い大陸は何なのか。
 太平洋……。

 ……となったとき、これを「失われたムー大陸が沈まずに残っている姿」に比定するのは、80年代ごろのボンクラ知識に詳しいダメ少年たちには、わりあい自然なことでした(だ、そうです)。

 ドラクエ3には、「かつてアリアハンは、すべての世界を治めていた」という基本設定があります。アリアハン城下町の老人がそういうメッセージを述べます。

 アリアハンが全世界を治めていたのなら、その当時、全世界がアリアハンだったのです。
 アリアハンが「ムー」であるのなら、全世界が「ムー」だった時代があることになります。

「上の世界をすべてまとめてムーと呼ぶ」という初期設定に触れたとき、そういう形での納得が、私の中に生じました。「上の世界にもし名をつけるとしたら、それがムーなのは納得だ」と。
 逆に言うと、上の世界をムーと呼ぶ(つまり、ドラクエ3の世界を、古代超文明に比定する)ためには、「アリアハンがかつて全世界を統治していた」という設定は必須なのです。
 この設定って何で存在するんだろう、というのが、ぼんやり疑問だったのですが、私はそれでようやく腑に落ちました。

 そして。
「どうして上の世界をムーと呼ぶ設定が削除されたのか」についても、なんとなく、わかる気がする。

 なぜなら、世界というものは、ふつう、唯一のものだからです。
 唯一のものは、通常、固有名詞を必要としません。なぜなら唯一だからです。われわれの現実世界に固有名がついていないのは、世界が唯一だからであって、ほかのものとの呼び分けの必要がないからです。「世界」と呼べばいいのです。
 アブラハムの宗教の神(キリスト教やイスラム教の神様)に名前がないのは、彼らにとってその神が唯一の神であって、ほかの神など存在しないという立場なので、ほかの神と自分の神とを名前で呼び分けるニーズが存在していなかったからです。

 もし、「世界」に、固有名詞がついていたとしたら。
 それはたちまち、「この世界は唯一のものではなく、ほかにもいくつか世界があって、それとの間に呼び分けの必要が生じたから」でしかありえません。

 堀井雄二さんは、ドラクエ3のプレイヤーに、そんなこと絶対想像されちゃ困る立場だったのです。

 なぜなら、
「世界はたった一つのものだと思っていたら、ギアガの大穴を飛び込んだ先に、もう一個の世界があって、しかもそれが見慣れた世界だったからビックリした」
 という体験を全員にしてもらいたい、と彼は考えていたからです。

 その体験を全員にしてもらうためには、
「あれ、名前がついてるってことは、別の名前の世界がもう一個別にあんじゃね?
 と思われては絶対にいけない。

 絶対にいけないということに、堀井さんはご自分で気づいて、「ムー世界」というプランをボツにした。
 ……というふうに私は想像します。


■ゾンビキラーで霊を斬る

 長くなったので、残りを手短に。

 地図南端に「〇V4」があります。これは製品版で「テドンの村」として知られている地点です。
 製品版のテドンと同様、「ゾンビキラー」「オーブG」と書かれており(実際のゲームでもゾンビキラーとグリーンオーブが入手できる)、端的な説明として「お化け町」と注釈されています。

 テドンの村は魔王バラモスによって滅ぼされ、死者の幽霊だけが暮らしています。夜のうちは人の姿をとって、商売をしたり宿屋を経営したりしているのですが、ベッドで眠って朝になってみると、そこには白骨死体がゴロゴロ転がっている……。そういうわりあいショッキングなイベントが展開します。

 ドラクエ3は、主人公の移動時間に応じて、昼になったり夜になったりするゲームです。堀井さんは、当然、それをギミックとして利用したクエストを入れたいと考えて、テドンのイベントを考案した(猫馬やサマンオサも同様)。
 つまり、このマップコンテが作られた再初期段階ですでに、「昼と夜がある世界にしよう」というプランが存在した。
 昼夜のプランが存在したということは、この段階ですでに、

「この物語は、光を代表する者と、闇を代表する者との闘争の話なんだ」

 ということが明確に自覚されていたことを意味する(闇のころもと光の玉、夜しかない世界と昼がある世界)。

     ☆

「ゾンビキラー」がキーアイテムっぽく書かれていることは、ちょっとしたポイントかもしれません。
 製品版でのゾンビキラーは、テドンの武器屋に売ってるちょっと性能のいい武器にすぎません。

 でも、ここにわざわざ「この村で手に入る重要アイテム」として書かれているのですから、もうちょっと印象的な役割を果たす予定だったのかもしれない。

 例えばだけど。一例ですけど。
 テドンの幽霊たちを死後も苦しめている「悪霊の親玉」みたいなものが棲みついている。
 幽霊たちから、「あの親玉をやっつけてくれませんか」と頼まれる。
 ゾンビキラーを入手して、悪霊の親玉をやっつける。
 幽霊たちは、お礼にグリーンオーブを手渡してくれて、成仏していく……。

 という、ドラクエ5における「レヌール城のお化け退治」みたいなイベントがプランされていた可能性は、ちょっとありそうな気がする。

(続きます。気長にお待ち下さい)

2017年9月27日 (水)

[ドラクエ10]女神ルティアナ、あなたはだあれ

 あの、恐縮ながら、またドラクエの話。
(を書くと、そこそこ反応が良いので)

     ☆

 たいへんお恥ずかしい話だが、最近むちゃくちゃに忙しい。各方面から、ドラクエ11の話をブログに書けと言われているのだけれど、まだ遊んでさえいません。そんなの遊んでいるって知られたらもの凄い勢いで仕事先に怒られてしまう。

 けど、打ち合わせ前に一時間ほど空き時間ができたので、息抜きにドラクエの話をさせてください。関係各所は目をつぶってください。

 ドラクエ11を終わらせて、ドラクエロスに陥った人が、終わらないドラクエをもとめて絶賛流入中というウワサのドラクエ10オンラインについてのお話。スタンドアロン型のドラクエと比べて、どのくらい興味を持つ人がいるかわからないけれど、とりあえず思い当たったことを書き留めておきます。

 ※注:「ドラクエ10」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 小説版、外伝等は参照しておりません。

●ドラクエ10の創世神話

 ドラクエ10の世界にも創世神話があります。この世界は、「ルティアナ」という女神が創造したことになっています。

 ルティアナは世界を作ったあと、七柱の下位神を生み出します。上から順に、空の神ナドラガ、風の女神エルドナ、炎の神ガズバラン、大地の神ワギ、水の女神マリーヌ、花の神ピナヘト、勇気の神グランゼニス(の順だったかな?)。この七神は兄弟神とされ、ルティアナはその母です。

 長兄のナドラガと末弟のグランゼニスを除いた中の五神は、自分に似せて「五種族」とよばれる特色ある人類を創造しました。エルドナは風の民エルフを、ガズバランは炎の民オーガを、ワギは地の民ドワーフを、マリーヌは水の民ウェディを、ピナヘトは花の民プクリポを生み出して、それら各民族の守護神となりました。
 この五種族が、ドラクエ10を遊ぶ際に、プレイヤーが最初に選択することになる人類です。どれかを選んでプレイします。
 このへんの神話、初めて聞く人には、ずらずらとカタカナ名前が並んで複雑に見えるでしょうが、ようするに神様が七人いて、そのうちの五人が、妖精と鬼と地底人と半魚人と毛玉生物を作ったんだと思ってください。プレイヤーは、妖精か鬼か地底人か半魚人か毛玉生物のうち、どれか一つを自分のキャラとして選ぶんだぜと思えばいいわけです(こうして書いてみると凄い特異だなドラクエ10は)。

