2012年4月24日 (火)

【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその6「ラーミアはアレフガルドの朝を羽ばたく」

 最終回です。

 ※注:ドラクエ、ロトシリーズを、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて、どういう全体像を空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。ドリームじゃん!とか言わないで下さい。最初から全部ドリームです。

 順番にお読み下さい。
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その1
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その2
【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその3「世界を創るということ」
【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその4「造物主さまのねがいごと」
【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその5「ルビスの乗り物その名はラーミア」

     *

 ドラクエ3のエンディングでは、ギアガの大穴と魔王の爪痕が閉鎖されたことで、上の世界に戻ることができなくなります。「故郷に帰れなくなっちゃった、アレフガルドに閉じこめられちゃった!」という驚きとか悲壮のようなものを、ユーザーに提示します。
 エンディングメッセージによれば、主人公は、その後すぐに失踪したということになってます。

 これを「あんまりにも淋しいじゃないの」と思った人が多いようで、
「きっと、アレフガルド世界を救った後、主人公は故郷の世界にひっそりと戻ったのだ」
 という説を、多くの人がとなえています。

 これは、ゆえなき説ではなくて、わりとハッキリした出どころがあります。
 堀井雄二さん本人が、
「あのあと、主人公は、もとの世界に帰ったんだと、そういうふうに考えるのもいいんじゃないかな?」
 という意味のことを発言しているのです。ちょっと初出がどこかは忘れたんですが、当時私も、この発言を読みました。ハッキリおぼえています。たぶん、どこかの雑誌で堀井さんが持っていた連載だったと思うのですが。

(あれ、中村光一さんの発言だったかもしれない。どっちかなのは、確かです)
追記:ちょっと検索で探ってみました。当該発言は「ドラゴンクエスト3 マスターズクラブ」という本に採録されているようです)

 

※さらに追記。『ドラゴンクエスト3 マスターズ・クラブ』を入手したので、該当箇所を引用します。私が覚えている文面と微妙に違うので、別の場所で同様の発言があるものと思われます。

(引用者注:3人の仲間が、のちに太陽の石などを託される「3賢者」なのではないかというファンの推論に対しての堀井さんの返答)
(略)3人の賢者のことは、たしかにそう考えるとつながる部分はあるね。ただ、逆にあの後、勇者ロトは母親のトコロに仲間を連れて帰った、と考えてくれても良かったんだよ。だから、勇者ロトは最後に行方しれずになっちゃったんだよね。
(『ドラゴンクエスト3 マスターズ・クラブ』P45)

 

 私は当時、これを読んで、
「そんなこと言われても、ゲームの中にそんな表現はないし、可能とは思えないけどなぁ……」
 といった印象をもちました。

 けれども。
 ドラクエ3を、今の目で、ちゃんと見直してみると、「ああ、たしかに主人公は、あのあと元の世界へ帰ったんだな」と思える表現がなされていることに、気づきます。
 きちんとゲームの中に、それは描かれていた。

 不死鳥ラーミアが、次元を越えて人を運ぶ鳥であるのなら、たとえギアガの大穴が閉じたとしても、ラーミアは上の世界とアレフガルドを行き来できるはずだ。
 そして、もしラーミアがアレフガルドに来てくれるなら、主人公はそれに乗って、もとの世界へ帰ることができます。精霊ルビスが呼べば、ラーミアはきっと来るでしょう。

 そして、実際に、ラーミアがアレフガルドの空を飛んだという表現が、ゲームの中にあるのです。
 それは。

     *

 その場面を掲示します。youtubeで見つけた、FC版ドラクエ3のエンディング動画を掲示してしまいますので、まだプレイしてない人は気をつけて下さい。

 人々に英雄として迎えられ、勇者ロトの称号を手にしたところで、画面は暗転し、あのロトのマーク、“鳥のエンブレム”が大写しになります。

 鳥のエンブレムを背負って、「せいなるまもりはロトのしるしとしてのちの世に伝えられた」というメッセージが流れますので、「ロトのしるしとは、この鳥のエンブレムだ」ということが暗示されているのは、間違いなさそうですね。聖なる守りにはこの鳥マークがついてたんだよ、と制作者が思わせたがっていることは、この演出から、とりあえず明らかだと思います。マァそれはさておき……。

 メッセージが流れて、鳥のエンブレムがいったん消えます。
「そして 伝説が 始まった!」
 という、素敵な宣言のあと。

 もう一度、鳥のエンブレムが、輝きを帯びながら、浮かび上がります。

 鳥のエンブレムが印象的に浮かび上がったあと、スタッフロールになります。この演出が凝っています。
 冒険の舞台となった、美しい世界の風景が流れ、なつかしいお城や楽しかった町の景色を映し出していくのです。
 はじまりの国、アリアハン。
 魔物に支配されていた城、サマンオサ。
 おちゃめな王様のいたロマリア。
 エジンベア、ダーマ、イシス……。

 ラーミアを示しているとおぼしき、鳥のエンブレムが輝く。
 美しい世界の景色が、流れてゆく。

 これを、「単にそういう、イメージ映像」と思ってしまうのではなくて、

「天空を羽ばたく不死鳥ラーミアの背中から、世界を見下ろしている」

 そういう風景だと理解してみては、どうでしょう。

 映像がスクロールするのは、ラーミアが飛んでいるからです。
 なつかしい場所が映し出されるのは、ラーミアの背中に乗っている人が「なつかしい場所を見たい。この美しい世界を、目にやきつけたい」と思っているからです。

 そうして、ラーミアはさらに羽ばたき、大地は視界の下でさらに流れ、また新しい景色を映し出します。

 ラダトーム城とゾーマ城。
 メルキド。マイラ。リムルダールの町……。

 そう。それらは、アレフガルドのお城と町並みです。
 このエンディングの、流れる風景が、「ラーミアから見下ろした美しい世界」なのだとしたら。
 不死鳥ラーミアは、アレフガルドの空を飛んでいる。

 ここで映し出されるアレフガルドは朝の景色です。
 つまり、アレフガルドが常闇の国であることをやめて、光ある世界になったあとの景色ということです。
 光をもたらしたのは勇者ロト、主人公なのですから、主人公が魔王ゾーマを滅ぼしたあとで、不死鳥ラーミアはアレフガルドにやってきて、その朝の空を飛んだのです。

 次元を越えて羽ばたく鳥ラーミアが、アレフガルドの空を飛んだのなら。
 その背に乗っているのは勇者ロト。主人公でしょう。
 主人公は、彼が守ったその美しい2つの世界を、まなこに焼きつけたあと。

「さあ、帰ろう」

 故郷のアリアハンに戻っていったにちがいありません。

 私は、このエンディングは、そういうことが意図されているに間違いないと思います。だから、ドラクエ3を作った人たちは、最初から「主人公はアリアハンに帰還したんだ」という結末を想定していた。そういう表現をきちんと入れている。

 ドラクエ3のエンディングは、そういう「謎解き」なんだと思う。

 そして。
 ラーミアに乗った人物が、「この美しい景色を、もっと目に焼きつけさせてくれ」と願ってそうしているのなら。そこに込められた気持ちは、

 この世界のすべてが愛しい。この世界を愛している。

 それはおそらく、精霊ルビスが求めてやまない言葉なのです。
 精霊ルビスにとって、勇者ロトは、自分を助けてくれた恩人ですし、その恩にむくいるために「いつかきっと恩返しをいたしますわ」なんて言って、実際に子孫が困ってるときに助力してくれたりするわけです、が。

 だけれども。精霊ルビスにとって、勇者ロトが特別な存在であるのだとしたら、その理由は、助けてくれたからではなく、
 彼女が作った世界を、最も愛してくれた人だから。
 そんなふうに思いたいなっていうのが、私の気持ちです。

     *

 最後にちょっとした、私好みの神話的な読み方をして、終わりにします。

 ルビスが作ったアレフガルドは未完成で、闇に包まれており、世界を構成する重要なパーツである「太陽」というものが登らず、昼というものがない世界でした。

 ドラクエ3から、ワールドマップに昼と夜が表現されるようになったのは、リアリティのためではなく、「昼も夜もある世界」に対する、「夜しかない世界」を際だたせるためです(これは断言しても良いと思う)。

 世界を闇に閉ざしていたゾーマを、主人公がやっつける。するとルビスは力をとりもどし、この世にはじめて朝というものがやってくる。そこでエンディングとなり、主人公は勇者と呼ばれるわけなのでした。

 だけれども、私としては、「主人公は腕っぷしが強くて、魔王をドツいてぼてくりこかしたので、彼は勇者です」というのは、ちがう気がする。ちょっと、そうは考えたくないのです。

 ゾーマは闇というものの象徴であって、この世に光がもたらされないように妨害していました(多分)。ゾーマがいるかぎり、アレフガルドに光さす朝は来ないのです。

 ですから、ゾーマは「アレフガルドを覆っている、闇」そのものです。
 ゾーマはすごく強くて、唯一の弱点である「ひかりのたま」がないと、倒すことができません。あ、いや、ゲーム的には、すごくレベルを上げればナシでも倒せますけど、ストーリー的には、ひかりのたまがないとだめです。

 ゲーム的には、「光の玉でゾーマを弱らせたあと、剣で斬ったり、魔法を撃ち込んだりする」ことで、ゾーマは討ち果たされるわけなのですが、物語としては、あるいは構造としては、

「闇そのもの」であるものに、光の玉をかざした

 からこそ、ゾーマは滅ぶのだと思います。主人公が勇者であるのは、強い力で敵を殴ったからではなく、「光を持ってきて、闇をはらう」という行為をおこなったからです。そう思いたいです。

 闇の象徴である者に、光の玉をかざす。
 闇しかなかった世界に、朝の光があらわれる。

 これは完全に、意図されて同型になっているものです。

 ひかりのたまは、アレフガルドには存在せず、上の世界にありました。ですから、アレフガルドにひかりのたまを持ち込むには、上の世界とアレフガルドを行き来する能力がないとだめです。

 勇者ロトが偉人であるのは、繰り返しますが腕っぷしが強いからではないはずです。
 そうではなくて、

 昼も夜もある世界から、光を持ってきて、夜しかない世界に分け与えてくれたから。
 朝というものを、この世に作ってくれたから。

 そういう偉業をなしとげたから、彼は偉人なのである。そういうふうに思いたいわけなのです。

 精霊ルビスが作り始めた大地アレフガルドは、夜だけがあり、昼というものがない不完全な世界になっていました。
 そこに、主人公が光というものを、いわば太陽をもたらしたことで、未完成だったアレフガルド世界は完成をみます。

 ですから、いってみれば、未完成だったアレフガルドを完成させたのは勇者ロトです。アレフガルド世界は、勇者ロトと精霊ルビスの合作。ふたりが協力してつくりあげた世界だということができます。
 もっと表現をエスカレートさせるなら、勇者ロトは、光をつかさどる創世の父神です。

 空(太陽)をつかさどる男神と、大地をつかさどる女神があわさって、世界が生まれた……というのは、わりといろんな神話にみられる類型です。ギリシャ神話なんかもそうでしたっけね。
 この物語は、そういう神話的イメージをすかしみることができそうなのです。

 そんなわけで、ドラクエ3の主人公勇者ロトは、ルビスという母神と対になることで、象徴的な意味合いで「世界を生んだ父」であるということができます。

 そしてそれは、父オルテガの背中を追いかけていた少年が、強く育ち、ついには、世界というものの父親になったのだ。そういう感じを見ることもできます。父に追いつこうと思っていた者は、いつしか、最も大いなるものの父となっていた……。そういうところに、きっと響きあっています。そして、このモチーフは、ドラクエ5に引き継がれてゆくわけです。

(おしまい)

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2012年4月23日 (月)

【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその5「ルビスの乗り物その名はラーミア」

 第5回です。

 ※注:ドラクエ、ロトシリーズを、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて、どういう全体像を空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。ドリームじゃん!とか言わないで下さい。最初から全部ドリームです。

 順番にお読み下さい。
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その1
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その2
【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその3「世界を創るということ」
【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその4「造物主さまのねがいごと」

     *

 紋章を5つ集めたときに会えるのは精霊ルビスでしたが、オーブを6つ集めて会えるのは、不死鳥ラーミアでした。
 ドラクエ3の主人公は、神の鳥ラーミアの背にのって、どこへでも行けるようになるのです。