 じゃあ、長兄神ナドラガと、末弟神グランゼニスは何を守護しているのか。ナドラガは竜族(トカゲ人)、グランゼニスは人間(我々と同じふつうの人間)の守護神をやっています。

 ということは、ナドラガが竜族を生み出し、グランゼニスが人間族を生み出したの? ……ということになりそうなのですが、どうもそうではないっぽいふしがあります。中の五神が「五種族神」と呼ばれることは何度もあるのに、全七神をあわせて「七種族神」と呼ばれることはまずないからです。竜族や人間族は、ナドラガやグランゼニスが誕生するまえから存在してたかもしれない。
 ドラクエシリーズの世界って、だいたい、「竜族がいて、人間がいて、魔族がいます」という三層構造になってますから、「竜族や人間は、どんな創造神が作った世界であろうとも、必ず存在します」と考えるのは、わりあいしっくり来る話です。

 で、ですね。
 この世界と七兄弟神を生み出した女神ルティアナさん。
 この神様って、いったい何者なの?
 という、「謎」っぽいものが、あると思うのです。

●星空の守り人って、おれじゃん!

「ドラクエ10の世界って、ドラクエ9の世界の、はるか未来の姿なのではないか」

 というのが、ドラクエ10ユーザーの中で、わりあい広くとなえられている説です。
 だいたいそんな感じなんじゃないのって漠然と考えられている感じ。

 なんでそう思われているかというと、ドラクエ9をやっていたときに見慣れていたものが、ドラクエ10にもいっぱい登場しているからです。

 ドラクエ10には謎めいた力を秘めた大陸間超特急列車が走っているのですが、この列車の形は、ドラクエ9に登場した空飛ぶ機関車「天の箱舟」に酷似しています。その名もズバリ、「大地の箱舟」
 これって何らかの事情で飛行能力を喪失した天の箱舟なんじゃないのってことは、まあドラクエ9と10をやった人なら、たいてい想像することです。

 ドラクエ10の世界には、たくさん英雄伝説が伝わっているのですが、そのうちの一つに、
「地の底から出現した災厄の王という怪物を、聖竜グレイナルと星空の守り人がやっつけた」
 というものがあります。

 グレイナルというのはドラクエ9に登場した竜の名前ですし、「星空の守り人」というのはそのものズバリ、ドラクエ9の主人公の別名です。

 そしてなにより印象的なのは、ドラクエ9の世界を作った創造神の名前は「グランゼニス」というのです。

 そんなふうにもう、伝説的事物の名前があまりにも一致するので、
「ドラクエ9の世界がずうーっと続いて何千年だか何万年だかたって、大陸の形とかが変わりまくったら、ドラクエ10の世界になるんでしょ?」
 というのが、だいたいドラクエ10ユーザーのなかで巷間いわれているストーリーなわけです。

 が。

●二つの神話に生じる矛盾

 ただ、そう思ってみると、創世神話のびみょうな食い違いが、急に気になりだします。

 ドラクエ9の創世神話では、世界を創造したのはグランゼニスだとされています。グランゼニスは、「創造神グランゼニス」と呼ばれます。グランゼニスが死んだらこの世界って消えちゃいますよ、みたいな極端なことまで作中で語られます。

 いっぽう、ドラクエ10では、前述の通り世界を作ったのは女神ルティアナです。グランゼニスという同名の神は存在しているものの、創造神の下にいる下位神にすぎません。

 ドラクエ9の創造神グランゼニスは、「人間って悪いことしかしなくてムカツクからもう滅ぼしてしまえ」と極端なことを言う沸点の低い他罰的な神です。

 いっぽう、ドラクエ10のグランゼニスは、腕力もなく知力にもとぼしく、敏捷でもなければ器用でもない劣った人間族たちに、「勇気」という最強の力を付与してくれるこの上ない守護神なのです。

 神話的事物のネーミングは、偶然ではありえないレベルでぴったり一致する。
 なのに、創造神話に食い違いがあり、神様のキャラクターがまるっきり正反対だ。

 このへんの食い違いって、なんか気になるし変だよねえ、というのが、ドラクエ10の謎ウォッチャーたちが首をかしげているポイントなんですね。

●ルビスなのかセレシアなのか

 私はといえば、「そのへんのことはよくわかんないよねえ」くらいに棚上げしたまま、ボワーと別のことを考えていました。

 女神ルティアナって、唐突にでてきた創造神だけど。
 ドラクエ10で新規に出てきた神様なのかなあ。
「名前は初出だけれど、じつは、これまでのドラクエシリーズにでてきたあの神様の別名なのでした」みたいなことって、ドラクエ10を作ってる人たちが、こっそり仕込みそうなことだよなあ。

 具体的には、堀井雄二さんの容認のもと、藤澤仁さんがそういう設定を起こしそうだよなというのが、私の感じた手触りでした。

 これまでのドラクエに出てきた、女神的な存在といえば、ざっくりいってお二人様です。

 お一人目はごぞんじ、大地の精霊ルビス。ドラクエ1~3の世界を創造し、ドラクエ4~6の世界を見守っていらっしゃる女神です。(私は7もそうだろうと思っていますがそれはさておき)

 もう一人は女神セレシア。ドラクエ9に出てきた女神で、創造神グランゼニスの一人娘です。グランゼニスが「もう人間全部死ね」とキレだしたときに、「そんなひどい。じゃあ私がお父様から人間たちを守らなければ」と言い出してくださった、まことによくできたありがたい方です。

 女神ルティアナの正体が、このうちどっちかだっていうのは、わりとありそうなことだ。

 私は、しいてどっちかといえばルビスとルティアナをつなげたほうが、好みに近いかなとは思っていました。
 あの、ちっさい声で本音をいえば、私、ドラクエファンの人々が「あれとこれはつながっていて、あの世界とこの世界は同じもの」みたいに考えがちなのを、それってどうなのかなと首をかしげています。あんまりなんでもかんでもつなげないほうが魅力的だと思っています。だから、「あの神様とこの神様は同じヒト」みたいな方向の想像は、じつはあんまり好みではないです。
 好みではないけど、どっちかをつなげないといけないなら、ルビスにしたほうが喜ぶ人は多いかなくらいの感じ。「ル」つながりですしね。

 でも、ドラクエ10のストーリーをひととおりチェックして(まだ暇だったときにですよ)、最近もyoutubeで新発表の情報に触れて、あーっと、これって逆だったなと考え直しました。

 女神ルティアナの正体って、女神セレシアかな。

●その剣の名前は

 ドラクエ10は、現在「バージョン3」と呼ばれるストーリーが公開されているのですが、このお話で、神話の続きが語られました。

 竜の神ナドラガと、それ以外の六神とのあいだで、戦争があったというんですね。
 ルティアナの長子であるナドラガは、ルティアナが弟妹たちを生み出していったことが、気に入らなかったようです。
 ナドラガはすべてにおいて優れている完全な存在であるのだから、他の神など必要ないではないか。どうして母は、自分より劣った神々を、何柱もつくりだしたのだろうか。

 それがまったく釈然としなかったナドラガは、戦争を起こして六神を滅ぼそうと決めたのでした。六神全部あわせたよりも自分が強いことを確認することで、「自分は一人で完全な存在だ」ということを証明しようとしたのです。

 この戦争の中で、ルティアナの真意があきらかになります。
 さまざまな個性を持った多くの者が協力しあうとき、そのとき宇宙で最強の力が発揮されるのである。一人一人を見れば欠けた部分が多いとしても、それが集まった集団全体を見れば、完璧であるのと同じことになる。そのとき発揮される力は、一人で完全性を持っていることよりも、さらに上位の力をもつのである。

 じっさいに、六神は力を合わせてナドラガを敗北させます。
 六神は、それぞれの力を注入した一振りの巨大な剣をつくり、グランゼニスがその剣を振るってナドラガを貫き、ナドラガを別の世界に封印したのでした。

「いろんな個性がひとつの目的のために協力するときの力を信じる」
 というのが、女神ルティアナの真意なのですから、「六柱の神々がそれぞれの力を一つに合わせた一振りの剣」は、ルティアナの真意の結晶みたいなものです。

 ルティアナは、自分の中にあるさまざまな側面を分離・独立させて人格を与えることで、さまざまな神々を作り出したと思われるので、「さまざまな神々の力が合わさった剣」は、ルティアナの力そのものだということもできます。

 こうした神話は、風化して読みづらくなった石碑にきざまれているのです。
 とある石碑に、この剣の名前が記されていました。以下のように書かれています。「…」は風化して読めない文字です。


 勇…の神 …ラ…ゼ…ス
 かの…が持つ 神器セ…シアは 光…放つ


 これはもう、以下のように読むほかないと思うのです。

 勇気の神 グランゼニス
 かの神が持つ 神器セレシアは 光を放つ

 グランゼニスが振るった一振りの剣は、ルティアナの真意と力の結晶であるその剣の名前は、「セレシア」だっていうことになるのです。

 なぜ、ルティアナの真意を形にしたものの名前が、セレシアなのか。

 物語のクライマックスで、ドラクエ10の主人公たちは、ナドラガの体内に残された「グランゼニスの剣の破片」に触れます。
 触れると、「剣の破片に残されし光の意思」というものが、語り出します。そういうシーンがあります。
 剣の破片に残された光の意思は、「自分は七つの子らと共にアストルティアを治めた母神だ」という意味のことを言うのです。これはどこをどう読んでもルティアナです。

 セレシアと名付けられた剣の破片の中に、どうしてルティアナがいるのか。

 それは、ルティアナの別名が、セレシアだからだ。
 ルティアナとセレシアは同一人物だ。

 というのが私の想像で、これは自分でしっくりきたので、自分の中で、採用することにしました。

●祈りから生まれたグランゼニス

 そんなふうにして、「女神ルティアナの正体は、ドラクエ9の女神セレシアだ」と決めてしまえば、あとは些末な矛盾を、てきとうな想像で整えるだけの話です。以下、私のてきとうな想像をのべますが、別の想像だっていいのです。

 まず、ドラクエ10の世界は、ドラクエ9と地続きの同一世界ではなさそうだ。なぜかというと、『ドラゴンクエストⅩ アストルティア創世記』という本に、「ルティアナは星の果てからやってきて、混沌のなかにひとつの世界をつくった」という意味のことが書いてあるからです。

 そして、ドラクエ9のグランゼニスとドラクエ10のグランゼニスは同名の別人。

 ドラクエ9の女神セレシアは、父神グランゼニスがばらばらになって眠りにつき、世界と同一化して安定するのを見届けたあと、
(つまり、情緒不安定でかんしゃく持ちの父神が「世界を滅ぼして俺も死ぬ!」とか言い出さない状態になったあと)
 ドラクエ9の世界を離れて、虚空に旅立ったのだ……と考えるのです。
「私も、父のように、自分の力で世界をひとつ作ってみよう」

 そうして生み出されたのが、アストルティアという名の、ドラクエ10の世界。

 さて、世界を作って、生き物たちを導く神々も作ってはみたけど。世界を運営するのって、思ったより大変。なんか、立派な王様だった人間が悪い力に影響されてバケモノになっちゃったりするし。魔界からモンスターは移住してくるし。変な新興宗教とか発生して、悪夢の世界から魔神を呼び出そうと画策するし。

 これって、手が足りないなあと思ったところで、ハタと思い出し、「ちょっとちょっと」と声をかける。

「ねえ、グレイナル、星空の守り人、天の箱舟。あなたたち、そっちの世界にいてももうやることないでしょ。こっちきて手伝って頂戴」

 そしてグランゼニス。
 セレシアは、前の世界で父が起こしたことについて、ずっと心を痛めているのです。父神が、人間とのあいだの絆を喪失して、世界が滅びに瀕するところまでいった。
 滅亡はぎりぎり回避できたんだけど、もっといい方法はなかったかと、ずっと後悔している。
 起こったことを、なかったことにはできないけれど。
 できれば、この心の傷を癒やして、慰めを得たい。

 だから、若いころの父をモデルにして、父と同名のグランゼニスという神を作る。
「あなたは、人間たちの神におなりなさい。弱い人間たちを決して見捨てることなく、守り導く神になって欲しいの」
 父そっくりに作られた、父と同じ名前を持つ神が、力のかぎり人間のために戦う姿をみたとき、セレシアの心は、ようやく救われることになった。「グランゼニスは兄弟神の中で最もルティアナに愛された」とされるのは、ルティアナの(セレシアの)そのような過去の傷と祈りがこめられているからだ……。

 創造神グランゼニスから、娘神セレシアが生まれ、娘神セレシアは、息子神グランゼニスを生む。そのグランゼニスが兄弟たちとともに生み出した剣の名前はセレシア。
 これって、原因と結果がぐるりとめぐってひとつにつながり、未来のずっと先は過去へとつながり……おのれの尻尾をのんだ蛇のような、無限性をあらわす構造を想起させて、きわめてコズミックで神話的。ようするにこういうの私は大好物なんです。

 と、私はこんなふうに想像したし、この想像は美しいなと思ったのです。

 この想像って美しいな、と同じことを感じる物語の作り手が、ひょっとしてスクウェア・エニックスの中にもいたかもしれない。

2017年2月12日 (日)

「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(1)

 ひさしぶりに、ドラクエのことをちょっとだけ書いておこうかなと思いました。といっても、目を見張るような奇抜なことを言うつもりはなくて、資料をみなさんと共有しようかな、といったようなこと。

 と、そのまえに、告知的なことをしておきます。


■ドラクエ関係のエッセイを出版してくださる方はいませんか?