 だからオーブ集めのクエストを作ったのはラーミアなんだ、とするのは簡単なことですが、なんとなく違和感があるし、気分的にはもうちょっとひねった結論が欲しい。

     *

 さて。
 ロトのエンブレム、というものがあります。
 ドラクエでは、勇者ロトにゆかりのあるアイテムには、たいていこの紋章が刻まれています。鳥をかたどった単純なマークで、いわゆるナスカの地上絵に似ています。
 ドラクエ3のエンディングでは、このエンブレムが大写しになります。ユーザーは「勇者ロトの栄光を示すマークはこれ!」と強く印象づけられます。

 勇者ロトは、不死鳥に乗って空を飛ぶ「鳥の人」なのですから、鳥のマークはまことに彼にふさわしい。この鳥のマークは、不死鳥ラーミアを表わしているんだろうな、というのは、多くの人が想像するところでしょう。私もそう思います。

 見落としがあるかもしれませんが、ざっと調べたところ、このマークの初出はドラクエ2の箱絵です(たぶん)。
 たとえばこうかもしれない。鳥山明さんが、ロトの血を引く三人の服や頭巾に、ぽろっと鳥のマークを描いてきた。それで、「なるほど、このマークはロトの家紋みたいなものなんだな」と、制作者もユーザーも認知するようになる。それで、制作者は「なるほど、勇者ロトって、鳥とゆかりのある人なんだな」と考え、ドラクエ3に「鳥に乗って空を飛ぶ」という仕組みを入れる。
 もしくは、最初から「ドラクエ3を作るなら、勇者ロトを鳥に乗せよう」というイメージがあった。それで鳥山明さんに2の箱絵を発注するとき、「鳥山さん、ちょっと、鳥マーク描いといてよ」とお願いした。
 まあそんなとこでしょうか。

 ドラクエ3の発表後、エニックス社から、ロト三部作の内容を扱った「ドラゴンクエスト 公式ガイドブック」という三分冊本が出ました。ドラクエに出てくる武器やアイテムの挿絵がカラー掲載された良い本です。
 これらの挿絵において、勇者ロトのゆかりのアイテムには、まぁ~全部、ロトのエンブレムが描かれてます。ここで描かれた挿絵が、エニックスが公式に認定した「アイテムの姿かたち」であるらしくて、今でもドラクエグッズは、この絵をもとに作られます。

 前のエントリでも紹介しましたが、「ロトのしるし」。ロトのしるしの形がイラストで示された初出は、おそらくこの公式ガイドブックです。
 ロトのしるしは、ドラクエ・ロト三部作に共通して出てくる重要アイテムです。1と2では「ロトのしるし」として、3では「聖なる守り」として登場します(名前が違うだけで、同じものです)。
 そしてロトのしるしは、ロトの印なのですから、当然、鳥のエンブレムが刻まれています。そう描かれている。

 ロトのしるしに鳥のエンブレムが刻まれているのは、一見あたりまえのようですが、よく考えてみると、若干ひっかかります。

 なぜなら、もとはといえばロトのしるしは、精霊ルビスがくれた「聖なる守り」というものだからです(「その2」を参照)。
 ということは、聖なる守りには、鳥のエンブレムが刻まれていたことになります。

(「聖なる守りはロトのしるしであった!」ということが明らかになるシーンで、鳥のエンブレムが大写しになる演出がありますので、聖なる守りには鳥が刻まれている、制作者はまず間違いなくそう想定しているはずです)

 勇者ロト(3の主人公)が、自分でロトのしるしというものを作ったのなら、ラーミアのマークがついているのは理解できます。
 でも、ロトのしるしとは、じつは精霊ルビスがくれた贈り物(聖なる守り)なんです。精霊ルビスが作ったものに、どうして不死鳥ラーミアが刻まれているんでしょう?

 これ、つじつまを合わせようと思えば、いくらでも合わせられます。
「精霊ルビスは、主人公が鳥に乗っていたことを超能力で知った。だから彼に贈り物をするとき、そういうデザインをあしらってくれた」とか。
「主人公は、聖なる守りに自分で鳥のエンブレムを刻んだ」とか「後世の人が、聖なる守りに鳥のエンブレムを彫った」でもいい。
「聖なる守りは、歴史の中でいつしか紛失されてしまった。のちにロトのしるしとして伝わっているものはレプリカだ。オリジナルの聖なる守りには鳥のエンブレムはついてなかった」なんてのでも、間に合います。

 けど、それらはちょっとばかし、夢がない気がします。

 だから、こんな解釈をとりたい。

鳥のエンブレムは、本来は精霊ルビスのマークである。聖なる守りには“ルビスのしるし”として鳥のエンブレムがついていた。それを勇者ロトが持っていたので、人々はこれを“ロトのしるし”だと思いこみ、後の世に伝えた」

 仮にそうだとすると……鳥のエンブレムは不死鳥ラーミアを示す(可能性が高い)のですから、こういうことになります。

「精霊ルビスと不死鳥ラーミアは、とても深い間柄である」

     *

 不死鳥ラーミアが空を飛んでいるのは、「上の世界」と呼ばれている場所。アレフガルドの上層レイヤーに存在する、我々の世界地図に酷似したほうの世界です。
 ラーミアは、アレフガルドではない、別の世界に棲む鳥だ。

 アレフガルドを作った精霊ルビスと、それとは別の世界を飛んでいる不死鳥ラーミアに、なぜか深い関係性が見いだせる。
 とすると、こういう推測ができそうだ……。

「上の世界を作ったのも、精霊ルビスである」

 だって、精霊ルビスは、ラーミアが描かれたエンブレムを自分の家紋にしちゃうような人なのですからね。つまりルビスは、自分のことを「鳥とともにある者」だと思ってることになります。だから、ラーミアが住まう上の世界も、じつは「ルビスの作った世界」なんだと考えるのは、自然な発想だと思うのです。

 大地をつくることができる精霊ルビスは、まず上の世界を作った。それが完成して、なかなか上手くできたと満足したので、もうひとつ別のを作ってみようと思い立った。それで上の世界にごく近い場所に、アレフガルドの世界を作りはじめた。

 アレフガルドの創造に没頭しているため、精霊ルビスは上の世界を留守にしていることになります。
 留守にしているけれども、上の世界も、彼女の大事な作品です。この苦心してつくった美しい世界を、あますところなく誰かに見て貰いたい、この美しさを共有してもらいたいと思っている。