『ドラクエ7の謎解き』という、ドラクエ関連のエッセイをこのブログで連載していたのですが、現在、後半の掲載を見合わせており、
「早く続きを読ませてほしい」
 という声を、各方面から継続的にいただいております。

 掲載をやめている理由をぶっちゃけますと、ここで書いてきたドラクエ関連のエッセイを、商業出版したいなと考えているからです。この続きは本で読んでくださいね、みたいなことにしようと画策していたわけですね。
 それで実際に、ツテのある出版社を何社かあたってみたのですが、さまざまな事情で折り合いがつかず、現在、このドラクエ関係の原稿は宙に浮いています。

 で、皆様にものは相談なのですが。
 わたしのドラクエ関係の原稿にご興味がある出版社の方はいらっしゃいませんでしょうか……。

 お知り合いに編集者がおられる方も、よろしければ、「こんな話があるよ」的なことを広めてくださると、うれしいです。

 とりあえず話だけでもききたいという出版関係のかたがいらっしゃいましたら、メールをください。
 KANOH.Arata●gmail.com
(●をアットマークに変更してお送りください)

 現在、文字数にして十万字ほどの草稿があり、分量的に書籍一冊は成り立つものと思います。加筆修正や追補をおこない、商品性を上げていく心づもりがあります。
 具体的には、以下の文章をもとに、大幅な書き直しをしていくことを想定しています。

「ドラクエ6」が本当に目指したもの(全7回)
ドラクエ7の謎解き(全7回予定)
ロト三部作・ローラ姫と精霊ルビスの謎(全6回)
大人になってからプレイするドラクエ4(全3回)
ドラクエ2・サマルトリアにいかづちの杖(全3回)
ドラクエ3・さばきの杖は愛しい(全2回)

 ……と、ここまでが告知で、ここからが本題です。


■制作資料のメモをとってきた

 昨年、東京と大阪で開催されたイベント『ドラゴンクエストミュージアム 勇者たちがめぐる新たな冒険の旅』を見てきました。
 ちょっと思うところがあって、渋谷で2回、大阪で1回見たので、つごう3回足を運んだことになります。

 はっきりいって、全部が見どころでしたが、ドラクエ研究として重要なのは、やはり、資料として展示されていた堀井雄二さん自筆の制作資料やシナリオでした。

 ドラクエ3の資料を中心に展示されていたのですが、初期のアイデアが見られて、面白かったのです。最終的に没になって、なくなったり、変更されたりしたアイデアを、いくつか見ることができました。

 私は、そうした初期案と、実際に発売されたドラクエ3とを細かく比べたいと思ったので、ノートを持って会場に行き、メモを取ってきました。
 メモを取ってもよいかと係員さんに聞いたところ、こころよくOKをいただけました。

 その成果を、ひとりじめするのもあれなので、みなさんと共有したいと思います。
 そして、共有だけではちょっと退屈ですから、「このメモから想像するに、プロット初期にはこういうことが企画されてたんじゃないか?」と私が思ったことなども書いていきます。


■ドラクエ3・上の世界地図初期案

 ドラクエ3をプレイした人にはおなじみの、「上の世界」というものがありますね。現実の世界にそっくりな地形をしているやつです。

『ドラゴンクエストミュージアム』に、上の世界のワールドマップの初期案らしきものが展示されていました。
 現実の世界地図にそっくりな手書きの地図の上に、城や町やダンジョンといった拠点が書き込まれており、「そこで手に入る重要アイテム」「そこで起きるイベント」が一言ふたことメモされている――というものです。

 これが、展示資料の中で、いちばん読むところが多くて面白かった。

 見たところ、これは、ほんっとうに初期に書かれたもののようです。書き損じた部分を、バツ印でぐしゃぐしゃっと適当に消したりしてあります。
 おそらく、ストーリーのプロットがだいたい仕上がって、物語としての全体像が荒削りながら見えてきたという段階で、
「じゃあ、このお話を世界地図の上に配置してみよう」
 くらいの感じで書かれたものだと、私は推測します。

 で、その内容が、実際に発売されたドラクエ3の内容と、ちょいちょい、微妙に違うのです。
 全体としての構成は、最終的なドラクエ3とほぼ一緒なんですが……ところどころ違う。
 その違いをじっくり見ていくと、「最初期のプロットでは、こんなことをやろうという腹案があったんだな」ということが読み取れそうなのです。

 その読み取りをやってみましょう。

 まず地図記号をまとめておきます。手書きのマップの端に、記号の凡例が書いてありました。こんなふうです。

回 城(K) 8
◎ 町(M) 7
○ 村(V) 10
☆ ほこら(S) 11
I 塔(T) 4
■ 洞くつ(D) 11
▲ ピラミッド(P) 1
● 穴(H) 2

 数字は、実際には「正」の字で書かれていました。つまり、実際には、
「○ 村(V)正正」
 と書かれていたわけです。
 マップ上にそのシンボルがいくつあるのかを、堀井雄二さんがここで数えたのですね。

 地図上では、たとえばアリアハンのお城は、

 回
 K1


 というふうに書かれています。

「ここに、お城のシンボルを置く。合い番は、Kの1である(ここはお城1である)」
 ということを示しているわけでしょう。

「回」は実際には、漢字ではなくて、正方形の中に小さな正方形があるという記号です。塔を示す記号も、実際には、縦長の長方形の塗りつぶしです(そういう記号がJIS標準コードにはないので、便宜的に「回」や「I」で差し替えています)。

 そして、この手書きの地図上には、地名はいっさい記されていません。つまり、「アリアハンの城」という記述にはなっておらず、ここにあるのはあくまでも「K1」。地名は別紙で定義するようになっています(その別紙も展示されていました。別のエントリで取り上げますが、これも面白かった)。

 で、この凡例の「正の字」でカウントされている拠点数と、手書き地図上に配置されている拠点数が、もう違います

 たとえば、一番わかりやすいのは、「● 穴(H) 2」です。これを見れば、ワールドマップ上に、穴が二カ所ないといけませんが、地図上には、ギアガの大穴に相当する場所に「●H1」があるだけです。
 ひょっとしたら、置くはずだった「●H2」を、途中で思い直してやめて、消しゴムで消したのかもしれません。
 この地図を初めて書いた時点では、ギアガの大穴によく似た、大穴だか中穴だか小穴が、もう一つあった。しかし、「やっぱりやめた」っていうことで、消した(という可能性が高い)。

 で、ここからが私個人の、根拠も何もないタダの推測なのだけれど、

 配置されるはずだったが削除された「●H2」は、例えば、アレフガルドから上の世界に「帰ってくる」ための穴だったかもしれない。
 実際のドラクエ3のエンディングでは、主人公たちは「魔王の爪痕」からひゅんひゅんと飛び出してきて、現実に復帰するわけですが。
 それと同じようなノリで、アレフガルドのどっかにあるクレバスに、ぴょんと勢いよく飛び込んでみたら、上の世界のどこかの穴から、ひゅんと飛び出して帰ってくることができました、めでたしめでたし……みたいなことが、ごく初期には想定されていたかもしれない……。

 ……とまあ、こんな具合に、「書かれていたこと」と「そこから私が個人的に想像をふくらませたこと」という調子で書いていきます。

     *

(20171020追記:H2について、以上のように書いたんだけど、メモをよく見たところ、ネクロゴンドの火山にH2の合番が振られているのを発見しました。恥ずかしながら、訂正します。「加納はたとえばこのように想像をめぐらす」というサンプルとして、元の記述も残しておきます)

■アリアハンは完成されていた

 この手書き地図に書かれたアリアハン大陸は、製品版のドラクエ3と、「まったく同じ」です。拠点の位置も、数も、製品版どおりです。

 湾内に浮かぶ小島には塔T1が立ち、そこには「とうぞくのカギ」というメモが記されています。
 レーベの村に相当する位置には◎M1があり(つまりレーベは村ではなく町になる予定だったのですね)、「まほうのたま」と書かれています。
 アリアハンの東側には洞くつ■D3があって、そこには「ワープ」と書かれています。

 すべて、最終的にできあがったドラクエ3どおりです。
 アリアハンの一連のイベントは、プロット初期段階ですでに完成していたということを読み取ることができます。

■シャンパーニの塔はなかったのか

 ロマリア近辺で大きな異同といえば、(私の記録ミスでなければですが)地図上に、シャンパーニの塔がありません
 ですから、「シャンパーニの塔でカンダタを退治し、王冠を取り戻す」というイベントは、最初期のプロットでは存在してなかったっぽいです。

 ただ、後のエントリで述べる予定ですが、バハラタ北の洞くつの位置に、「とらわれ娘」というメモはあるのです。ですから、盗賊カンダタをやっつけ、さらわれた女性を奪還する、というイメージは、この段階ですでにあったはずなのです。

 たとえば……このマップとプロットをもとに、本番のシナリオを書いていた堀井雄二さんが、
「あれ、このカンダタっていう盗賊、おもしろいぞ。改心しないカンダタを、何度も何度も追いかけるっていうストーリーにしたら、もっと面白いんじゃないか?」
 ということを思いついて、ロマリアに急遽、イベントをさしこんだ……という可能性は、ひょっとしてあるのかもしれません。

 FC版ドラクエ3では、シャンパーニのイベントは、他のイベントとまったく接続していない、「クリアしても、しなくてもいい」独立系イベントでした。もしかしたら「後から足したせいで」そうなっているのかもしれません。

 先述の通り、地図記号の凡例欄には、

I 塔(T) 4

 とあって、ワールドマップ内に塔が4本立っていることになっています。

 ところが、実際に手書き地図上をじっくり確かめてみても、塔はT1からT3までしかないのです(T1がナジミ、T2がガルナ、T3がアープです)。
 ここにシャンパーニを足せば、塔は4つになります。

 それに、もしも仮に、シャンパーニの塔が当初からプランニングされていたとしたら、シャンパーニの塔は「T2」くらいの合い番で振られていたほうが自然なはずです。
 ところが、そうなってはいません。
 シャンパーニの塔は「T4ですらない」のです(存在してないのですからね)。
 そういうことからみても、「シャンパーニのイベントは、後から思いつかれて、足された」というのは、ある程度、妥当性がありそうです。最低でも、シャンパーニの塔は、アープの塔よりも後に思いつかれたのです。

 ストーリー上ほとんど意味のないアープの塔よりも後だというのが、ちょっと凄い。


■ノアニールに水晶玉は眠る

 個人的にいちばん興味深かったのが、ノアニール近辺です。
 基本的なところでは、製品版のドラクエ3と、ほとんど同じなのですが……。

  Img051_3
この画像は、『ドラゴンクエストミュージアム』にて展示された制作資料を、私が手書きで部分的に再現したものです。画像で示されている内容は、株式会社スクウェア・エニックスと共同著作者の著作物です(たぶんアーマープロジェクトも権利を持っているはず)。著作権法第32条に基づき、研究を目的とする引用としてこれらを掲示します。展示会場で書き写したため、写し間違いが生じている可能性があります。これらの画像の転載・改変・再配布を禁じます。孫引きも遠慮してください。

 まず、北欧に相当しそうな半島の先っぽに「V3 エルフの村」があり、「めざめのこな」と書かれています。製品版ドラクエ3の通りです。
 V3のすぐ下あたりに、洞くつ「■D4」があり、「ゆめみるルビー」と書いてあります。これも製品版のドラクエ3と同じですね。

 ただ、ノアニールは、町Mでも村Vでもなく、ただ「・ 眠りの村」と書かれています。
 そして、ここが重要なのですが……。

「眠りの村」という名前のすぐ下に、
「すいしょうだま」
 と付記されているのです。

 どうやら、ノアニールでは、「すいしょうだま」が手に入る予定だったようなんですね。これは、製品となったドラクエ3にはないものです。

 この「すいしょうだま」の一言で、妄想がむくむくとふくれあがって、止まらなくなりましたので、ご迷惑かもしれませんが皆様におすそわけします。


■ノアニールは本来、脇道ではなかった

 ノアニールのイベントに関しては、

「製品版のドラクエ3では、ノアニールのイベントはクリア必須ではない(クリアしなくてもいいイベントになっている)。しかし、それは容量などの事情でそうなってしまっただけであり、当初のアイデアでは、他のイベントともつながる重要イベントになるはずだった」

 という趣旨のことを、『ドラゴンクエスト3 マスターズ・クラブ』という本の中で、堀井雄二さんがおっしゃっています。

 ああ、一応、引用で抜き出しておきましょう。

「通らなくてもクリアできちゃうイベントがあるけど、どうしてそういうふうにしたのか」というファンからの質問に対して、「全部のイベントがストーリーにからんでいたらギチギチになりすぎて遊んでいてつらいだろうから、脇道あつかいのイベントも混ぜておいた」という意味の回答をしたあと、堀井さんはふと、こんなことをおっしゃる。

ただ、ノアニールはホントなら意味があったんですけど、メモリーのつごうで、ここも脇道になってしまいました(笑)。本来なら、ここはけっこう重要だったんですよ。

『ドラゴンクエスト3 マスターズ・クラブ』(JICC出版局)P.92

「メモリーの都合で脇道になってしまった」とおっしゃっているのですから、「ほんとうなら、本道になるはずだった」ということになります。
 この文脈で、「本道である」とは、どういうことかといえば、それは「ストーリーにからんだイベントである」ということでしょう。

 つまり当初のアイデアでは、ノアニールは、メインストーリーに深くからんでくるイベントであった。かならず通らなければゲームをクリアできないイベントになるはずだったのです。

 ……さて、そこで「すいしょうだま」。

 現行のシナリオには存在していない「すいしょうだま」。こいつが、「メインストーリーにからむはずだった本来のシナリオ」の正体そのものにちがいありません。

 つまり、
「もし水晶玉というアイテムを導入していたら、ノアニールイベントは、メインストーリーに連結する重要イベントになっていたのだが、それがなくなったので、ノアニールも単発イベントになりました」
 そんなふうに想定できそうです。

 さて。
 一般的にいって、「水晶玉」といえば、アイテムとしての効果は何でしょう。

 それは、「ふしぎな力で、遠くのものを見る」道具ではありませんか。

 ドラクエ6では、占い師グランマーズが水晶玉をつかって、ふつうなら知ることのできないことを、いくつも知ることができました。
 エンディングでは、グランマーズの弟子となったミレーユが水晶玉を使って、常人には決して見ることのできない、とても素晴らしい、驚くべきものを見せてくれるのでした。

 ドラクエ3に登場する予定だった「すいしょうだま」も、そのような効果を持つアイテムだったんだと、仮に想定することにしましょう。
「手の届かない場所にあるものを、見ることができる宝物」。
 そういうアイテムが、「ノアニールイベント」で登場し、使用されたのだとしたら、それはどんな目的であり、それがあるストーリーはどんなものになっていただろうか。


■エルフの悲恋は水晶玉の中に映る(のか?)