 そこで、精霊ルビスは、自分の眷属である不死鳥ラーミアを上の世界にのこしていく。世界を遍歴して6つのオーブを集めた者は、ラーミアに乗れる、というシステムを作っておく。

 不死鳥ラーミアは、アレフガルドへと繋がるギアガの大穴に行くための乗り物です。ギアガの大穴に行くには、ラーミアに乗らないと駄目です。
 だからこういう言い方ができる。
「世界をあますところなく冒険し、世界への愛を示したものは、ラーミアに乗ることができ、精霊ルビスがいる場所への道が開かれる」

 ドラクエ2では、紋章を集めたら精霊ルビスに会うことができた。
 ドラクエ3でも、オーブを集めたら、やはり精霊ルビスのもとへ行ける。
 そういう流れは、どうも、あるっぽい。

     *

 だから、これは手前勝手な想像だけれど、以下のように考えると、わたし的には気持ちが良い。つまり、
「不死鳥ラーミアは精霊ルビスの友達で、ルビスが、ある世界から別の世界へと移動するときに使う乗り物である」

 だから、ここで想定する、ラーミアの役割は、このふたつ。

1.ルビスが次元をこえて世界を移動するとき、ラーミアが彼女を乗せていく。
2.ルビスに会う資格を得た人間がいたら、ラーミアがルビスの元へ連れて行く。

 実際のゲームでは、主人公たちは「大きな穴に飛び降りる」というかたちでアレフガルドに移動するから、「ラーミアに連れてってもらう」というイメージはあまりないけれど、本来的には、主人公をのせて、あっちの世界からこっちのアレフガルドへびゅんと飛んでいってくれるものだったんじゃないかな。
(ところが、ルビスは石になっていたので、ラーミアは「あれ、ルビスいないよ?」と戸惑って、下の世界に連れて行けなかった、とかね)

 私は、ドラクエは6までしかやっていないので、伝聞の情報なのですが、ドラクエの8だとか、外伝の「モンスターズ」だとかに、ラーミアは再登場しているそうです。
 ドラクエ8にラーミアがいるのだから、ドラクエ8の世界はアレフガルドのずっと未来の姿なのかな?だとかいった想定をする必要はない。
 不死鳥ラーミアは、次元を越えて飛べるので、あっちの世界からこっちの世界へと飛び回り、いろんな場所にいる可能性があるのだ、これでよいわけです。
 モンスターズでは、ラーミアの説明として、「次元を越えて飛べる神の鳥」みたいな説明がなされているそうですね(未確認です)。

 まさにそういうことなわけです。ドラクエ3でも、「上の世界」から「アレフガルド世界」へと、次元を越えて世界間を行き来する、ラーミアはそういう鳥なんだろうって思えるのです。

     *

 余談。ドラクエ6にもルビスが登場します。そのことによって、「ロトシリーズと天空シリーズは、実は同じ世界の物語じゃないのか」と思う向きもあるそうですが、そんなふうには考えなくて良いと思います。
 精霊ルビスは、ラーミアに乗って次元を渡っていたら、他の誰かが作ったらしいなかなか素敵な世界を見つけた(それが天空シリーズ世界)。この世界を作った精霊は、何らかの理由で不在であるらしい。管理人不在のせいか、怪物が発生してて、ちょっと世界のゆくえが心配だし、興味もあるので、しばらくそこに滞在して、世界の趨勢を見守っている。
 そんなくらいでいいんじゃないでしょうか。

 天空シリーズの世界を、ルビスが作ったものと考えないのは、ドラクエ6で彼女が登場するとき、「私はこの世界を見守る者です」みたいな自己紹介をするからです。ドラクエ3で登場したときには「この世界を作った者です」と名乗るのですから、天空シリーズ世界をルビスが作ったのなら、同様にそう名乗るはずです。
 ですから、「ムドーの島ってむかし竜王の城があった場所じゃないのか」とか、そっち方向に考えなくても良いように思います。
 ドラクエ6→4→5は、ひとつの同じ世界を扱っているはずなのに、大陸の形がだいぶちがうのはどうしてだろう、たった数百年のうちにこんなに地形が変わるわけない、というユーザー間の疑問があります。
 それはまあ、ゲーム的な事情を言えば、「まったく同じだったらバラエティー感がなくて商品的に困る」というみもふたもないことです。ですが、物語的にいったら、

「ルビスが自分の趣味のおもむくままに、ちょいちょい陸地のかたちをいじってる」

 くらいの感じで良いんじゃないでしょうか。
(ルビス可愛いな)
 実際に地形をいじってるのは、ルビスの代行者であるトコロの堀井雄二さんなんですから、その意味でも、ますます「ルビスがやらかしました」でかまわないことになります。 
 ドラクエ6に、とくに必要でもないルビスが登場するのは、短時間に地形が変わりすぎていることへのエクスキューズかもしれませんね。

     *

 さらに余談。

 ドラクエ3のアレフガルドって、夜しかない世界ですし、「落ちてくる」ことによってそこに到達しますので、「地下にある世界」だと思ってる人が多いようです。暗いのは天井があるからだ、と。
 というか私も初プレイのときはそう思ってました。

 でも今は、「異次元につながるトンネルを落ちてきたら、アレフガルドにいた」んだっていう理解をしています。
 つまり、地下にあるのではなくて、平行世界です。
 異次元をへだててぷかぷか並んで浮かんでいる、ふたつの世界って感じです。
(だから、ラーミアはきっとこの二つの世界を行き来ができる。ルビスをアレフガルドに連れて行ったり、もとの世界に帰ってきたりってことができる)

 暗いのは天井があるからじゃなくて、きっとアレフガルドが未完成で、まだ「朝」が創られていないから。
 だって、アレフガルドの人々に話しかけてみると、「朝がこない」と嘆いているのですから。見上げたところに天井があるのなら、「朝がこない」という嘆きにはならないはずです。来ようがありませんからね。
 ルビスはこの世界に朝を創りたいのだけれど、魔王ゾーマが妨害をしていて、それができない。そういう理解をしています。