 ここから先は、実際のドラクエ3で描かれたノアニールイベントを皆さん全員知っているものとして書きますので、よろしくお願いします。

 エルフの村の女王様は、人間嫌いです。彼女は、一人娘のアンが、ノアニール在住の人間の若者にたぶらかされた……と思い込みます。
 ある日、エルフの村から、だいじな宝物「ゆめみるルビー」がなくなりました。同時にアンの姿もみえなくなりました。
 女王様は、
「あの人間が、ゆめみるルビーをうばったのだ」
 と思い込みます。

「あのノアニールの人間が、アンをだましてたぶらかし、ゆめみるルビーを持ち出させたのだ。そして、ルビーを奪い取り、どこかへ逃げてしまったのだ」
「つまるところは結婚詐欺である」
「アンはきっと、宝物をだまし取られた申し訳なさから、村に帰ってくることができずにいるのだろう。おお、かわいそうなアン」

 そのように考えたエルフの女王様は、人間への報復として、ノアニールの町に呪いをかけます。町に住む人々全員を魔法で眠らせ、永遠に目覚めることのないようにしてしまいます。

 しかし、真相はちがっていました。アンと若者は本気で愛し合っていました。二人の仲を、女王様が絶対に認めてくれないことに絶望した二人は、洞くつの奥深くにある地底湖に身を投げ、なんと心中(しんじゅう)したのでした。ゆめみるルビーは、二人が身を投げたその場所に、そっと置いてありました。

 ここまでは、実際の製品のドラクエ3で描かれたお話と、ほぼ同じ。

 さて。
 初期アイデアでは、ここに「すいしょうだま」がからんでくるわけなのですね。

 製品版のドラクエ3では、心中の現場に書き置きが残してあって、それを読むことで真相がわかるしかけです。「お母様、私たちは来世で幸せになります」的なことが書いてありました。

 ここからは、私の個人的な想像になるのですが、

 当初の構想ではおそらく、この真相を、
「すいしょうだまに映った映像によって知る」(置き手紙によってではなく)
 という展開だったのではないか、と思うのです。

 ノアニールに、たった一人、眠らずにすんだ老人がいますよね。
「若者はゆめみるルビーを盗み出した悪党」
 という、エルフの女王様の思い込みを知ったこの老人は、

「あいつがそんなことをするわけがない! この水晶玉をつかって、本当は何が起こったかをはっきりさせよう!」

 家宝の水晶玉をとりだしてきて、彼はそんなことを言い出したんじゃないでしょうか。

 水晶玉に手をかざすと、まっくらな洞くつのなかで、思い詰めた表情を浮かべた、人間の若者とエルフの姫君が映し出されます。
 二人は、
「この世では、この恋がけっして認めてもらえないというのなら、ここで心中して、来世で幸せになりましょう」
 というようなことを話し合うと、二人でゆめみるルビーを深く覗き込み、自分自身の身体を麻痺させて動けなくし、絶対に心中に失敗しない状態をつくって、そして二人でドボンと地底湖へ飛び込みます。
(ゆめみるルビーは、覗き込んだ者を強制的にマヒ状態にする魔法のアイテムです。アンがルビーを持ち出した理由は、ストーリーを素直に読めば、確実な自殺のために必要だったからです)

 そんな衝撃映像が、「すいしょうだま」の中で再生されます。

 ドラクエ4で、イムルの村の宿屋に泊まると、なぜか不思議な夢を見てしまうというイベントがありますね。ちょうどあれみたいな感じで、場面が再現される想定だったのではないでしょうか。
(そういえばドラクエ4のイムルイベントも、エルフがらみでした。そして、FC版ドラクエ3の乏しい容量では、こういうイメージ再生系イベントは入れづらかっただろうなあ、カットするしかなかったかもしれないなあと思うわけです)

 ドラクエ3の主人公(プレイヤー)は、洞くつの奥深くに出向いていって、泉のそばに転がっているゆめみるルビーを拾ってきます。
 それをエルフの女王様のもとに届け、「これこれこういうことでした」と説明します。

 女王様が、その話を信用したかしないかはわかりません。でも、もし信用しなかったら、水晶玉を持ってこられて、彼女は「その場面」を見せつけられることになります。

 女王様は、主人公に「めざめのこな」をくれます。ノアニールの町にその粉をふりまくと、魔法はとけて、人々は目を覚まします。
 ノアニールの老人は、女王の誤解をといてくれた主人公へのお礼として、水晶玉をくれます。「あんたたちのこれからの旅に、何か役立つことがあるかもしれん」かなんか言ってくれるわけです。


■事件の存在を明示する

 さて、このイベントをこなすことで、主人公の手の中には、「遠くのことや、ちょっと過去のことを見ることができる魔法の水晶玉」があるわけですね。

 主人公は(プレイヤーは)、冒険のおりおりに、美しい水晶玉を取り出し、じっと中身を覗き込むことになります。
(ノアニールの老人のところに水晶玉を置いておいて、「どれどれ、おまえさんの運命をちょいと見てやろうかの」でもかまいませんけどね)

 すると、そこに映し出されるビジョンは。
 例えば。

 真夜中、どこかのお城の最上階で。
 眠っている王様の上に突然ぬうっとのしかかり、襲いかかる、巨人の魔物ボストロールの姿かもしれない。

 また例えば。溶岩のたぎる地下洞くつで。
 エキゾチックな着物を着た若い女の子が、五つ首のドラゴンに頭からかじられて、もりもりと咀嚼されるおそろしい光景かもしれない。

 そのビジョンを見た主人公は。
「大変だ」
 と思うのです。

 それがどこだかはわからないが、とにかくどこかで、恐ろしいことが起こっている
 そのことを知っているのは、ぼくだけだ。

 このことを知っているのが、世界でぼくだけなら、ぼくはそこに駆けつけて、何かをしなきゃいけないんじゃないのか?

「遠くで起こった事件を見ることができる魔法の水晶玉」
 というアイテムの存在を想定することで、ドラクエ3は、

「なんとかしてその場所を突き止め、一刻も早く駆けつける」

 という、
「心理的な“クエスト”」
 を実装することになるのです。

 この想定をとれば、
「ノアニールイベントから物語が起動しはじめて、メインストーリーが自立駆動するようになった。つまり、ノアニールはドラクエ3の物語の起点であり、とても重要イベントだ」
 ということが、いえるようになるわけです。


■その先にある「父探し」のドラマ

 このお話の延長上に、以下のようなストーリーが加わったとしたら、私としては、もう最高なんです。
(念を押しておきますが、このへんはもう完全に個人的なドリームです)

 ドラクエ3って、「消息をくらましてしまった父オルテガの足取りを追う」という、サブストーリーが、常に流れています。ドラクエ3の主人公は、まだ会ったことのない父に会ってみたいのです。

 そんな主人公が、ある日ふと、水晶玉をのぞき込んでみると、こんなビジョンが飛び込んでくる。

     ☆

 それは、どこか人けのない、さみしいほこらの中。

 勇者オルテガが、人待ち顔で、じっと、立っている。
 どうしたことか、心細げだ。
 かがり火の明かりの中で、オルテガは独り言をもらす。

「待ち合わせの日限はすぎたのに、サイモンが来ない。
 彼の身に、何かよくないことが起きたのだろうか。
 心配だ。
 だが、もう時間がない。サイモンを探しに行く余裕はない……。
 しかたない。
 ガイアの剣がなくとも、一人でネクロゴンドの火山に向かうしかあるまい」

 そして立ち去るオルテガ。
 無人となるほこら。

     ☆

 さて、そのビジョンをみた主人公。
 父さんの足取りがわかった! 父さんは火山に向かったんだ!

 それがわかった彼は――。
 ほこらの牢獄で手に入れたガイアの剣を抱きしめ、あふれる思いにつきうごかされて、力の限り急いで、ネクロゴンドの火口に駆けつけることになるのです。早く、一刻も早く――と。

 こういうの、ドラマチックで、
 私は、こういうのが大好物です。

 現行のドラクエ3は、(これは瑕疵でもなんでもないんだけれど)
「ルザミの老人が、《ガイアの剣を火口に投げ入れると何かが起こるぞよ。ガイアの剣は勇者サイモンが持っておるぞよ》みたいなことを言うから、まあそうしてみたら、まあ何かが起こった
 というトーンになっています。
 そういう淡々としたトーンで、ゲームを進行した人は、けっこう多いんじゃないかなと思うのです。

 でも、もし「すいしょうだま」に、このようなビジョンが映し出されるのだったとしたら。

 主人公は。
 プレイヤーは。
 明確に、感情をゆさぶられる。

 父さんが、勇者オルテガがどうなったのか、今すぐ行って確かめなきゃ! という衝動が発生する。

 感情をゆさぶられると、どうなるか。
 プレイヤーが、単なる傍観者であることをやめ、主人公の体験が「自己体験」に変質する。
 ようするに、画面の中で起こっていることが「自分のこと」になっていくのです。
(少しずつだけどね)

 ドラクエ3のストーリーを追ってみると、ホビットのほこらのホビット(昔、オルテガのおともをして旅したことがある……的なことを言うあの人)が、
「勇者オルテガは、火山に落ちて死んだらしい」
 という情報を提示してくれます。

 ですから、
「探し求めていたオルテガの足取りがわかった。オルテガは火山に落ちて死んだらしい。その火山に向かってみる」
 という“ストーリー”は、発表されたドラクエ3の中にも、明確に存在します。

 また、
「オルテガとサイモンは、合流して魔王退治に向かう予定だったが、サイモンが投獄されたので、オルテガは一人で向かうしかなかったのだろう」
 というストーリーの出どころ(初めて言い出した人)は私ではありません。
 初めて言い出したのは誰かというと、それは、なんと、堀井雄二さんです。
『ドラゴンクエスト3 マスターズ・クラブ』(JICC出版局)のP.90で、堀井雄二さんご本人が、
「勇者サイモンがどんな人物だったかに関しての、いちばん有力な説」
 として、このストーリーを披露してらっしゃるのです。
 だから、
「仲間と合流できず、ガイアの剣も手に入らず、一人で危険な場所に向かうしかなかったオルテガの悲壮」
 というイメージは、制作者の中に、明確に存在しました。

 だとしたら、この「感情のドラマ」が企図されているのは、わりあい明らかだと、私は思うのです。

 堀井雄二さんたち、ドラクエ3の制作者は、
「オルテガは火山に向かったらしい」
 という「ストーリー」が判明することによって、
「お父さんの足取りがやっとわかった! 一刻も早くそこに駆けつけたい!」
 という「感情のドラマ」が、ユーザーの内部に自動生成され「たらいいな」と思っていた。

 ユーザーの中に、そういう気持ちが自然発生してくれないかな、と願っていました(たぶん)。

 そういう「感情のドラマ」が、ユーザー内に自動生成されるためには、単に「オルテガは火山に向かった」という情報が提示されるだけではだめです。そのことは、堀井雄二さんは当然わかっていた。
 ユーザーの感情をかきたてるためには、もう一声、うまいしかけがないといけない。

 それはどんなしかけか。

 孤立無援で敵地に向かおうとする、父オルテガの悲壮な後ろ姿――。
 というシーンが、時間を超えて、なんかの方法で見られるようになっていればいい。

 なんかの方法って、なんだろう。

 うーん、そうだ。魔法の「すいしょうだま」があればいいんじゃないか?

 そこで堀井さんは、ノアニールにそれを置く。
 そしてチュートリアルをかねて、「すいしょうだまっていうのはこういう効果のアイテムで、こう使うんですよ」ということがわかるイベントを設置する。
 これはいいぞ、ゲームで父と子のドラマが描けるじゃないか。

 ところが。
 ゲームを作っているうちに、あきらかに、ROMの容量が足りないことがわかってきました。
 オープニング画面を削り、BGMを何曲か削り、アイテムを減らし、モンスターを減らし、それでもまだ容量が足りなくて町をいくつかカットするありさまでした。

 そんな状況では、「すいしょうだまを覗き込んだら再現ドラマが見られる」なんていうギミックは、とてもゲームに入れられない

 なので、堀井さんは、泣く泣く、この仕掛けをあきらめる
 ノアニールのイベントから、「すいしょうだま」を抜く。
 水晶玉がなくなったので、恋人二人の心中のくだりは、置き手紙でわかるようにする。

 そんなふうに、理想の形を実現できなくなったので、しかたなく、できる範囲のサイズでイベントを実装できるようにした。

(本当ならガイアの剣を持って火山に行きたかったが、事情があってそうはできなかったオルテガの境遇みたいですね)

 そんな感じだったんじゃないのかな、と、「すいしょうだま」のメモから、私はそんなことを想像したわけなのでした。


■目的意識が設定される

「すいしょうだま」と「再現ドラマ」のギミックが、(もし仮に)存在した場合、
「その事件が起こった現場をみつけだすというクエスト」
 がドラクエ3に(自然に)実装されたことになっただろう……というお話を、もうちょっとだけ続けます。

 現行の(製品として発表された)ドラクエ3は、

「わりとやみくもにいろんなところに出向いていって、何か興味深いイベントに偶然つきあたっては、それを解決していく」

 という、いわば水戸黄門ふうのトーンになっています。

 でも、水晶玉か何かで、事件の予兆を知ることができるのならば、

「どこか知らない場所で大変なことが起こっている。それを知っているのはぼくだけだ。なんとかしてその場所を見つけ出して、人々を救わなければ!」

 という感情が、自然に導かれるようになる。

 たまたま出会った事件を、漫遊記的に解決していくのではなく、
「どこかで困っている誰かのために、ぼくはそこへ向かうんだ」という話になる。

 それってどういうことかというと。
 冒険が、いきあたりばったりではなく、「目的意識的」になる、ということなのです。
 ぼくが行きたいから、そこに行く。
 あれをなしとげたいから、旅をする。

 堀井雄二さんや、ドラクエ3の制作スタッフは、ドラクエ3においては、「目的意識的な冒険ストーリー」を実現することはできませんでした。
(私が推測するに、たぶん)