 それに、ゾーマがそこからやってきたという噂の「魔王の爪痕」(勇者の洞窟の最深部にある亀裂)は、おそらく別の次元につながる裂け目だろうと推測されますしね。
 ギアガの大穴もきっと、それと同じような次元の穴だよね、という推測は、端正だと思うのです。
 ゾーマを倒すと、魔王の爪痕が閉じ、ギアガの大穴も閉じます。これを「次元の裂け目がひとつ閉じて、ただの大穴もひとつ閉じた」と考えるよりは、「世界にふたつ開いていた次元の裂け目が、両方閉じた」と考える方が、スマートです。
 世界にあいていたほころびが閉じ、世界に未実装であった「朝」が実装されて、アレフガルドはひとつの世界として完成をみます。
 これを「地下にひとつの世界が生まれた」と考えるよりは、「他の世界と並列に存在する、同格の一世界」と見なしたほうが、私にはなんとなく好ましいです。

     *

 さて。そんなふうに、「アレフガルドは地下ではなくて平行独立世界だ」と勝手に決めつけることにしたところで、話をラーミアに戻します。
「ドラクエ3の主人公は、魔王を倒したあと、ひっそりと元の世界へ帰ったのだ」
 という根強い説がありますね。今までの話を、そこにつなげます。

 続き→【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその6「ラーミアはアレフガルドの朝を羽ばたく」

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2012年4月22日 (日)

【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその4「造物主さまのねがいごと」

 第4回です。

 ※注:ドラクエ、ロトシリーズを、私がどういうふうに「読んで」いるのか、物語のスキマをどういう形で埋めて、どういう全体像を空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。ドリームじゃん!とか言わないで下さい。最初から全部ドリームです。

 順番にお読み下さい。
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その1
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その2
【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその3「世界を創るということ」

     *

 男が「もっと広い世界が欲しい」と望み、女神が「あなたのために大地を生みましょう」という。
 そんなふうにして、きっとドラクエ2の世界は発生しただろう。そんな個人的なドリームを開陳したのが、前回でした。

 ところで。

     *

 大地の創造、ということに関して、精霊ルビスとまったく同じ立場にたっている人がいます。
 堀井雄二さんです。

 だって、じっさいにドラクエ1や2のフィールドマップをデザインしたのは堀井さんですからね。
(と、私は聞いています)
 物語上では、大地を作ったのはルビスですが、ゲーム的には、大地を作ったのは堀井雄二さんです。

 彼は、ドラクエ1が成功して、ドラクエ2を作ろうということになったとき、
「やっべ、アレフガルドはこのままじゃ狭すぎるぞ。新たな冒険の舞台として、もっと世界を広げなきゃ」
 と思ったにちがいありません。

 もっと広い世界を出さなきゃ、新作にならない。でも、僕はまだ、アレフガルドという100マス×100マスの世界しか作ってないぞ。今からこれをトッカンで広げなきゃ!
 堀井さんがそう思ったとしたら、これはルビスが思ったことと、まったく同一でしょう。

 ですから、ドラクエ1の主人公というのは「堀井雄二さんのゲームプレイヤーとしての側面」。精霊ルビスというのは「堀井雄二さんのゲーム制作者としての側面」であるといったような分析はできます。
 ゲームプレイヤーである堀井さんは、「もっと広い世界でたくさん冒険したいなあ」と思うのです(勇者の側面)。
 そして、ゲーム制作者である堀井さんは、「たくさん冒険させてあげるために、もっと世界を広げなきゃ!」と思うのです(ルビスの側面)。

 その2つの側面が寄り添って、ワンセットになったとき、アレフガルドしかなかったドラクエ1の世界は、急激にぐんと広がり、ドラクエ2の、あの広大なマップが生み出されるというわけです。

     *

 ドラクエの、あの広大なマップをデザインするというのは、なみたいていのことではありません。

 堀井雄二さんは、さんざん苦心をかさねて、大変な思いをして「あの大地を作った」はずです。
 たいへんな苦心と思い入れをこめて、ドラクエのあの大地は生み出されているのです。ですから、作り手としては、せっかく作ったこの世界を、あますところなく、ユーザーにひとつ残らず全部見て欲しい。

 だから、世界を全部見て回って欲しい制作者は、
「世界中のどこかに散らばるなにがしかを、いくつ集めて来い」
 という、ドラゴンボール・ライクなクエストを設定するのです。ドラクエ2では、「5つの紋章を集めてこい」。ドラクエ3では、「6つのオーブ(宝珠)を集めてこい」。

「世界中のどこかにある」としかわからない宝物を全部集めるには、とにかく世界中をぐるぐる回って、いろんな人に話しかけて、いろんな場所を調べなければならないのですから、自然と、
「作り手がつくりあげたこの世界を、あますところなく見て回る」
 ことになるのです。
 この仕組みは、ドラクエ4以降も「世界中から小さなメダルを集める」という形に変化して、ずっと続いていきます。

 さて。
 堀井雄二さんが、「僕の作った世界を、みんなに全部見て欲しい」と思うのなら。
 精霊ルビスも、「私の作った世界を、みんなに全部見て欲しい」と思うのではないでしょうか。

 堀井さんが、「そのために、紋章を5つ集める仕組みにしよう」と思うのなら、精霊ルビスだって、「世界中に紋章をちりばめて、みんなに集めてもらおう」と思いはしなかったでしょうか。

     *

 だから、
「世界中から5つの紋章を集めたら、精霊ルビスに会うことができ、彼女の守護が得られる」
 という仕組みをつくったのは、精霊ルビス本人です。きっと。

 精霊ルビスに会うために必要なのは、太陽の紋章、月の紋章、星の紋章、水の紋章、命の紋章。その5つです。
 太陽が照らし、がめぐり、に引かれてが満ち引きし、が住まう。
 この5つは「世界」というものを構成する部品なのです。
 よくある木火土金水とか地水火風でないのは、この5つが「世界というものに、揃っているべきパーツ」だから。
 それを集めるということは、象徴的な意味で、「(ルビスが作った)世界のなりたちに手を触れる」ということにひとしいのです。きっと。

 繰り返しますが、ドラクエ2には、「世界をめぐって5つの紋章を集めた者に、精霊ルビスが会ってくれる」という仕組みがあります。

 紋章を揃えるということは、ルビスが作った世界をあまねく見て回り、世界のなりたちに触れるということにひとしい。

 あなたの作品を全部見ました。
 あなたが心をこめて作り上げたものを、あますところなく見ました。
 あなたが生みだした世界のなりたちを知りました。

 紋章を集めるということは、自然に、そういうメッセージになる。

 それって、「世界を作った者ルビスへの、愛の表現」にほかならない、そんな気がするのです。

 だから、ルビスは愛に応えて、姿を現す。
 私が作ったものを愛してくれた人に、応えましょう。

 だから、紋章を集めた先には、ルビスがいるんだ。そんなふうなのが、私の読み方です。

     *

 なるほど、この考えを、かりに良しとしましょう。
 先述のとおり、ドラクエ3にも、「6つのオーブ(宝珠)集め」という仕組みがあります。
 物語上で、ドラクエ2の紋章集めシステムを作ったのが精霊ルビスなら、ドラクエ3でオーブ集めの仕組みをつくったのは、誰なのか。

 ということで、この話は次回、ドラクエ3を語るフェイズに移行します。

 続き→【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその5「ルビスの乗り物その名はラーミア」

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2012年4月21日 (土)

【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその3「世界を創るということ」

 前回と前々回をまずお読み下さい。
「ローラ姫とは、精霊ルビスが人間の姿をとって地上に降りた姿である」という前回までの読み方を、そのまま踏襲して話を進めます。

【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その1
【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その2

 内容が大きく動くので、今回から記事タイトルを変えました。

 前回までは、「これこれこうだから、こういう結論になる」というトーンでしたが、今回からはもうちょっとやわらかく、想像ベースで話をすすめていきます。
 ようするに、「私は、こんなふうにスキマを埋めて、こんなふうにドラクエのお話を“読んで”いますよ」という内容になります。

(つまり、ドラクエに関する個人的なドリームをのべるエントリです。個人的なドリームですからあまりきびしく言わないで下さい。小説「精霊ルビス伝説」は参照しません)

 今回、いつも以上にドリーム入ってきます。妄想に近いです。引かないで下さい。

     *

 ドラクエ3によれば、精霊ルビスは「この大地を作った者」だそうです。

(兵士)
「この国は精霊ルビスさまが作ったとききます。

(ルビス)
「ああ、まるで夢のよう! よくぞ封印をといてくれました。
 私は精霊ルビス。このアレフガルドの大地を作ったものです。

 つまり、大地の精霊ルビスとは、単に大地に宿った人格といったような生やさしいものではない。
 この大地、この世界の創造主そのものだと見なすことができます。

 私が「こんなふうかな?」と想像するのは、だいたい以下のようなイメージでしょうか。

 ルビスは、宇宙空間とか、四次元とか、そういう無に近いような異相の空間に存在する生き物なんじゃないかな。
 そういうところに住まうルビスは、ぽっ、とその場所に、世界をひとつ、生み出す。
 三次元の空間をつくりだし、そこに海を広げ、大地を浮かべ、その大地を、みずからの美意識のおもむくままに、デザインする。
 そこに人と動物を配置する。

 そういうことをやっている、メタレベルの空間にいる存在ではないかな。(そして、そういう素敵な世界を作ると、ときどき「おおー、いい場所があるじゃねえかあー」と、ヤカラのような奴らが押しかけてきて占領するようになる。それが魔王とモンスターだったりして)

 で、ルビスは、ときどき自分のレベルを下げて、人間になって、ヒトの暮らしを楽しんだりする。勇敢な若者と恋をすることもある。そしてたまにはモンスターにさらわれてしまって困り果てたりする。

 まあそんなようなイメージだとすると、おもしろいかなって思います。

 さて。「大地を生みだして、デザインすることができる存在」というのが、私の想像のけっこう重要なポイント。

 この話を前提にして(ルビス=ローラで、ルビスは大地をデザインできるという話を前提にして)、想像の翼を広げると、けっこうおもしろい「世界の真相」が作れそうです。

     *

 精霊ルビスが作ったというアレフガルドの大地(ドラクエ1と3後半の舞台)。ドラクエ3をやってみると印象的なのですが、アレフガルド周辺の海を船で移動してみると、ある地点で海が途切れて滝みたいに落っこちています。
 つまり、ドラクエ3の時点で、海は大陸周辺にしかありません。アレフガルド世界は球体ではなく、四角いお皿が虚空に浮いているという、そういう形になっています。まるで、はるか昔、地球が丸いと知る前に、人々が想像した世界の姿のようです。

 これを、「本当はその先に、やがてローレシアになる大陸などが広がっているのだが、魔王の魔力のせいで移動できなくされているのだ」と解釈することも可能ではあります。

 が、せっかくここには「大地を創造することができる神格」がいるんです。だから、こういう方向に想像してみませんか。
 こんな感じです。

「精霊ルビスは、まだそこまでしか世界を作っていなかった。だから、まだ世界はそこまでしかない。ドラクエ3の時点で、その先には何もない」

 つまり、この世界は、アレフガルドの大地しかない。他の土地というものは、まだ存在していない。

 ところが、ドラクエ1をへて、ドラクエ2の時代になると、アレフガルドの大地の東側に、広大な大陸が、いつのまにやら沢山できています。
 いま進めている想像に従えば、これは、

「精霊ルビスは、アレフガルドの外側に、もっと広い大地を作ろうと思いたち、大陸を作った。つまり世界を広げた」

 ということになりますね。

 とりあえず、この話をオッケーとします。
 そうすると、ちょっとした疑問がわいてきます。

「精霊ルビスは、いつ、何の理由で、世界を広げようと思い立ったのか」

     *

 どうして世界を広げたのか、と問うならば、その理由は「もっと広い世界が必要になったから」ということになります。

 じゃあ、どうして「もっと広い世界が必要になったのか」。

 その答えらしきものが、ドラクエ1に描かれています。
 ドラクエ1の主人公が、こんなことを言ったからじゃないでしょうか。

「いいえ。私の治める国があるなら、それは私自身で探したいのです」

 ドラクエ1の主人公は、ラルス王に「わしの代わりに王になってくれ」と要請されるのですが、こんなふうに断ってしまうのです。
 王様にはなりたいが、別の土地で、自分自身で一から建国したい。
 だから、旅に出て、見知らぬ土地を探してみたい。