 けれど、今回はさまざまな事情で断念したけれど、いつかはこういうストーリーを実現したい。

 もし可能なら、次回作で実現したい

 そう思ってたにちがいないと思うのです。

 だから次回作の「ドラクエ4」では。

「どこかで《デスピサロ》という恐ろしい男が、たいへんな悪事をはたらこうとしているらしい」
「それに気づいているのは、ひょっとして自分だけかもしれない」
「だったら、私がそれを阻止しなければいけないんじゃないのか?」

 ということが、各章で繰り返し語られ、人々が「自分の意思で」「その目的のために」旅に出て、やがて合流していく……。

 そういう物語をつむぎだしていくことになったのだと、私は思うのです。

 そうしてさらに、次々回作の「ドラクエ5」においては。

「父さんは、何をなしとげるために、旅をつづけてきたのだろう」
「父さんはなぜ、殺されなければならなかったのだ」
「ぼくが十年間も奴隷として重労働を課せられることになったのはいったいなぜだ」

「それをつきとめずに、生きていくことなどできない」

 という、これ以上強烈なものはないという「目的意識」が設定されることになります。

 その目的設定は、ひとことでいえば、
「今はもういない父の後ろ姿を追う」
 というものであったのでした。

 ドラクエ3で構想されたものの、実現できなかったことが、ドラクエ4と5で実現されている――と、私は思うのです。

(あまりにも長くなったので、ひとまずここまで)


■続き→「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(2)

2016年8月12日 (金)

この夏もTonyさんのところで同人をやっています(シスター・ブラッド第3話)

 今年の夏はやけに暑いですね。国際展示場方面にバーコードやISBNのない本を買いに行かれる方は、こまめに水分と塩分を補給なさって下さい。

 さて、ここ2年ほどずっと、Tonyさんのところの同人をしています。
(ふと冷静になってみると我ながら凄いな)

「同人になる」という言葉の、なんともいえない明治大正的な響きが、ゆかしくて私は好きです。ちょっと文豪になった気分だ。

 この夏のコミックマーケットで頒布されるTonyさんの同人誌『Tony MAGAZINE 03』に、私の書いた小説が載っています。
 横浜を舞台にした少女オカルトバイオレンスハードボイルド小説(満艦飾だ)『シスター・ブラッド』の第三話です。

 今回はライバルキャラクターが登場します。イギリス人で美少女でお金持ちで頭が良くて世界有数の超能力者でミステリーオタクという女の子です(ほんと満艦飾だなぁ)。
 今回の新キャラは、Tonyさんにも面白いと褒めていただきました。なので、珍しいことに安心して、皆様に差し出せます。

 Tonyさんのスペース、3日目 東シ-05abにて頒布されます。入手のためにはかなり長蛇の列に並ぶことが必要になりそうです(しかも炎天下)。くれぐれも、帽子、水、塩キャンディーなどを用意して、気分が悪くなったら係の人に申告して下さい。

 当日の入手でなくてもいいや、という方は、後日とらのあなの店舗ないし通販で購入できると思いますので、そちらをご利用下さい。

『シスター・ブラッド』第1話と第2話が載った本も、とらのあなにて購入可能です。
 http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/33/73/040030337379.html
 http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/37/18/040030371880.html

 おっと大事なことを言い忘れていました。この本は18禁です。

2016年7月16日 (土)

『君の名は。』の小説(加納版)がスニーカー文庫から出ます

 新海誠監督の映画最新作『君の名は』が、8月26日に劇場公開されます。
 この『君の名は。』の小説版が、加納新太の執筆で、角川スニーカー文庫から8月1日に発売されます。税込み670円です。

615mjgfvlnl

 

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)

 カバーイラストはキャラクターデザイナーの田中将賀さん(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』)。口絵および挿絵は朝日川日和 さんにお願いしております。

 じつは私(加納)は、今回の映画『君の名は。』では、制作スタッフの一員を務めています。スタッフロールでは(確か)「脚本協力」ということでクレジットされていて、一行まるまるを私ひとりの名前で占拠しています(光栄なことです)。

 何をやったかというのは、肩書きの通りで、脚本を成立させる過程で、さまざまな意見を申上げたり、助言をさしあげたりということをしました。病欠を除いて、脚本会議にはすべて出席しましたし、全6稿までおよんだ脚本のなかには、加納が執筆したバージョンも存在しています。

 そんなわけで、この映画の(ストーリーの)成立過程をほぼ全部目にしていますので、「この映画について最も詳しい人々のうちの一人」だったりするのでした。そういったわけで、サイドストーリーの小説を執筆する話が舞いこんできました。

 新海ファンの方はすでにごぞんじかと思いますが、現在すでに、角川文庫から新海監督の執筆によるノベライズが先行発売されています。そちらは、映画のストーリーをほぼ忠実にトレースした内容になっています。
(ちなみに新海さんは、映画をつくりながら同時進行でその小説を書き上げました。常人にできることではありません)

 そちらが先行しておりますので、スニーカー文庫版では、ストーリーの重複を避け、登場人物の掘り下げをする短編集にしました。
 誰を取り上げるかなぁ、ということを、担当さんとああでもないこうでもないと議論していった結果、(ほぼ)偶然にも、全員が糸守町関係者となったので、結果的に「地方暮らしもの小説」のような様相を呈することになりました。
(この映画は、東京都内と、岐阜県の山奥にある糸守町という架空の町を行ったり来たりするような内容です)

 この映画の脚本に関わっているときに、アニメっぽい裏設定や、アニメっぽいコントをいっぱい提案したり(勝手に付け加えたり)しました。そういうネタは全体を調整する過程で、ストーリーの表面からは落ちていったのですが、今回の小説では、捨てるには惜しいものを復活させています。
 復活させてもOKかな、作品のトーンがずれないかな、とかすかに心配したのですが、新海監督にプロットを見せたところ、すんなりOKが出たので、まあ、たぶん大丈夫なのだと思います。

 そういう裏設定を積極的にしこんでいった結果、今回の小説は、「主人公は糸守町」といえるような内容になりました。
 この小説で、さまざまな真相が解明されます。例えば、勅使河原はどうして「とある計画」に協力してくれるのか。三葉の父は、どうしてああなのか。そして、宮水神社が持っている秘密は何なのか。そういった「糸守町の謎」を明らかにするような小説に(結果的に)なっています。

 映画にあわせて、この小説を併読すると、「ああ、これってそういうことなのか」と腑に落ちる部分が多くなるはずです(そういう効果を目指して書いています)。映画を見て気に入った方、これから見る予定の方は、副読本として読んでいただけたら幸いです。

«ネットまわりの仕事をフォロー

お知らせ

リンク

  • mixi
    mixi内のブログです。内容はここと同一です。
  • 活字屋 あすか正太ウェブ
    小説家・あすか正太さんのWebページです。ライティング業のノウハウはすべて彼から伝授してもらいました。師匠です。
  • Other voices-遠い声-
    映像作家・新海誠さんのWebページです。新海さんの作品「雲のむこう、約束の場所」と「ほしのこえ」を小説化させていただきました。
  • 上海マスターのブログで情熱颱風
    BAR上海人形マスターのBlog。この人が作るお酒は留保なしにうまい。
  • BAR SHANG HAI DOLL
    洋酒が揃っていて、カクテルが旨くて、その上なぜかたこ焼きと鉄板焼が絶品な、不思議な店。ライブスペース、ギャラリーとしても利用できるそうです。