 この志高い青年には、アレフガルドは狭すぎるようなのです。

 ところが。
(今回のお話の前提条件にもとづけば)アレフガルド以外に、この世界には、大地はないのです。
 アレフガルドの外には、何もない。ただ、世界のフチから海の水がどうどうと流れおちているだけ。
 この青年は、自ら治めるべき土地を、自分で探したいと願っているが、そんな土地はこの世のどこにも存在しないのです。
 大変だ。

「私の治める国があるなら、それは私自身で探したい」

 その無理な願いを、なんとかしてかなえてあげたいと思った人がいました。ローラ姫です。
 今回ここでしている話では、ローラ姫は、大地を創造できる女神、ルビスその人です。アレフガルドのほかに大地はないんだけどなぁーということを知っている人です。

 でもローラ=ルビスは、ドラクエ1の勇者くんに好意を持ったので、新しい、そしてもっともっと広い大地を、彼ひとりのために作ってあげよう、と思う。
 だから、ローラ姫(ルビスの化身)はこう言うわけです。

「そのあなたの旅に、ローラもお供しとうございます。このローラもつれてって下さいますわね?」

 ローラ姫(ルビス)は、新しい土地を探すための彼の旅に、ついていくのです。

 勇者は自分が治めるべき新たな土地を探しに行く。しかし新しい土地というものは存在しない。だから、「大地を創造する女神」が彼の旅についていく。

 彼とローラがアレフガルドを離れて遠く旅立つと、その彼がたどり着いた先々で、そのつど「大地ができる」

 彼が船で進めば、無だった場所に、新たな海の広がりが発生する。そしてさらに進めば、そこにはさっきまでは存在しなかった大陸が、ふと、生まれる。

 あらかじめ大地を作って、「ハイ、これだけ作りましたからこっちに来てもいいですよー」ではなく、勇者くんの足が赴いた場所に、そのつど、順繰り順繰りにルビスが大地を作っていった。そんなふうに想像したいところなんです。

 なんでかというと、ドラクエ1の勇者くんが、アレフガルドの王様にならなかった理由は、「もっと広い世界が欲しい」と彼が思ったからなのです。
 彼の志を受けとめるには、アレフガルドはせますぎる。だから広大な世界が存在してほしいと思っている。ルビスはその願いにこたえているわけです。

 どれだけの広さの世界があれば、彼の志を受けとめることができるか、わからないでしょう?

 だから、あらかじめ適度に世界を広げて、「こんなくらいでいいかな?」では、いけないのです。なにしろ、じゅうぶん広いとルビスが思っていたアレフガルドを見て「これでは足りない」と思うような、とんでもなく器の大きな男なのですからね。(そのくらいだからこそ、創造の女神ルビスが「この人間にどこまでもついていこう」と思って添い遂げてしまうわけです)

 彼がじゅうぶん満足して、「ああ、なんて世界は広いんだ」と思うくらい広い世界が作られねばならない。そのためには、彼が旅すれば旅しただけ、えんえん、ひたすら、世界が広がり続けなければならない。
 だからルビスは勇者くんについていく。ついていって、彼が移動したら、移動しただけ、どんどんその場で大地を作り続ける

 ドラクエ2の世界は、そんなふうにして、「アレフガルドの周辺に、精霊ルビスが、あとから作り足した」ものなんじゃないか。
 そんなふうに想像すると、私はすごく面白い。何か、そう、すごく神話的だ。

     *

 勇者が求め、精霊ルビスがその求めに応じて大地を作る。
 そのように考えた場合。
 これはほとんど、「神話の国産み」と同じ類型です。

 日本神話では、男の神様と女の神様がセックスして日本列島が生まれたことになっています。同じような創造神話はたぶん世界各地にあるでしょう。男と女がいて、大地ができる。勇者とルビスが結ばれ、やがてそこには大陸ができる。
 このイメージは良い感じで、私は自分で気に入っているのです。

 ……筆がのってしまったので、この話、まだまだ続きますぞう。この話を進めていくと、「ルビスというのは、ある人物のある側面なんだ」という分析ができます。そしてそれを元に「ルビスの願い」を想像することができます。
 その話は、次回。

 続き→【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその4「造物主さまのねがいごと」

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2012年4月20日 (金)

【ドラクエ・ロト三部作】ローラ姫と精霊ルビスの謎 その2

 ひとつ前のエントリからご覧下さい。
 前回→ http://kanoh.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-2161.html

     *

「ドラクエ2のラストで聞こえてくる天の声は、精霊ルビスのものか、ローラ姫のものか」
 という疑問に対して、
「精霊ルビスとローラ姫は同一人物である」
(ローラ姫は、精霊ルビスがかりそめに人間の姿をとって、人界に降り立った姿である)
 というアイデアを思いついたところまでが前回でした。

 そのことを詳しく説明します。

(注:久美沙織先生の「精霊ルビス伝説」は未読です。これと矛盾する部分があるかもしれません。が、それは気にせず、ゲーム本編のみにもとづいて話を進めます。)
(ドラクエに関する個人的なドリームをのべるエントリです)

     *

「ドラクエ2の最後に祝福のメッセージを語りかけてくるのは、ルビスなのか、ローラ姫なのか」
 という疑問の立て方が、そもそもずれているんじゃないかと思うのです。

「流れからいえば、明らかに精霊ルビスのセリフなのに、ローラ姫しか言わないはずのことを言う」
「それはドラクエの制作者が、意図的にやったことである」

 という前提の立て方をしてみるのです。

 ドラクエのシナリオライター(≒堀井雄二さん)が、混乱をまねくだろうとわかっていて、それでもわざと、ルビスにローラ姫っぽいことを言わせている。もしくはローラ姫にルビスっぽいことを言わせている。

 わざとだとしたら、それはなぜか。

 それは。
「このシナリオを書いた人は、ユーザーに、精霊ルビスとローラ姫を同一視してもらいたがっている」

 そう考えるのが、いちばん適切そうだ。

     *

 前回にちょっと説明したとおり、「世界に散らばる5つの紋章を集めて大地の精霊ルビスに会う」というのが、ドラクエ2のシナリオの中核です。物語の主人公は、そういう動機付けで動いていきます。

 が、その主人公のうしろにいる私たち「プレイヤー」には、それとは微妙に異なる別の動機付けがあります。
 私たちプレイヤーは、かなりの確率で「ドラクエ1」をクリアしています。そしてドラクエ2は、「1」の主人公とヒロインが建国した新たな世界での物語なのです。
 ですから、私たちはこういう動機を持っています。

「前作の主人公とローラ姫が、その後どういう経緯をたどったのかを知りたい」

 じっさいに、ドラクエ2は、「前作主人公とローラ姫の足跡をたどる」というサブストーリーを持っています。
 はじまりの国、ローレシア国は、「ローラの国」といった意味だそうです。
 ローレシアから別の大陸へ移動するための地下トンネルは、「ローラの門」と呼ばれています。
 ローラの門を越えて、さらに海を渡った場所にあるのは、ローラ姫の故郷、アレフガルドです。

 そのように順繰りに冒険していくと、「前作ドラクエ1と、今作ドラクエ2との、時間的および地理的つながり」が、自然に理解されるようにできているのです。ああ、あの2人はこうして新たな大陸にわたって、きっとこんなふうに旅して、そして国をつくっていったんだな、と。

 ですから、こういう言い方が出来ます。「ドラクエ2は、物語の表面には“精霊ルビスの探索”があり、物語の背面には“ローラ姫の足跡をたどる”がある」と。

 これを単純化して、いささか恣意的に言い換えると、こうなります。

「ローラ姫の足跡をたどっていったら、精霊ルビスがいた」

 これはドラクエ制作者(≒堀井雄二さん)が意図的にやっていることのはずです。これが意図的だとするなら、どうしてルビスがローラ姫みたいなことを言うのか、が自然にほどけてきます。
 繰り返しになりますが、つまり、この物語の作り手は、ローラ姫と精霊ルビスを同一視してもらいたかった。ほとんど同じようなものとして見なしてもらいたかったはずなんだ。だから、ルビスとしか思えない語り手が、ローラ姫しか言わないようなことを言う。

 では、どうしてこの2人を同一視してもらいたいのか。

 それは。

「主人公たちのルーツである偉大な母ローラ姫が、大地に宿り、神格となって、今でもずっと、子孫たちが精一杯生きている姿を見守っているのです」

 という大きな真相が意図されているから。

 これが、ドラクエ2のいちばん大きな謎かけであって、ラストの天からのメッセージは、その謎解きなのです。
 ドラクエは謎解きのゲームなのです。
 ラゴスはどこだ、とか、金の鍵は誰が持っているんだ、といった、わかりやすい小さな謎が、いっぱいちりばめられている。でも、大きな謎は、謎じたいが隠されていて、答えもさりげなく、ひかえめに明かされる。

 精霊ルビスの正体は、ドラクエ2の中で、きちんと明かされている。それに気づくことが、「ドラクエ2を解く」ということなんだと、私はちょっと思いました。(でもこれ、読み過ぎかもしれないですけどね)

     *

 ルビスとローラが同一であることは、ドラクエ1とドラクエ3を照らし合わせてみると、よりくっきりしてきます。

 重大なネタバレを一気にしてしまいますが、ドラクエ3は初代勇者ロトの物語です。つまり、ドラクエ3の主人公の子孫がドラクエ1の主人公で、そのドラクエ1の主人公の子孫がドラクエ2で活躍する主人公。

 で、よく知られていることですが、ドラクエ3の終盤の物語と、ドラクエ1の物語は、ほとんど同じなのです。

 ドラクエ3でも1でも、「世界中のどこかから、太陽の石と雨雲の杖を探しだして、魔王の城へ渡るための虹の橋をかける」というクエストが展開されます。
 これはもちろん、意図的なリフレインです。両方をプレイした人は、全員が必ず気づいていることでしょう。

 ですが、それとは別に、地味なところで、もうひとつ重要なリフレインがあります。
 それは、
「魔王によって囚われの身となった女性を、救い出す」
 という展開です。

 ドラクエ1では、ローラ姫が迷宮に封じ込められており、勇者ロトの末裔は、これを救い出します。
 ドラクエ3では、精霊ルビスが迷宮に封じ込められており、勇者ロトはこれを救い出すのです。

 ドラクエ1では、ローラ姫を救い出すことができた結果、主人公は「ロトのしるし」という重要アイテムを手に入れます。
 ドラクエ3では、精霊ルビスを救い出した結果、主人公は「聖なる守り」という重要アイテムを手に入れます。

 ドラクエ3のエンディングで、「聖なる守り」と「ロトのしるし」は同じものであった、という真相が、明らかにされます。ロトが遺していった「聖なる守り」を、後世の人々は「ロトのしるし」と呼んだのです。

 つまり、「精霊ルビスを助けたときにだけ貰えるアイテムが、ローラ姫を助けることで手に入った」ということ……。

 そういう部分を見ていくと、こうだとしか思えないのです。

「ローラ姫の正体は、大地の精霊ルビスであり、すなわちこの世界を作った者である」

 精霊ルビスは、ときどき人間になって、地上で人間としての暮らしをしてみるという、そういう癖があるのでしょう。ドラクエ5でも、天界の竜が人間に化けて遊び回っているという展開がありました。

 そんなわけで、ローラ姫の正体は精霊ルビスなのでしょう。
 だから、ドラクエ2の精霊ルビスが主人公に語りかけるとき、たまにポロッと、「ルビスの中のローラ姫である側面」が顔を出し、「そんなひどい…」とか「私のかわいい子孫」とかいったセリフをのべてしまう。
(ドラクエ2の主人公たちは、ロトの子孫であると同時に、ルビスの子孫ということになりますからね)

 ドラクエのシナリオを書いた堀井雄二さんは、別のとあるミステリーゲームで、
「誰とも分からぬ犯人を追い求めていたら、それは身近な人物だった」
 という真相を描いて、ユーザーの度肝を抜いたことがありました。いまだに語りぐさになっています。

 精霊ルビスを追い求めていたら、それはローラ姫だった、というのは、まったく同型のミステリーなのです。

     *

 さて。そこまでは良いとして、この話をさらにムヤミに広げてみる。

 うまく広げれば、「ドラクエ6に出てくるルビスの正体」とか「新作ドラクエに出てきたラーミアの謎」が説明できるはずなのですが、うまくいくかわかりません。次回に続く。

 続き→ 【ドラクエ・ロト三部作】精霊ルビスその3「世界を創るということ」

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